バーレーン戦で鎌田大地のゴールを生み出したメカニズム。流れに適したポジショニングで敵DFを誘導し、出し手と受け手を良い状況に【日本代表】
北中米W杯の出場に導く鎌田大地のゴールは、バーレーン側のFKを処理したところから始まった。
交代で入ってきたばかりの伊東純也が左サイドバックのアルハラシにプレスをかけると、ライン側の縦パスを受けたアルフマイダンを瀬古歩夢が倒す。日本にとってはやや危険な位置でのFKとなったが、左センターバックのアルハヤムが蹴ったボールをアルロマイヒが収めに行くと、伊藤洋輝がタイトなマークで自由を奪う。
自陣の中央左で前を向いてボールを持ち出した伊藤は3バック中央の板倉滉にパスを通す。ボールホルダーの板倉が前を向くと、アルロマイヒがじわじわと縦を牽制してきた。
バーレーンはコンパクトな4−4−2をベースに、ボールエリアでマンツーマンに来る守備を取っていたが、日本が意図して前線の上田綺世と板倉が統率する最終ラインを縦に広げて持つことで、前にプッシャーをかけにくくしていた。そこで板倉は前に持ち出しながら、アルロマイヒを引きつけて左の伊藤にボールを戻す。
この時に前線のもう一枚であるマルフーンはアルロマイヒと縦関係で遠藤航をマークしており、右サイドハーフのアリマダンが伊藤にプレッシャーをかけるのがセオリーだ。しかし、鎌田がシャドーのポジションからワイドに移動してきたのを気にして、アリマダンは鎌田のマークに回った。
バーレーンは4−4−2の守備を敷くが、日本の両ウイングバックが高い位置で張る時はサイドハーフの一人が落ちて、5バックになる設計を前半から取っていた。
しかし、この時は左サイドハーフのアルフマイダンが板倉から瀬古へのパスルートを気にして後ろに落ちず、4バックで68メートルのエリアをカバーする状況になっていたのだ。
しかも、日本はバーレーンが最も危険視していたと見られる三笘薫が左外に張っているため、基本的に三笘のマークを担当する右サイドバックのアルシャムサンは前に出て鎌田のチェックには行けない。
これによりバーレーンはボールホルダーの伊藤に行ける選手がいなくなるが、中央で遠藤をマークしていたマルフーンが、遠藤を捨てて伊藤に遅れ気味のアプローチをせざるを得なくなった。
これに応じて板倉にプレッシャーをかけていたアルロマイヒが下がって中盤のスペースを埋めようとしたが、伊藤は引き付けて三笘にパスを出し、そこからGKの鈴木に戻してボールを回すと、バーレーンの守備は混乱に陥った。
そして板倉、遠藤を経由して、前を向いてボールを持った伊藤に対して、バーレーンは前線のマルフーンと右サイドハーフのアルフマイダンが同時に寄せてしまう。そこで伊藤は1つタメてから落ち着いて前に持ち出し、インからのマルフーン、アウトからのアルフマイダンを外してから、センターバックの手前に引いた上田に速いグラウンダーのパスを付けた。
遠藤が「彼の持ち味が発揮されたプレー」と認める伊藤の縦パスが上田に通る間に、上田がいたスペースを代わりに久保が使い、縦パスを受けて前を向いた上田がスルーパスを送ると、そこに鎌田が連動して、久保の背後から斜め右に抜けて縦パスを受けると、前に出てきたGKルトファラに対して、ボールを叩く形でバウンドさせる、いわゆる“エジルシュート”で浮かせて頭上を破った。
【動画】伊藤→上田→久保→鎌田とつないで生まれた先制点
久保は「鎌田選手が後ろから出てきた時に、出すというのは決めていたんですけど、より鎌田選手に優しいパスを出そうかなと考えた時に、自分が行くふりをして、縦にぐいっと行くことで、相手はたぶん、僕が自分で行くだろうなと思っていたと思うので。そこで、相手の重心が後ろになったところで、あそこにパスを出したら届かないと思うので」とパスを選択した理由を語った。
その動き出しからのシュートも見事だったが、もう少し巻き戻して鎌田の動きを解説したい。ビルドアップの段階で一度、左ワイドに流れて、相手のディフェンスを混乱させたことは書いたが、そこから中に流れてからインサイドハーフのようなポジションを取った。
これにより、中盤の要であるキャプテンのディアを日本のディフェンスラインよりに釣り出した。そこで遠藤が左の伊藤へのパスを選択すると、鎌田は縦に走ってバーレーンのディフェンスラインのスペースまで出て行った。
バーレーンは伊藤がボールを持った時点で、三笘が外側で伊藤と斜めの関係でパスコースを作ったため、右サイドバックのアルシャムサンが外に引っ張られて、右センターバックのベナティは縦パスの受け手の上田をマークしないといけないので、そこの間に大きなスペースが生じていたのだ。
鎌田はそこを逃さず走り込んだが、ややオフサイドポジションになったことに加えて、上田は右を向いた状態で久保を使ったことで、久保に連動して動き直す形になった。
こうして見ると、ビルドアップに応じた一人ひとりの関わりが、コンパクトなバーレーンのディフェンスを崩す要素になっているが、鎌田が直接ボールに触らなくても、流れに適したポジショニングで相手のディフェンスを誘導し、ボールの出し手と受け手に良い状況を与えていることが分かる。
もちろんボールに直接関わるプレーでも良い効果を生める選手だが、こうしたオフの動きを紐解いて見ると、鎌田という選手の特性がよりよく分かるとともに、周りの共有がなければ鎌田の動きも無駄になってしまうことが伝わる。
取材・文●河治良幸
