3日前まで「裏番組」に…カズレーザー、禁断の“局またぎ”出演 「裏切り」と言われても干されない理由
「DayDay.」の新レギュラー
3月30日、お笑いコンビ・メイプル超合金のカズレーザーが日本テレビの朝の情報番組「DayDay.」の新レギュラーとして出演した。つい3日前まで同時間帯の「サン!シャイン」(フジテレビ系)にスペシャルキャスターとして出ていた彼が、そのまま裏番組に移ったことが注目されていた。カズレーザー本人も番組内でこの件に触れて「裏切りだって言われてます」と笑いを交えてコメントしていた。【ラリー遠田/お笑い評論家】
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同じ時間帯の情報番組に局をまたいで続けて出演するということ自体が、彼に対するテレビ各局の期待の大きさを表している。フジテレビでは、3月31日からカズレーザーとニューヨークが司会を務める2時間の生番組「超調査チューズデイ〜気になる答え今夜出します〜」も始まった。情報番組のMCやコメンテーターとして、カズレーザーはいまや誰よりも重宝される存在となっている。

情報番組で求められている背景には、テレビ側の事情がある。一昔前の情報番組では、アナウンサーが進行を務め、解説者や有識者が専門知識を提供するというのが基本的な枠組みになっていて、芸能人コメンテーターは庶民の気持ちを代弁して当たり障りのない感想を言っているだけでも役目を果たすことができていた。
だが、現代の情報番組は、ニュースや情報を伝えるだけではなく、視聴者が「世の中の話題をどう受け止めればいいか」という雰囲気を作って、それを共有するための場所になっている。そこで求められるのは、専門家ほど堅苦しくはないが知識があって、どんなニュースに対しても自分なりの視点でコメントができる人物である。カズレーザーはまさにそういう存在だ。
クイズ番組で活躍していることからもわかる通り、幅広い分野に興味を持っていて、知的好奇心が旺盛で、豊富な知識がある。話の内容からは知性を感じさせるのだが、決して偉そうではないし、説教臭くもない。語り口が軽いのでスルッと耳に入ってくる。
彼の強みは、単に知識が多いことではない。むしろ、その頭の良さを情報の交通整理に使っているところに本質がある。情報番組で本当に重宝されるのは、博識な人ではなく、専門的な話題に対して独自の切り口でわかりやすい解説をしてくれる人である。
難しいことを難しく語るのではなく、難しいことを噛み砕いて簡単そうに語る。でも、話のレベルは落とさない。ここに彼のコメンテーターとしての技術がある。もちろん、芸人なので、程よいバランスで笑いを交えることもできる。
「直言」という武器
さらに、「直言」という武器もある。今のネットの世界では、インフルエンサー的な人物が芸能人には言えないような過激な意見を言って注目を集めていたりする。芸能界のルールに縛られているプロの芸能人は、発言にも制限があって、何でも好き勝手に言えるわけではない。ここに芸能人コメンテーターの構造的な限界がある。
しかし、カズレーザーはそれを持ち前の知性とキャラクターであっさり乗り越えてしまう。人々が驚くような過激に聞こえる主張を、堂々と展開したりすることがある。ただ、よくよく聞いてみると、一般常識に反することであっても、理屈としては筋が通っていたりする。それは豊富な知識と論理的思考に裏打ちされた「安全な過激さ」であるため、テレビの電波に乗せても問題にならない。
そう、カズレーザーの最大の魅力はこの「安心感」である。彼はもう何年もコメンテーターとして仕事をしていて、あらゆるニュースについてコメントをしてきているが、一度たりとも炎上していない。これは驚くべきことだ。
今の時代、言葉尻を捕らえられたり、発言の一部を切り取られたりして、タレントが炎上に巻き込まれてしまうことはよくある。ときには本人に非がないようなケースでも、理不尽なバッシングを受けてしまうこともある。
だが、カズレーザーにはそれが一切ない。そもそも問題になるような発言をしていないし、本人のキャラクターが浮世離れしていて、批判を初めから無効化してしまうようなところもある。絶対に炎上しないという安心感も、テレビ局が彼を起用したがる理由になっている。
知性を売りにしているタレントはこれまでにもいたが、カズレーザーほど盤石の地位を築いている人はいなかった。見た目の派手さとは裏腹に、彼は有能である上に、誰よりも安全で安心な人物だからこそ、各局で引っ張りだこになっているのだ。
ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。
デイリー新潮編集部
