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はじめに

歴代レンジローバーの中でも、現行のL460は革新的な世代のひとつに数えられる。そのルックスもさることながら、世界でもっとも有名なオフローダーが電動化を主流としたこともトピックだ。

【画像】写真で見るレンジローバーとライバル 全4枚

ガソリンもディーゼルもマイルドハイブリッド化され、ガソリンPHEVも用意される。さらに、年内には初のBEVも登場予定で、UAEのシャールジャにあるアル・バダイヤ砂漠で高音下テストを実施済みだ。高温化での復元力に加え、従来のABSベースのシステムに代わる新型トラクションマネージメントテストのチェックも行われた。


テスト車:レンジローバーP550eオートバイオグラフィー

BEVのレンジローバーは、高級SUVセグメントのゲームチェンジャーになる可能性を秘めているが、それに先駆け既存モデルが改良を受けた。内容は、新型パワートレイン追加と内装の改修。3年前に取り上げたD350以来のテストとなるのは、PHEVのP550eだ。

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

基礎部分は従来どおりで、プラットフォームはアルミ主体のMLAフレックス。これは当初から、ハイブリッドだけでなくフル電動化も想定している。

エアサスペンションが標準装備で、車高はオフロード走行時には通常時より135mmアップ、乗降時には50mmダウンできる。アクティブスタビライザーや後輪操舵も標準装備で、全長が5052mmもありながら、旋回サークルは11.4mに抑えた。


エアスプリングと48Vアクティブスタビライザーが標準装備。四輪操舵も備える。

2022年にD350をテストした際にも、選ぶのに困るほどパワートレインがあったが、それは今回も同じだ。長距離をカバーするファミリーカーとしても、スーパーサルーンに挑むモデルも選べるということになる。

ボトムエンドは、ディーゼルMHEVで300psのD300。登場時のトップエンドはV8で530psのP530だったが、現在はそれを凌ぐ550psの直6PHEVのP550eが加わっている。しかも、それらを上回るP615も登場。615psのV8ツインターボで、SVのバッジを掲げる。

P550eと下位のP460eは、38.2kWhのバッテリーパックを床下に積む。実用容量は31.8kWhだ。モーターはギアボックスに組み込まれ、218psを発生。EVモードでは、高速道路の速度域くらいまでをカバーするので、これくらいのパワーは必要だ。なにしろ、公称重量は2735kg、テスト車の実測重量は2979kgにも達するのだから。

モーターのみでの馬力荷重比は80ps/tで、1990年代後半のフォード・フィエスタの中級仕様くらいだ。しかし、ツインスクロールのシングルターボと電動スーパーチャージャーを備える3.0L直6が加わると、201ps/tに跳ね上がる。

どのパワートレインを選んでも、トランスミッションはZF製8速トルクコンバーターAT。それに続くのがセンターデフと、リアの電子制御LSDだ。路面状況に応じ、デフやウレーキを用いるトルクベクタリングを調整するテレインレスポンスIIも装備。必要とあれば、ローレンジ副変速機もある。

内装 ★★★★★★★★★☆

レンジローバーに乗り込むのは、ちょっとしたイベントだ。身を沈めるのは、ほかのクルマではちょっとないほど身体を包んでくれる贅沢なシートで、マテリアルもここまで高級なのはロールス・ロイスくらいだ。

着座位置は高いが、レンジローバーのキャラクターに合っている。シートとステアリングコラムの調整幅は大きい。いま手に入る中でも、もっとも快適なクルマに数えることができる。


スイッチ類はほぼすべてタッチ画面に統合され、ミニマリスト的な設えを生み出すことに成功したが、使いやすさが犠牲になった。

ただしアップデートされたL460のキャビンは、以前ほど扱いやすくはない。以前は静電容量式スイッチや円形パネルがセンターコンソール基部に並んで、素早い操作を可能にしていた。それに代わるのが、シャープだが必ずしもレスポンスはよくないPivi Proのタッチ画面だ。

センタートンネルにあったオールテレインモードのセレクターも同様で、メニューをいくつか手繰らないとたどり着けなくなった。結果、このところレンジローバーが好んで採り入れる、北欧っぽくミニマリスト的な雰囲気は強く出ているが、そのぶん使い勝手が犠牲になっている。

そのほかはよくできている。特に満足できるのは、収納ストレージと後席スペースだ。

走り ★★★★★★★★☆☆

これだけのサイズと立ち位置のクルマには、底なしのトルクを生むV8ガソリンか大排気量ディーゼルが必要ではないかと思われるところだ。しかし実際には、直6ガソリンPHEVは、レンジローバーにふさわしいパワートレインだった。とりわけ、掛け値なしに豪華と言える仕様であればなおのことだ。ウッドトリムや淡色のレザーを用いたテスト車のオートバイオグラフィーは、まさしくそんなクルマである。

