阿部サダヲ(撮影:池村隆司)

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 テレビ朝日系にて放送中のドラマ『しあわせな結婚』。弁護士・原田幸太郎役で主演を務める阿部サダヲと、ある事件のカギを握るミステリアスな妻・ネルラ役の松たか子の共演が話題を呼んでいる。

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 阿部と松は過去にも夫婦役として共演しているが、松は大石静脚本の作品には初出演ということでも注目されている。阿部の目から見た大石の脚本と松の演技の魅力とは? 今後の謎についても触れながら撮影の裏話を語った。

大石静脚本は「会話が面白い」

ーー大石静さんの脚本を読んでみた率直な感想を聞かせてください。

阿部サダヲ(以下、阿部):いつも思いますが、大石さんの作品はやっぱり会話が面白いですね。一筋縄ではいかない、人間と人間の関わり方がすごく面白い。さらに言うと、会話というかト書きが面白いんです。自分のセリフで言うと「結婚は思っていた通り、心地よいものではないよ」というセリフがあったりして。好きなのに素直じゃないというか、不思議なセリフが多いというか。ちょっと意地悪な感じのセリフが、大石さんの作品の好きなところです。特に女性が言うセリフが魅力的だと思っていました。今回は僕が主演になって、男性として「うーん、どうやって言おうかな」と思ったりして。僕が嫉妬して「こんな若造にヤキモチ妬くな」みたいなことを言ったり、女性言葉に変えたらありえそうな感じのセリフが結構ある。それを自分が言っているのが面白いなと思っています。

ーー阿部さんから見て、原田幸太郎はどのような人物ですか?

阿部:早くに両親を亡くして、1人で東京に憧れて出てくるんですよね。それで自分こそが正しい人間だと思っているので、1人でずっと暮らせているというか、結婚はしないで1人でやっていこうみたいな人でした。でもやっぱりネルラという、今まで会ったことない人に会って、自分の人生へのイメージが崩れていくというか、“原田幸太郎像”を壊されていくのが気持ちよくなっているんじゃないかなという気がするんです。自分の家に住まわせればいいのに、あえて相手の家に入ったり。そういう自分が経験したことのないことをやろうとしているイメージがあります。自分が知らないことに直面したときには脆いんだけど、ついそっちに突っ込んでいってしまう。要するに“勉強”が好きなんでしょうね。知らない家族のことを勉強したいとか。知らない人に会ったらどんどん魅力的に感じてしまうとか。負けず嫌いでもあるし、そういうところがあるかもしれない。

ーー阿部さんはサスペンスをあまりやったことがないとおっしゃっていましたが、手応えはいかがでしょうか?

阿部:もっとドキッとする表情とか、ホラーに近い表情を見せられたらいいなと思っていたんです。第6話か第7話くらいかな……急に人がバッと現れたときの、ホラーな表情ができたら面白いかなと思って。いろいろ挑戦はしているんですが、監督と話し合いながら、大げさにならない程度にやっています。

ーー現場の雰囲気はいかがですか?

阿部:第3話のロケで旅館に行って、昔のいわゆるスナックっぽい感じのカラオケルームで撮影していましたが、松さんが「夢見る少女じゃいられない」を歌って、それに乗っかる家族たちの不思議なテンションが怖かったし、なんか気持ち悪かったし……(笑)。岡部(たかし)さんが必要以上に足を上げて、怒られていました(笑)。下着が見えちゃうから。だけどやめないっていう。家族みんなでどこかに行くという撮影も初めてだし、なんかテンションが上がっていたんですかね。岡部さんと段田(安則)さんは少年隊を歌ってるし……。あの辺りは、まだ家族の一員になれない感じがうまく出ていたかもしれないです。

ーー本作での共演で、新たに感じた松さんの魅力はありますか?

阿部:喋らないで黙っているときの松さんの表情が怖くもあるし、それでいて綺麗にも見える。これは本当に、“謎の表情”と言うんですかね。寂しそうでもあるし……表情で物語っているのがすごいなと思いました。「この人、何を考えてるんだろう」と思わせる表情だったり、「やっぱりもしかしたら人を殺してるのかな」と思わせたり……。「上手いな」「さすが」と思っちゃう。僕は後々の展開を知っていたけど、多分視聴者の方はぜんぜんわからなくてミスリードされていると思います。

“幸せとは何か”を考えさせられる『しあわせな結婚』

ーー現代では、序盤の幸太郎のように独身を貫くライフスタイルは珍しくなくなってきていますが、幸せな人生とはどのような生き方だと思いますか?

阿部:自分が好きだと思うことをやり続けられるのが一番いいんじゃないですかね。まずはそれを見つけることが大事ですけどね。でもその前には嫌いなものも見つけないといけない。嫌いなことやできないことがいっぱいあって、いろいろなことに触れていくなかで最終的に好きなことが見つかればいいと思います。触れてみて嫌いになる場合もあるけど、でもまずはやってみないと嫌いなことも見つけられないから。

ーー好きなことができる人生が理想的だという話はよく聞きますが、そのために嫌いなことから見つけるというのは目から鱗でした。幸太郎には法律を正しく運用することで公益を守るというアイデンティティがありますが、阿部さんは幸太郎のように公益と愛する人・家族を選ばなくてはならない立場に立たされたとき、どちらを選びますか?

阿部:今はやっぱり家族じゃないですかね。

ーー即決ですね……!

阿部:結局、自分の家族がいることで、他のみんなも家族だと思えるようになっていくんですよね。そういう意味では公益を守りたいというのはあるのかな……。でも、第7話で「何やってんの」ってことが出てきますから、わからないですよ。「おーおー、どうしたどうした」と。第8話で落ち着いたかと思えば、第9話は「踊ろう」みたいなこと言い始めてるから。大石さんの脚本は全体的に、落ち着けるというよりは「はい、もう終わったじゃん、はい次」ってくらいのテンポなので、それで幸せなほうに行くこともあるんじゃないかなと。

ーー今後の展開も注目ですね。

阿部:そうですね。僕らも注目していますからね。それにまだ全部出来上がってないのに「スピンオフやる」なんて言い始めて(笑)。本当に作り手にも不思議な人たちが多いです。サスペンスですよ。

ーー最後に視聴者の方へメッセージをお願いします。

阿部:最近流行りの、いわゆる考察というか、誰が犯人かを考えるというよりは、「幸せってなんだろう」ということを考える、あまりない作品だと思うんですよ。大きく言うと“人間同士”の話になるので、そこらへんが深いなと思います。その深いところが今後明らかになってくるんじゃないでしょうか。

(文=リアルサウンド編集部)