2026年2月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト3をお送りします。健康・医療部門の第2位は――。

▼第1位 毎日1万歩のウォーキングは必要なかった…最新研究でわかった「健康寿命を伸ばす歩数」の最適解
▼第2位 「カロリー制限」「ジム通い」よりダイエット効果あり…医師が「確実に体重を落とす」と話す唯一無二の方法
▼第3位 茶碗一杯の白米の糖質は角砂糖17.8個分…医師「世の中に出回っている理想の献立では糖質過多になる」

健康的に体重を落とすには何をすればいいか。医師の牧田善二さんは「多くの人が、痩せるために間違ったカロリー制限をして空腹を我慢したり、体の脂肪を燃やそうとジムに通って無理な運動に励んだりしていますが、実はそんなことをする必要はない。糖質を減らしながら脂質摂取量を増やせばいい」という――。

※本稿は、牧田善二『糖が脳を破壊する』(SB新書)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/trumzz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/trumzz

■糖質制限でケトン体質になる

医学的には、以前より「ケトン食」という食事療法があり、脳の疾患であるてんかんの治療に用いられてきました。

また、ケトン体には脳を保護する働きがあることから、ケトン食は認知症予防に有効なのではないかと考えられています。

さらに、最近では、がんの予防・治療に寄与するという研究もあります。

ケトン食を簡単に説明すれば、「糖質の摂取を減らし脂質の摂取を増やす」ということになります。

ここで少し、栄養素の代謝について復習しておきましょう。

私たちが食事をすると、そこに含まれるタンパク質はアミノ酸に、脂質は脂肪酸に、糖質はブドウ糖に分解されます。

出所=『糖が脳を破壊する』

ケトン体は、脂肪酸が分解される過程で生成されますから、脂質の摂取量を増やすというのがケトン食のひとつの大事な要素です。脂質を摂れば太ってしまうと考えている人が多いのですが、それは大いなる誤解です。そのことについては後述しましょう。

さらに、糖質を減らすことがなにより重要です。

ブドウ糖が溢れているとケトン体の出番がありません。逆に、ブドウ糖由来のエネルギーがなければ、体内に貯蔵されている脂肪を燃やし、ケトン体をつくることができるからです。

ケトン食とは、私が糖尿病や肥満の対策にずっと以前から提唱し続けてきた「糖質制限食」とほぼ同じだと考えてもらえばいいでしょう。

糖質制限食という言葉からすると、糖質を減らすということだけにフォーカスしがちですが、私はかねてより「もっと脂質摂取量を増やすべき」と訴えています。だから、牧田式糖質制限を実践すれば、自然にケトン食に近づき、脳にやさしいケトン体が使えるようになります。

■ジムに通って無理な運動に励む必要はない

ケトン体が使えるということは、体内に貯蔵されている脂肪が利用されている、すなわち燃やされているということであり、痩せていくということです。

つまり、牧田式糖質制限を行えば、ダイエットしながら脳も守れるのです。

多くの人が、痩せるために間違ったカロリー制限をして空腹を我慢したり、体の脂肪を燃やそうと、ジムに通って無理な運動に励んだりしていますが、実は、そんなことをする必要はありません。

糖質制限こそが、唯一無二の正しいダイエット。体と脳の健康を守りつつ、確実に体重を落とせる方法です。

ところで、「脂肪を燃やす=痩せる」のであれば、「脂肪を摂る=太る」のだろうと、あなたは考えていないでしょうか。

実は、「脂肪を燃やす=痩せる」のは確かだけれど、「脂肪を摂る=太る」は間違いです。

もし、「油っぽいものを食べれば脂肪がつく」とか「カロリーが高いものを食べると太る」などと考えていたら、いつまでたってもダイエットに成功しません。

写真=iStock.com/Nuttawan Jayawan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nuttawan Jayawan

あなたを太らせるのは、脂質でも高カロリー食品でもなく糖質です。脳のエネルギーとして必要だからと摂っていた甘いものや、日本人が大好きな白米や麺類といった炭水化物が、あなたを太らせるのです。

■糖質過多で余ったブドウ糖は中性脂肪となる

その理由を説明しましょう。

甘い砂糖は「二糖類」といって、ブドウ糖と果糖が2つ連なった構造をしています。

炭水化物は「多糖類」で、たくさんのブドウ糖が連なっています。

どちらも胃で消化され、すべて1個1個のブドウ糖に分解され、小腸から血液中に吸収されます。血液中にブドウ糖が吸収されるということは、血糖値が上がるということを意味します。