ひとつには、そのパフォーマンスが適切という以上であることが挙げられる。0−97km/h加速は5秒以下で、3t近い重量を考えれば間違いなく強力だ。さらに11.9秒で160km/hを超えるというのは、2015年にテストした、カーボンボンネットと耳をつん裂くような轟音の持ち主である激アツモデルのレンジローバー・スポーツSVRに迫る性能だ。それでも、このP550eはラインナップの最強バージョンではない。


3t近いクルマとは思えない動力性能に、モーターとエンジンのみごとな協調ぶりも発揮。大排気量の多気筒エンジンに見劣りしないPHEVだ。

パフォーマンスの性質も、目を奪われずにはいられない。可能な場合には常にEVモードで走り出し、予想していなかったほどみごとなスタートを切る。そして、バッテリーの電力がある限り、控えめな加速しか求めなければゼロエミッションで走り続ける。EVモードであれば、整然として洗練された印象で、来るべきBEVモデルの走りを示唆するものだ。

3.0L直6は、初期のレスポンスが218psのモーターによって増す。低回転では、とくにそうした傾向が見られる。しかし、ふたつのパワーソースの調整はなめらかで、エンジンがスイートスポットに入るにつれてモーターのパワーが増幅されていくように駆動力が高まっていく。直感的なパワートレインで、ドライビングを多少ながらシンプルにしてくれる精密さも備えている。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  

操舵/乗り心地 ★★★★★★★★☆☆

JLRは今回、レンジローバーのサスペンションやステアリング系には手を入れていないが、それは必要がなかったからだ。このクルマの運動性を特徴づけるのは、程よいステリングのスピードに伴う、穏やかでありながら抑えの効いたロールで、それがどんなブレにも損なわれないように思えることだ。

手応えもうまく調整されており、その結果としてロールス・ロイスのようなマナーでクルマを操ることができるようになっている。それも指先程度の力で、ほとんど気を使うことなしに。


ハンドリングはロールス・ロイスのようで、静粛性はEVのメルセデスEQS並み。低速でやや細かいショックが気になるくらいしか指摘すべき点はない。

同時に、高速安定性はBMW X7に譲るが、レンジローバーのオフロード性能とX7のスポーツ志向を考えれば、それは予想できることだ。同じく、ベントレー・ベンテイガのほうが走りに振ったキャラクターだが、上下方向のボディコントロールはタイトで、ステアリングは重いので、レンジローバーほど気楽に乗れないこともしばしばある。

快適性、というかむしろ幸福感は、相変わらずすばらしい。乗り込んで巨大なドアを閉めると、カタルシスを覚え、走り出せば、キャビン内の平穏を外から破ってくるものはほぼない。113km/hで62dBAという車内騒音は、メルセデス・ベンツEQS450+ビジネスクラスに匹敵する。あちらは空力を徹底した高級EVであるにもかかわらずだ。

波の長い足取りは、みごとなまでにストレスフリー。気だるいようなフィーリングを見せつつも、ルーズさや曖昧さは皆無。ただし、セカンダリーライドはやや敏感なところもあり、とくに低速では最上とは言えないように思えてくる。それは経験上、ホイールのインチダウンで改善されることがわかっているが、完全に解決するわけではない。

購入と維持 ★★★★★★★☆☆☆

L460は電動化への橋渡し役であるだけでなく、遠慮ない価格帯の高級車でもある。価格は10万4000ポンド(約1955万円)からで、オートバイオグラフィーとSVにのみ設定されるロングホイールベースは19万2000ポンド(約2425万円)から。SVのLWB P615となると、19万2000ポンド(約3610万円)以上で、これはもうベントレー・ベンテイガの領域だ。

EV走行の航続距離は、ルートや走り方に大きく左右される。充電性能は最大7kWで、フルチャージで走れるのは56〜80km。これにより、P550eは日常走行で9.6km/Lとまずまずの燃費だが、あと500kgくらい軽ければもっといい数字が出たはずだ。ツーリングでは71Lタンクにより724km走る計算だが、現実的には676kmといったところだろう。


