日本航空宇宙学会は2026年4月16日、大阪大学豊中キャンパスで開催された第57期年会講演会で、第4回「航空宇宙技術遺産」の認定証贈呈式を行いました。


今回の認定では、日本の基幹ロケット「H-IIA/H-IIBロケット」、宇宙ステーション補給機「HTV」の有人対応 自動ランデブ技術と大型物資輸送技術、軌道再突入実験機「OREX」、人力飛行機「ストーク」など計6件が新たに選ばれました。


航空宇宙技術遺産は、日本の航空宇宙技術の発展史のなかで重要な役割を果たした製品や技術を顕彰し、後世に伝えることを目的とした制度です。過去には、小惑星探査機「はやぶさ」関連技術や、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟なども認定されています。


日本の宇宙輸送と有人宇宙活動を支えた技術群

【▲ 参考画像:H-IIB 8号機(Credit: Shintarou / Wikipedia CC BY-SA 4.0)】

今回認定されたもののひとつが、日本の宇宙輸送を支えてきた「H-IIA/H-IIBロケット」です。H-IIAは2001年の初号機以来、日本の基幹ロケットとして衛星や探査機の打ち上げを担ってきました。H-IIBはその発展型として、国際宇宙ステーション(ISS)への物資補給にも用いられています。今回の認定証は、これらの機体開発に携わってきた関係機関・企業に贈呈されました。


【▲ 参考画像:国際宇宙ステーションに接近する「こうのとり」9号機と、キャプチャに備えるロボットアーム(Credit: JAXA/NASA)】

また、宇宙ステーション補給機「HTV(こうのとり)」に関しては、機体そのものではなく「有人対応 自動ランデブ技術と大型物資輸送技術」が認定されました。HTVは、ISSへの大型物資輸送を可能にした無人補給船です。技術試験衛星VII型(ETS-VII、「おりひめ・ひこぼし」)で実証された自動ランデブー技術を発展させ、有人施設であるISSへ安全に自動接近したのち、ロボットアームで把持して結合するという、独自の安全基準(有人対応)を満たした運用を実現しました。2009年から2020年にかけて全9機が打ち上げられ、いずれもミッションを成功させており、日本の宇宙開発史に残るこの高度な技術が高く評価されました。


さらに、軌道再突入実験機「OREX(Orbital Re-entry Experiment)」も、今回の認定対象に含まれています。OREXは、将来の宇宙往還機の実現に向けて、大気圏再突入時の極超音速飛行環境や空力加熱に関するデータを取得するために開発された実験機です。今回の認定では、過酷な再突入環境に関する重要なデータを取得し、日本の宇宙開発に貢献した同機の歴史的意義が評価されました。


世界記録級の飛行を実現した学生たちの挑戦

【▲ 参考画像:科博廣澤航空博物館に展示中の「ストークB」(Credit: 文化庁)】

宇宙関連の成果とあわせて認定されたのが、国立科学博物館が所有する人力飛行機「ストーク」です。日本大学理工学部の学生たちが1975年から1977年にかけて卒業研究として設計・製作を進めた機体で、1977年1月2日には「ストークB」が飛行距離2093.9mを達成し、未公認ながら世界記録とされました。


人力飛行に使える持続出力は0.3から0.4馬力程度とされ、その限られた動力で飛ぶため、ストークBの機体重量は35.9kgに抑えられています。和紙なども取り入れた軽量設計が特徴で、学生チームが中心となって機体を作り上げました。


日本航空宇宙学会は認定理由として、人間の力だけで飛行できることを広く示したこと、その成功が多くの人に記録更新への挑戦を促し、航空技術者の育成にもつながった点を高く評価しています。ストークBの実機は現在、茨城県筑西市の「ザ・ヒロサワシティ」内にある「科博廣澤航空博物館」で一般公開されています。


 


文・編集/sorae編集部


参考文献・出典国立科学博物館 ‐ 【国立科学博物館】当館が所有する“人力飛行機「ストーク」”が「航空宇宙技術遺産」に認定されました!(PR TIMES、2026年4月16日) IHI - 日本の基幹ロケット「H-IIA/H-IIBロケット」が航空宇宙技術遺産に認定IHI - 軌道再突入実験機(OREX)、H-IIA/H-IIBロケット、HTVが航空宇宙技術遺産に認定日本航空宇宙学会 航空宇宙技術遺産一覧