40代で「産めない」現実に直面「子どものいない人生も想像していたけれど…」病気が原因も「誤解や批判にも苦しんで」
「子どもがいない人生」と聞いて、何を思い浮かべますか?現在、日本の40代後半女性の約3割が子どもを持たない人生を歩んでいますが、その内実が語られることはほとんどありません。2012年から1000人近くの子どもがいない女性の話を聞き続け、寄り添う活動をしている「マダネ プロジェクト」を主宰するのは、トレンドウォッチャーのくどうみやこさん。自身も病によって妊娠の可能性を失いましたが、「産まない」と「産めない」の間には、心情的に大きな違いがあったと語ります。
【写真】「なかなか理解されない…」共著で明かされた「子どもがいない」女性の深層心理がわかるひとコマ(3枚目/全6枚)
子宮の病気で妊娠の可能性がゼロに
── 子どもがいない女性を応援する「マダネ プロジェクト」を主宰し、当事者1000人近くの話を聞き続けているトレンドウォッチャーのくどうみやこさん。ご自身も当事者のひとりですが、これまでについて伺えますか。
くどうさん:仕事に手応えを感じて30代を過ごし、40代に入ったところで子宮の病気が発覚。妊娠の可能性がゼロになったんです。
30代前半に結婚した後は自然に任せ、不妊治療までは考えていませんでした。「子どもはできればほしい」けれど、仕事優先で先送りにしていたんです。でも、さすがに40歳を迎え、「子どものいない人生を送る確率が上がってきたのかな?」と考え始めた矢先に。厳しい現実を突きつけられて、ものすごいショックを受けました。
── そうですよね。病気が判明した後に、どんなことを考えましたか?
くどうさん:自分では「子どものいる人生」「子どもがいない人生」の両方を、なんとなくは想像していたんです。でも、いざ妊娠の可能性がゼロになると、こんなにも落ち込むものなのかと…。
「産めない」と、「産まない」の違いを痛感したのもこのときです。「もっと早く向き合っておけば」と悔やむ思いもありましたし、気持ちの整理が追いつかず、「病気の治療すらせずに、逃げ出したい」と、考えてしまうこともありました。
昭和の価値観の影響で、幼少期から結婚→出産→母親になるのがふつうだと考えてきたので、「正直、自分が違うライフコースを歩むことになるなんて…」と。命に関わる病気でもあったので、いろんな感情に押しつぶされそうになりながらも、夫とも話してまずは治療を優先することになりました。
「苦しみ続けても現実は変わらない」と
── 術後はどのように過ごしたのですか?
くどうさん:後遺症が重く、ムリがききませんでした。ただ、NHKの番組にトレンドウォッチャーとして出演していて、その出演者やスタッフの「待ってるよ」の声が支えに。早い段階で復帰しました。仕事仲間には、病気の詳細までは伝えていませんでしたが、皆さんそれとなく配慮してくださって。周囲の言葉で傷つくことはいっさいありませんでした。
でも、私をじつの娘のようにかわいがってくれた、以前の職場の女性上司が心配しすぎて、私の知らないところで周囲に治療法や名医を聞いて回っていたようで。私が事情を話すつもりのなかった人たちまでが私の病状を知っていたのは、まぁまぁびっくりしました(笑)。
でも、血のつながりがなくても、ここまで気にかけてくれる人がいたのはとてもありがたいことでした。彼女が親身になって接してくれた経験は、血のつながりがなくても助け合える関係をつくることができるのだと実感するきっかけになりました。あの経験は、現在も続けている「子どものいない女性同士の活動」にもつながっています。
── 以前の職場の上司もよかれと考え、必死だったのでしょうね。どのように気持ちを整理して、心身ともにもとの生活に戻ることができたのでしょうか?
くどうさん:悲しみがどの程度、尾を引くかは、性格や年齢、不妊治療の長さや思い入れにもよると思います。私は、もともと切り替えの早い性格なんです。「苦しみ続けても子どもがいない人生を送る現実は変えられない」。それなら、子どものいない人生を、ある意味で楽しむほうにシフトしようと思いました。
また、トレンドウォッチャーという仕事柄、今後は子どものいない生き方も「ライフスタイルのひとつになる」と、冷静に分析できたことも当時、気持ちを切り替えられた理由のひとつです。
「少子化の推進派?」誤解や批判に難しさ感じ
── 気持ちを切り替えられたとのことですが、実際に日常生活を過ごすなかで、生きづらさやとまどいを感じたことはありましたか?
くどうさん:肩身が狭いと感じることはありました。ただ、私の周りには子どもがいない人が多かったので、「違う立場である、子どもがいる女性の本音も聞いてみたい」と思い、市が主催する「女性活躍社会について」の意見交換会に参加したのです。これがなかなか衝撃的な経験となりました。
参加者の9割以上が子どものいる人で、子育てと仕事の両立の大変さや、その解決策として男性の意識改革、働き方改革、子育て支援強化などさまざまな意見が出ていました。子育てが議論の中心になるのは当然の流れですが、「女性活躍社会」は子どものいる女性に限らず、子どもを持たない女性も含まれます。そこで私は、子どものいない女性に寄り添う活動経験をもとに発言しました。
「私は子どもを持たない女性に関する活動をしていますが、子どもがいてもいなくても、女性にやさしい社会になってほしいと思います」と発言したら、一瞬、場の空気が凍りついたんです。少し間を置いて、皆さんから意見が出始めたのですが、「日本は少子化が進んでいるから、女性には子どもを産んでもらわないと困る」という人や、60代の女性議員からは「市でも出生率を上げる目標値があり、そのために頑張っているんです」と険しい顔で言われました。
私は、決して少子化を後押ししているわけではなく、子どもがほしくても産めなくて傷ついている女性も含めて、すべての女性が社会のために何かできるはず、輝けるはずだと伝えたのですが…。社会的には「女性は子どもを産むべき」との考え方が根強いということを痛感させられました。
当時は、私たちが少子化を推進しているのではと誤解を受けることも多くて。「子どものいない女性」の立場を理解してもらうことの難しさ、孤独感をそのときは強く感じました。
取材・文:岡本聡子 写真:くどうみやこ・森下えみこ、小学館