そこで、インスリンが分泌され、溢れたブドウ糖をまずはグリコーゲンに変えて、肝臓や筋肉に保存します。

ただ、その容量は限られているため、それでも余ったブドウ糖は、今度は中性脂肪に変えられ脂肪細胞に貯蔵されます。この「脂肪細胞に中性脂肪が貯蔵される」ということが、すなわち太るということです。

続いて、その溜め込まれたものがどのように使われるかについて、もう一度復習しましょう。

エネルギーとしてすぐに使えるブドウ糖がなくなると、まずは、肝臓や筋肉などに貯蔵されたグリコーゲンが分解され、ブドウ糖エネルギーとなります。

それも枯渇すると、脂肪細胞に溜め込まれた中性脂肪が分解され、ケトン体エネルギーを使えるようになるのでしたね。

つまり、糖質摂取量を少なくすれば、「中性脂肪分解→ケトン体エネルギー活用」のルートに早く到達できますが、糖質をたくさん摂っている限り、太りやすいし、ケトン体をうまく使えるようにはならないのです。

■脂質は不足することはあっても余ることはない

「糖質摂取量を減らす」方法については、この後、詳しく説明しますが、その前に「脂質摂取量を増やす」ことについて大事なことを述べましょう。

日本人の1日の平均脂質摂取量は男性で74グラム、女性で56グラムです。これらのわずかな脂質は、全身に37兆個もある細胞の膜をつくりかえるために必要とされたり、各種ホルモンの材料となったりして、どんどん消費されます。

そのため、脂質は不足することはあっても余ることはほとんどありません。また、脂質は摂り過ぎても、その多くが便に出てしまいます。

だから、糖質を減らした分もっと摂っていいのですが、あくまで「良質なもの」にこだわってください。

細胞膜やホルモンは、健康維持に非常に重要です。それらの材料になる脂質をおかしなものから摂ってはなりません。

とくに、サラダ油、マーガリン、ショートニングなどトランス脂肪酸が多く含まれている油脂は、心疾患を増やすなど明らかに健康に害があることがわかっているので、できる限り摂取を避けてください。

ファストフードやコンビニのスナック菓子、菓子パンなどには、こうした油脂がたくさん使われています。

写真=iStock.com/somethingway
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/somethingway

■調理して時間が経った揚げ物は猛毒になる

また、酸化した脂質は、猛毒とも言えるほど体に悪い物質です。古い油脂は使わないことはもちろん、調理して時間が経った揚げ物などは、口にしないほうがいいでしょう。

ちなみに、私自身は、油脂はエキストラバージンオリーブオイルと決めています。酸化しないように小瓶を買って、早く使い切るようにしています。

肉や魚の脂肪も食べてOKです。とくに、DHAやEPAが多い青魚は積極的に摂ることをすすめます。ただし、干物にすると脂質の酸化が進んでしまうので、新鮮なものを早く消費するようにしてください。

■まずは取り組むべき「液体の糖質断ち」

ケトン体エネルギーを使った脳にやさしい生活を送るために、あなたが最初に取り組むべきは、液体の糖質をやめることです。

コーラなどの清涼飲料水、ジュース類、スポーツドリンク、エナジードリンク、砂糖の入った紅茶、缶コーヒーをやめましょう。

液体の糖質は消化に時間がかからない分、どかんと血糖値スパイクが起きます。あなたの脳にも全身の健康にも悪影響しかありません。

とくに、「果糖ブドウ糖液糖」もしくは「ブドウ糖果糖液糖」という甘味成分が入ったものは最悪です。今日から口にするのはやめましょう。

「果糖」はブドウ糖と同じ「単糖類」で、これ以上、分解されることはなく、果糖として吸収されていきます。血糖値は、血中ブドウ糖濃度のことなので、果糖が血糖値を上げることはありません。

ただし、肝臓に負担をかけ、脂肪肝のリスクを上げます。

しかも、これら甘味料の果糖は、果物を使用しているわけではありません。トウモロコシやサツマイモなどのデンプンを、ある酵素で分解してブドウ糖をつくり、さらに別の酵素で果糖に変化させるという人工的で不自然なシロップで、「異性化糖」と呼ばれるシロモノです。

■外で購入する飲み物はミネラルウォーターかこれ

なお、「果糖ブドウ糖液糖」と「ブドウ糖果糖液糖」の表記の違いは、どちらが多く含まれているかであり、内容に大差はありません。

いずれにしても、砂糖よりも安価で、水に溶けやすいなど食品会社にとって使い勝手が良いため、多くの飲み物に用いられています。

しかし、それを口にした私たちは、ブドウ糖の影響で血糖値が上がり、脳をやられ、果糖の影響で脂肪肝を招くというダブルのダメージを受けます。

真剣に健康維持を考えるなら、外で購入する飲み物はミネラルウォーターと決めてしまいましょう。それでは物足りないというときは、甘みや添加物の入っていない炭酸水でもいいでしょう。

