image: Sceye

成層圏からお守りいたす!

災害が起きたときに、「つながれないこと」はたくさんの困難をもたらします。先の震災でも、多くの人が通信の途絶を経験しました。そういった問題を、空から解決しようとしている「飛行船」があります。しかも、動力は再エネ!

アメリカの航空宇宙スタートアップ「Sceye(スカイ)」が開発した太陽光発電飛行船「SE2」が、2026年3月25日から4月6日にかけて、12日間以上の連続飛行に成功しました。

飛行高度は5万2000フィート(約1万5850m)以上、移動距離はニューメキシコ州からブラジル沖まで約1万300km。 Sceye社はこのフライトを「耐久プログラム」と銘打っており、商業展開に向けた決定的な一歩と位置づけています。

5万2000フィートって、どのくらい高いところ?

飛行高度の5万2000フィートというのは、地球の大気圏における成層圏にあたります。通常、空港から飛ぶ旅客機の高度が主に3万〜4万フィート(約9,000〜1万2000m)とのことで、そこよりもさらに高い場所。

これだけの高さを飛行船が飛ぶことには大きなメリットがあり、ジェット気流のような乱気流が少なく、同じ場所に長時間とどまりやすいのです。

だからこそ、地上の基地局や低軌道衛星のカバーできない「空白域」を埋める、新しいインフラ層として成層圏は注目されています。

「昼も夜もずっと飛べる」が今回の最大の証明

太陽光発電飛行船「SE2」の胴体全長は約82メートル。ヘリウムで浮かび上がり、太陽電池で日中に発電してエネルギー密度425Wh/kgのリチウム硫黄電池に蓄電し、夜間はその電力で機体後部のプロペラを動かして飛行を続けます。

今回の飛行でSceyeが特に強調するのが、「パワーループの完結」という点。

昼間に太陽光で発電し、その電力で夜間も飛行し続けるという昼夜のサイクルを、複数日程にわたって、高度・位置・機内気圧をすべて安定的に維持することに成功しました。

言ってみれば「充電切れを起こさない空飛ぶ基地局」として実証できたわけです。また、機体の位置保持精度も向上しており、半径わずか1km以内にとどまり続けることも実現。広大な空から見れば、ほぼ定点停止に近い制御です。

なぜ飛行船なの? 衛星もあるよね?

通信インフラといえば、まず頭に浮かぶのが人工衛星ですよね。でも、成層圏プラットフォームには衛星にない利点があります。

衛星通信と比べて速度・容量・遅延の少なさで優れており、展開の柔軟性も高い。そして、特定エリアの上空に長期間とどまれるのも特徴です。衛星はどんどん移動してしまいますが、飛行船なら同じ場所に居続けられるのですね。

たとえば、災害が起きた地域の真上で何日も通信を提供し続けられるのは、衛星にはない強みです。

Sceye社が開発した「SceyeCELL」アンテナは、成層圏から直接スマートフォンなどに接続する「空中の基地局」として機能します。従来のネットワークが届かない場所や、災害で地上通信インフラが壊れた場面での活用が想定されています。

日本でのテストも今夏に予定!

実はこのニュース、日本にも深く関係しています。 Sceye社はソフトバンクから出資を受けており、2026年中に日本でもプレ商用サービスを開始する予定。

今回の12日間飛行の成功を受けて、今夏には日本でも「SE2」のテストフライトが控えており、ソフトバンクのコアネットワークへの接続と、緊急・災害時シナリオでのデモンストレーションが計画されています。

ソフトバンクは山間部や離島など、既存の基地局では届きにくいエリアへの通信提供や、大規模災害時の通信復旧手段としての活用を想定しています。また、来るべき6G時代には「ドローンやUAVなどの空中機との接続をサポートする、3Dアーキテクチャを備えた通信インフラ」としても、今回の「SE2」のような「HAPS(高高度基地局)」を活用したい狙いです。

日本は地震・台風・豪雨と、通信インフラが真っ先に打撃を受ける自然災害が多い国です。「空に浮かぶ基地局」はリアルな解決策として映りますね。

Source: Interesting Engineering、Aviation Week、PRNewswire、SoftBank

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