「昇進すれば楽になるはずだった」課長・月収51万円でも余裕なし…53歳管理職が感じる〈手取り減と老後不安〉の現実
企業で管理職に就けば収入は安定し、生活にも余裕が生まれる――そうしたイメージは今も根強くあります。しかし実際には、税や社会保険料の負担増により可処分所得は伸びにくく、責任と負担ばかりが増えると感じる管理職も少なくありません。昇進が生活の安定につながるとは限らない現実が見えてきます。
課長の平均給与51万円の実像
厚生労働省『賃金構造基本統計調査(令和6年)』によると、課長級管理職の平均所定内給与額は月51万2,000円(平均年齢49.3歳、勤続20.7年)です。
額面だけ見れば高水準に見えますが、税金や社会保険料を差し引くと手取りは40万円弱となります。
管理職に昇進すれば生活が楽になる――そう考える人も多いでしょう。しかし実際の家計感覚は必ずしもそうではありません。
「昇進しても楽にならない」53歳課長の実感
課長職を務める山田さん(仮名・53歳)の月収は統計とほぼ同水準で、手取りは約38万円です。課長に昇進すれば生活は楽になるはずだ――かつてはそう考えていたといいますが、現実には責任が増えただけで、手取りが大きく伸びた実感はありません。
「住宅ローンと子どもの教育費を払うと、残るのはわずかです。昇給も止まっていて、正直余裕はありません」
家計の中心は住宅ローンと学費で占められており、可処分所得は想像以上に限られています。将来への不安から副業にも取り組んでいますが、本来は家族と過ごすはずの休日の時間が削られているといいます。
「本当は休日は家族と過ごしたい。でも少しでも収入を増やさないと不安で…」
管理職であっても追加収入を求めざるを得ない現実があります。さらに山田さんが最も不安視しているのは、定年後の再雇用による収入減です。勤務先の制度では再雇用後の給与は現在の約半分、月25万円程度になる見込みだといいます。
「同じ会社で同じような責任なのに給料は半分。やりきれない気持ちはあります。妻は老後はのんびり過ごしたいと言いますが、年金だけで生活できるとは思えません」
再雇用として働き続けるか、別の職場を探すかという選択を迫られています。しかし60歳を超えてからの転職は容易ではないと感じています。
「履歴書を書いて面接を受ける自信もないですし、企業も高齢者を積極的に採用するとは思えません」
管理職でも貯蓄が進まない理由
老後資金の準備を進めたいと考えてはいるものの、実際には余剰資金が限られている――。山田さんはそうした現実を率直に語ります。
「投資や貯蓄に回したい気持ちはあります。でも現役時代に余裕がないと難しいんです」
再雇用で収入が下がることはわかっていても、十分な備えができないまま時間が過ぎていくことに不安を感じているといいます。
背景には、給与水準と生活実感のあいだに生じる構造的なズレがあります。近年は社会保険料や税負担に加え、生活費そのものも上昇しており、額面賃金が伸びても可処分所得は増えにくい状況が続いています。そのため「昇進しても生活は楽にならない」という感覚は、山田さん個人の問題ではなく、多くの管理職世代に共通する実感になりつつあります。
現役期の収入は外から見れば高く映りますが、実際には可処分所得は限られ、定年後には再雇用による収入減や年金水準との落差が待っています。こうしたギャップがあるからこそ、現役期からの資産形成が重要とされますが、現実にはそのための余力を確保できない管理職も少なくありません。
昇進すれば生活は安定する――かつて当然視されていた前提は揺らいでいます。家計と老後の設計が個人の準備に大きく依存する時代において、管理職であっても老後不安を抱える状況は、決して例外ではなくなりつつあります。
