【新連載!】龍角散・藤井隆太の『私の社長30年史』(第1回)音大卒で悪いですか
就任当時社内では明らかに「音大卒の若造に何が出来るか」という雰囲気でした。業界でも音大卒というだけで変人扱いされたものです。しかし今になってみると、逆に「意外性」がメリットになるのです。
経営者向けの講演やメディアへの露出も、負債がある間は断っていたのですが、「音大卒の社長でも成功しているのだから」ということが若手の経営者にとっては元気の出ることのようですので、今は極力断らないようにしています。
コンサートに呼ばれて演奏することもあるのですが、私自身の集客力はあるようで、「社長が演奏できるのか?」という興味からか多くの方々に聴きに来て頂けます。これは若手演奏家の支援や音楽文化の振興という観点からも有意義なことです。
社長就任当時は売上高40億円で何と借り入れも同額。年々売り上げは減少し、慌てて投入した新製品も鳴かず飛ばずで、まさに破綻するまで秒読みと言える状態でした。社長就任時の1995年3月期と直近2024年3月期と比較してみます。
売上高:40億円→約280億円
正社員数:100名→97名
年間広告費:3億円→約100億円
内部留保:12億円→120億円
生産品目:50品目→4品目
主力製品のシェア:10位以下→1位(鎮咳去痰薬・のど飴)
30年前だと、まだスマートフォンもインターネット環境もなくパソコンもウィンドウズの初期バージョンのみ。消費者調査なども製品に入れて返ってきた往復葉書を全て手作業で集計でした。旅費も高かったので、海外出張するときは、かなりの覚悟で行ったものです。現在は格段に便利な環境にはなってはいますが、果たして今の自分が、その便利な環境を生かしきれているのか、単に楽をしているだけではないのか自問自答しています。
私は年間数十回、「老舗企業の経営革新」として主に経営者向けの講演会で話す機会があります。30年間で売上高7倍は確かに現実ですが、よく質問されるのは「その通りやったら良いのですね」と言われることがあります。しかし、私は別にコンサルタントでもありませんし、ましてや教育者でもないので、決してそのようなつもりで話しているのではありません。しかし、自分のやってきたことは正直に話してきたつもりです。今回はそれを書いてみたいと思います。
最近、中国の経営者向け講演会が増えました。皆さん、昔話より私が社長になった以降の歴史に興味を持たれます。確かに中国の歴史から見れば、当社の「創薬歴」約200年は短いかも知れませんが、私の時代の30年がなければ、当社の歴史は途絶えていたのかも知れないのです。