サイドウォールが厚いので、大きく見えないホイールだが、じつは22インチ。これを基準に見ると、レンジローバーがいかに大きなクルマかよくわかる。

スペック

パワートレイン

駆動方式:フロントエンジン縦置き/四輪駆動
形式:直列6気筒2997ccツインターボ、ガソリン
最高出力:400ps/─rpm
最大トルク:56.1kg−m/─rpm
エンジン許容回転数:−rpm
ハイブリッドアシスト:永久磁石同期式モーター、ギアボックス内に設置
駆動用バッテリー:リチウムイオン(ニッケル・マンガン・コバルト)・
398V・54.2kWh(トータル値)/49.2kWh(実用値)
モーター最高出力:218ps
モーター最大トルク:45.9kg−m
システム総合出力:550ps/−rpm
システム総合トルク:81.6kg−m/−rpm
馬力荷重比:201ps/t
トルク荷重比:29.9kg−m/t
エンジン比出力:133ps/L

ボディ/シャシー

全長:5052mm
ホイールベース:2997mm
オーバーハング(前):860mm
オーバーハング(後):1195mm


フロント縦置き直6ベースのPHEVで、前後重量配分は49:51。空気抵抗係数は、Cd=0.30だ。

全高:1870mm

足元長さ(前席):最大1100mm
足元長さ(後席):760mm
座面〜天井(前席):1000mm
座面〜天井(後席):950mm

積載容量:725−1841L(リア)

構造:スティール&アルミモノコック
車両重量:2735kg(公称値)/2979kg(実測値)
抗力係数:0.30
ホイール前/後:9.5Jx22/9.5Jx22
タイヤ前/後:285/45R22/285/45R22
ミシュラン・Primacy オールシーズン
スペアタイヤ:─

変速機

形式:8速AT
8速・70/80マイル/時(113km/h/129km/h):1750rpm/2000rpm

燃料消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:10.6km/L
ツーリング:9.4km/L
日常走行:9.6km/L
動力性能計測時:3.3km/L

メーカー公表値:消費率
混合:123.2km/L

燃料タンク容量:71L
現実的な航続距離:756km(平均)/673km(ツーリング)/686km(日常走行)
EV航続距離:70.8km

サスペンション

前:ダブルウィッシュボーン/エアスプリング、可変スタビライザー
後: マルチリンク/エアスプリング、可変スタビライザー

ステアリング

形式:電動油圧、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.7回転
最小回転直径:11.4m

静粛性

アイドリング:38dBA
全開時(3速):73dBA
48km/h走行時:52dBA
80km/h走行時:57dBA
113km/h走行時:62dBA

発進加速

テスト条件:湿潤路面/凍結/気温3℃
0-30マイル/時(48km/h):2.2秒
0-40(64):2.9秒
0-50(80):3.8秒
0-60(97):4.9秒
0-70(113):6.2秒
0-80(129):7.8秒
0-90(145):9.6秒
0-100(161):11.9秒
0-110(177):14.4秒
0-402m発進加速:13.5秒(到達速度:171.1km/h)
0-1000m発進加速:未計測
0-62マイル/時(0-100km/h):5.1秒
30-70マイル/時(48-113km/h):4.0秒(変速あり)/5.4秒(4速固定)

ライバルの発進加速

ライバルの発進加速
BMW X7 x Drive M50i Mパフォーマンス(2020年)
テスト条件:乾燥路面/気温35℃
0-30マイル/時(48km/h):2.1秒
0-40(64):2.8秒
0-50(80):3.7秒
0-60(97):4.8秒
0-70(113):6.0秒
0-80(129):7.5秒
0-90(145):9.1秒
0-100(161):11.3秒
0-110(177):13.7秒
0-402m発進加速:12.8秒(到達速度:179.3km/h)
0-1000m発進加速:23.2秒(到達速度:227.1km/h)
0-62マイル/時(0-100km/h):─
30-70マイル/時(48-113km/h):3.8秒(変速あり)/6.4秒(4速固定)

制動距離

30-0マイル/時(48km/h):10.3m
50-0マイル/時(64km/h):28.7m
70-0マイル/時(80km/h):57.3m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:3.09秒

結論 ★★★★★★★★☆☆

ディーゼルはSUVの伝統的なチョイスで、BEVはレンジローバーが向かおうとしている方向性。しかし今は、ガソリンと電力の併用が好ましいように思える。今回のクルマは紛うことなく高級車で、JLRのスムースな直6ガソリンはその点でエクセレントなメカだ。

電力アシストも、精密さや力強さを高めてくれる歓迎すべきデバイス。来るべき完全電動のレンジローバーが納得できるものとなるであろうことを予感させるものでもある。


結論:独特で、心奪われるようなキャラクターに、PHEVとなったことで洗練性や上質さが加わった。

われわれとしては、もう少しスイッチ類を残してくれて、セカンダリーライドをなめらかにしてくれたら言うことはない。とは言え、その他の点はすべて、相変わらず魅力的だった。