戦争と保育にかかる資金の拠出について、トランプ氏が持論を展開した/Evan Vucci/Reuters/FILE

(CNN)米国のトランプ大統領は1日夜のゴールデンタイムに行った演説で、イランとの戦争について、これまでで最も詳細な部類に入る売り文句を展開した。

しかしそのわずか数時間前、非公開のイースター昼食会で発した本人のコメントは、そうした売り込みがなぜ完全な失敗に終わったのかを如実に物語っている。

1時間に及ぶとりとめのない発言の中で、トランプ氏は、連邦政府は防衛費の拠出により重点を置くべきであり、医療や保育は州に任せるべきだと強調した。発言の動画はホワイトハウスが動画投稿サイト「ユーチューブ」に一時的に投稿。ビジネス・インサイダーの記者によって保存された。

発言のある時点でトランプ氏は、戦争と保育のどちらに資金を拠出するかという二者択一の議論まで提示。その上で明らかに前者を選んでいる。

トランプ氏はまず、行政管理予算局(OMB)のボート局長との会話を振り返った。

「ラッセル(・ボート局長)にこう言った。『保育には資金を一切出すな』。なぜなら、米国には保育の面倒は見られないからだ。それは州の責任としなくてはならない」。トランプ氏はそう述べた。「我々に保育の面倒は見られない。我が国は大国だ。50も州がある。他にも大勢の人がいる」

トランプ氏は続けてこう付け加えた。「今は戦争中だ。保育どころではない」

トランプ氏によれば、各州は税金を引き上げ、それで保育や医療の費用を賄うべきだという。

「保育やメディケイド(低所得者向け公的医療保険)、メディケア(高齢者向けの医療保険)といった個々の事柄を我々がすべて担うのは不可能だ。これらは州レベルで対応できる。連邦レベルでは無理だ」と、トランプ氏は主張。「我々が担わなくてはならないのはただ一つ、軍事的な防衛だ。国を守らなければならない。だがこうした些細(ささい)な事柄、これまで行われてきた数々の小さな不正行為については州に任せなくてはならない、ラッセル」と語った。

ホワイトハウスのレビット報道官は2日、X(旧ツイッター)で、トランプ氏の発言について説明。「話しているのは、これらの不可欠なプログラムにおける不正を防止し、巨額詐欺行為を根絶することの重要性だ。そうした不正は民主党選出の公職者が放置してきたものに他ならない」と指摘した。確かにトランプ氏は発言の中で不正行為について簡単に言及してはいたが、主な論点はそうしたプログラムの費用を誰が負担すべきかというところにあった。

ここでトランプ氏の発言に関して、いくつか指摘しておきたい。

まずトランプ氏は医療費が予算上の大きな問題になっていると主張しているが、これはその通りだ。実際、医療費は連邦支出の最大の部分を占めており、議会予算局(CBO)の予測によれば、現在の2兆ドル(約320兆円)前後から10年後には3兆ドル前後に増加すると見込まれている。

もう一つのポイントは、トランプ氏の主張が単に「保育か戦争か」という二者択一よりも、もっと微妙なニュアンスを含んでいるということだ。同氏は資金を投入すべきかどうかという問題ではなく、どのレベルの政府がどの事業に資金を投入すべきかという点について、ある種の哲学的な議論を展開しているように見える。

とはいえ支出の決定について語る上で、これは何とも奇妙なやり方だと言わざるを得ない。現在の状況下では特にそうだ。

その理由は1日に発表されたCNNの最新の世論調査に如実に表れている。

この調査が裏付けるように、おそらくトランプ氏にとっての戦争に関する最大の政治的問題は、そこにどれほど多くの費用が投じられているかにある。ガソリン価格が1ガロン当たり4ドルを超えている現状ではなおさらだが、より一般的な場面でもそれは当てはまる。

ただでさえ米国民はこの戦争に意義を見出せていないが、戦争にかかる費用を念頭に置くとそうした傾向は一段と強くなる。

戦争に2000億ドルを費やすという国防総省の提案には、米国民の71%が反対と回答。賛成の29%とは圧倒的な差がついた。共和党支持者でさえ、約4割が反対を表明した。

またこの世論調査では、イランに対する軍事行動に踏み切る判断を概して不支持とする回答が66%だった一方、人命と財政的負担の両面において戦争を起こすだけの「価値があった」かとの問いに対しては、否定的な回答の割合が70%に上昇していることも明らかになった。

共和党支持者でさえも、この戦争にそこまでの価値はないとの答えが35%を占めた。

今回のCNNの世論調査は、以前に行われたCBSニュースとユーガブによる世論調査の結果と一致している。その調査では米国民の67%、共和党支持者の36%が、戦争中のガソリン代の値上がりを容認しない姿勢を示していた。

言い換えれば、人々の間にはこの特定の目的のために犠牲を払おうという意欲がほぼないということだ。それにもかかわらずトランプ氏は、爆弾の費用を払うか、それとも子どもたちの世話をする費用を払うかという、政治的に考えうる限り最も不適切な二者択一をここで提示している。

もしこの論点について筋が悪いと思わないのであれば、それがイランに対してルビオ国務長官が用いようとしていた議論と極めて似通っている点を考慮してみればいい。トランプ氏が上記のコメントを発するほんの2日前、ルビオ氏は3月30日のABCの番組で次のように語っている。

「想像してみてほしい。イランが自国の富、つまり数十億ドルの資金をテロリストや兵器の支援に費やす代わりに、イラン国民を助けるために使っていたらどうなっていたか」「そこには全く異なる国が存在していただろう」

トランプ氏とその側近たちは、以前からこうした話題について語るのに苦慮してきた。保育問題に関する同氏の要領を得ない回答は、2024年大統領選における自身の最悪の瞬間の一つだったと言えるだろう。また同氏並びに他の政府高官たちは、厳しい経済状況や高止まりするインフレの時期に人々がどうやって生計を立てればよいかについて、再三ぎこちない発言を繰り返してきた(トランプ氏が米国民に対し、人形や鉛筆を買う量を減らせばいいと告げたことを覚えているだろうか)。

しかしそうした過去の発言はいずれも、これほど注目を集める政治問題を背景になされたものではなかった。しかも今回は、問題そのものがトランプ氏にとってあまりにも不利に働いていたタイミングでの発言だった。

ホワイトハウスとしては、当該のコメントがどういうわけか公になってしまったことを悔やんでいるに違いない。

本稿はCNNのアーロン・ブレイク記者による分析記事です。