夫への不満か、職場のいじめか、元カレとの「よからぬ噂」か。結婚30年のツマの家出前に起きたこと
「母親に別れろって言われたから別れよう」
女子トークで沸く投稿サイト「ガールズちゃんねる」の、「元カレに言われた衝撃的な一言」には、さまざまなワードが上がっている。
「男を好きになっちゃった」
「今までのデート代返せ」
「大事にされるように頑張れよ」
なかなかのクズ、オレ様的発言が飛び交う中、「母親に別れろって言われたから別れよう」という発言については、808の同意とともにカレ母に対するモヤモヤした体験談が上がっていた。
読者をモヤモヤさせながら、ラストまで息をつかせぬ展開で読ませる、コミックエッセイの名手、野原広子さんの『うちのツマ知りませんか?』(野原広子著/オーバーラップ)でも、主人公のヨシ子が元カレの言葉に後悔したような表情を見せる。
ヨシ子はこのとき、何を思ったのか。
「あんなに奥さんの悪口を言っていたのに」
結婚30年、仲良く暮らしていたはずのツマが「お醤油買ってくる」と出ていったきり帰ってこない。
夫の康がパート先を訪ねると、すでに退職したと言われ、結婚した息子に訊いても、「連絡はない」。警察には、夫婦仲はどうなのか、家出じゃないかと疑われる始末。
ツマの行方を捜す康に、会社の若い部下は、「あんなに奥さんの悪口を言っていたのに、心配なのか」などと茶化す。実は康はその部下に対し、「かわいい」などとよこしまな気持ちを隠し持ち、彼女が離婚したてのころ、ツマに黙って「アパートの保証人」になっていたのだ。
それでも自分はツマを愛していたし、感謝もしていたと開き直り、康は再びツマのパート先に行き、「男性客とよからぬ噂」を聞いたスタッフに、噂の真相を尋ねるが、スタッフは「自分が言ってたわけじゃない」などと責任を回避しながら、「元カレだったのかも」「スラッとしたイケメンだった」などと康に吹き込むのだった。
一方、家出したヨシ子は、暗闇の中で目覚める。そして、一緒にいる見たことのない老女が雨に濡れ、行き場のない自分を、車に乗せてきてくれたことを思い出す。
短期連載の第9話となる本編では、康をやきもきさせる、「よからぬ噂」の真相が暴かれる。
「全然変わってない」を男が口にする真意
職場のスーパーに偶然現れた、ヨシ子の元カレ。「田中先輩?」と頬を染めるヨシ子に向かって、田中先輩はこんなことを言う。
「おまえ全然変わってないな」
「あれからずっとこの町にいるんだ」
この言葉はどんな意味を含んでいるのか。
「全然変わってない」を男が口にする場合、本人は「褒めているつもり」であることが多い。康がよく言う「ちょっとボケている」はつまり、「天然入っている」だろうから、ヨシ子のおっとりとした初々しさが変わらないと言いたかったのか。
だが、「田中先輩」の表情に甘さは見えない。むしろ、冷めた物言いにすら感じられる。
そして「あれから」の「あれ」とは? ふたりの間にいったい何があったのか。
複雑な表情を見せるヨシ子の姿を、ぜひ試し読みで確認いただきたい。
◇「田中先輩」は元カレだというが、それ以上のなにかを感じる複雑な表情が気になる。第10話「彼は『次男だし町を出ていく』母に言われて諦めた初恋の記憶。家出した50代ツマの選ばなかった人生」では、40年前に、ヨシ子と田中先輩の間に起きたある出来事をお伝えする。
