盤面上の理想として、26/27シーズンは28億円の予算組でスタートし、「毎年10%成長」(小島社長)で推移すれば、2031年には45億円を超える算段だ。

 なお、45億円の経営規模となれば、2024年実績では柏レイソルなど中堅クラブに匹敵する規模感。ACL出場クラブ数の増加という“追い風”も含めて、「45億円規模のクラブがトップチームを編成することで、ACLへの参戦も可能なのでは」と小島社長は見立てる。

 近年のJリーグは、トップチーム人件費の投資額と成績がリンクする傾向が強く、J1のトップチーム人件費率の平均は2024年実績で37%。26/27シーズンを28億円の予算組でスタートさせるのも、トップチームの人件費に10億円を投じられる状況を作るため。

「サッカーは番狂わせが起こりやすいスポーツですが、事業サイドは勝つ確率を上げるために、ありったけの資金をいかにしてトップチームへ渡すかを考えている」とは小島社長の言葉だ。

 2031年の売上規模45億円超という目標を実現するために、5年先のスパンでスポンサー及びグッズ収入を引き上げていく取り組みと同時並行で実行すべき焦点は、入場料収入の大幅アップが必要不可欠。秋春制に移行する26/27シーズンは、ホームゲーム会場を約2万2,000人収容の水戸信用金庫スタジアム(笠松運動公園陸上競技場)に移すことは、入場料収入アップを目ざすうえで1つの起爆剤になりそうだ。小島社長は言う。
 
「水戸信用金庫スタジアムにホームスタジアムを移すことが入場料収入のアップにつながるかは、もちろん我々の活動次第です。たとえば、ケーズデンキスタジアムでは席数が限られているなかで、私が社長に就任してからは、2019年までに配布していた無料招待券の数を圧倒的に制限し、客単価を上げてきました。

 ただ水戸信用金庫スタジアムでは席数が広がる分も、ある程度は、まだ水戸の試合を観戦したことがない方々に届くような、あるいは再来場していただけるような、招待券施策を打ち出していく必要はあるかもしれません」

 また近年のJクラブは、MUFGスタジアム(国立競技場)でのホームゲーム開催を通じて、ファンの裾野拡大に取り組んできた傾向も見逃せない。ちなみに水戸の将来的な国立でのホームゲーム開催の可能性に関して、小島社長は「実は26/27シーズンで1試合、手を上げています」と言及。ただJリーグサイドの反応は、そもそものファンベースの数や国立開催の実績を盾に「“けんもほろろ”です」と小島社長はどこか嘆き節だった。

 水戸が国立でのホームゲーム開催に意欲を示す背景は「シンプルに新たなマーケティング機会の創出」と小島社長。現状のスポンサー先も全体の約15%程度が首都圏の企業であるため、国立開催の波及効果は計り知れない。
 
 5年先の2031年に『Go Asia』を掲げた水戸の近未来は、まだ霧に包まれていると言っていい。過去のJの歴史を紐解けば、市民クラブから脱却し、資金力に優れた責任企業の下、急スピードで成果を残しつつあるFC町田ゼルビアのような前例もある。

 サイバーエージェントグループをオーナー企業とする町田は、初参戦のACLエリートで準優勝という成果を収めたことは記憶に新しい。

 外資系企業の参入など、近年はJクラブの経営を取り巻く環境も新時代に突入している。クラブとしての競争力がよりシビア化するなかで、水戸がさらなる発展を遂げるには、市民クラブからの脱却が効果的な手段では、といった声が出てきてもおかしくない。それでも、小島社長は「市民クラブの限界を目ざす」と口にし、こう言葉を続けた。

「毎年の株主総会で話してきたように、私が社長である限りは、市民クラブとしての経営形態を変えるつもりはありません。私が社長に就任した時点で市民クラブの形態を変えることはないという約束はしてきました。繰り返しになりますが、私が経営者である限りは、市民クラブの限界を目ざす。この言葉に尽きます。