写真=iStock.com/Zorica Nastasic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Zorica Nastasic

もちろん、脳のためにと摂っていたブドウ糖サプリメントやタブレットは封印してください。会議室のキャンディも片づけましょう。

こうした、「最もNGなこと」をやめたうえで、あなたにできる糖質制限を行っていきましょう。

■甘くなくても糖質だらけの食生活

繰り返し述べますが、糖質とは甘いものばかりではありません。

米飯、パン、麺類など、いわゆる「主食」と呼ばれる炭水化物も糖類で、多くの人がこれらによって糖質の過剰摂取に陥っています。

厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」では、食事からの最適なエネルギー摂取バランスを、次のように定義しています。

出所=『糖が脳を破壊する』

・糖質から50〜65パーセント
・脂質から20〜30パーセント
・タンパク質から13〜20パーセント

これで、あなたのケースについても具体的に計算してみましょう。

1日2000キロカロリー必要としている人(やはり厚生労働省の基準によれば30〜49歳の女性が該当します)の場合、糖質250〜325グラム、脂質45〜67グラム、タンパク質65〜100グラムほどを摂ればいいことになります。

しかし、これでは明らかに糖質が多く、脂質が少なすぎます。

糖質がブドウ糖に分解され、血糖値スパイクを招きやすいことはこれまで何度も述べてきたとおりです。脳のためにも全身の健康のためにも、糖質はいくら少なくしてもいいくらいなのです。

ところが、多くの日本人が、この厚生労働省の基準すら超えて糖質を摂っています。とくに、白米好きの男性は、500グラムくらい摂っています。

■茶碗1杯の白米は、3分の1が糖質である

育ち盛りの子どもでもない限り、糖質摂取量は男性で120グラム、女性で100グラムくらいで十分だと私は考えています。

ちなみに、このときの「グラム」とは食べ物そのものの重さではなく、栄養素の重量を指しています。

たとえば、茶碗1杯の白米は約150グラムありますが、そこに含まれる糖質は53グラムです。Mサイズの卵1個は約50グラムで、そこに含まれるタンパク質は6.3グラム。和牛の肩ロース肉100グラムには、24.4グラムの脂質が含まれている。といった具合です。

■果物の摂りすぎは脂肪肝を招く

果物はビタミン類が多く含まれることから、健康的な食材と考えられがちです。しかし、果物の「果糖」は結構やっかいな存在なのです。

牧田善二『糖が脳を破壊する』(SB新書)

前述したように、果糖はブドウ糖と同じ「単糖類」です。これ以上分解されることはないので果糖として吸収されますが、ブドウ糖と違って血糖値を上げることはありません。なぜなら、血糖値とは「血中ブドウ糖濃度」のことだからです。

血糖値だけで考えれば、あたかも果糖は健康にいいように感じますが、肝臓で代謝される段階で中性脂肪に変わりやすく、脂肪肝を招きます。実際に、脂肪肝が発見された人に食生活について質問すると、果物が好きでたくさん食べているという答えが多く聞かれます。

また、中性脂肪は脂肪細胞に溜め込まれることから、果糖は太りやすいのです。果物を食べるなら、食後のデザートとして少量をなるべく「丸ごと」摂るようにしましょう。

たとえば、リンゴなら良く洗って皮を剝かずに、ミカンは外の皮だけ剝いて、中の袋はそのまま食べるという具合に。こうすることで、少量で満足できるし、食物繊維もしっかり摂れます。

■1杯のフレッシュジュースに含まれる驚きの果糖量

逆に、ジュースにするのは最悪です。

高級ホテルのラウンジで提供している様子を見ていたら、1杯のフレッシュオレンジジュースのために、なんと5つのオレンジを搾っていました。

そのジュースには、食物繊維はほとんど含まれない代わりに、オレンジ5つ分の果糖が含まれています。こうしたものをしょっちゅう飲んでいたら、確実に脂肪肝になってしまいます。

「甘いものを食べるなら果物を」という逃げ道をなるべくふせぎましょう。ふせがないまでも、その逃げ道は細くしておきましょう。

現代人が頭と全身の健康を維持するために必要なのは、すぐに甘いものを欲しがるクセから抜け出すことです。

出所=『糖が脳を破壊する』

(初公開日:2026年2月17日)

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牧田 善二(まきた・ぜんじ)
AGE牧田クリニック院長
1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。
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(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)