Tomonari SAKURAI

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1935年創業の老舗自転車ブランド「Alex Singer」

【画像】フランス製という伝統を守り続ける、自転車の老舗ブランド「Alex Singer」のアトリエを訪ねて(写真20点)

以前にもoctane.jpで紹介したが、今回久しぶりに再訪した。2021年にAlex Singerから初の電動アシスト自転車が登場したことをお知らせした。コラボレーション相手は、フランスの新興ブランド「CAVALE」。電気に頼りすぎることなく、自転車の楽しさを損なわないことを目指して作られたモデルだ。そして現在、Alex SingerはCAVALEを買収し、自社の電動アシスト部門として新たな挑戦を始めている。

Alex Singerについてのおさらい

Alex Singerは、シクロツーリズム(自転車で旅を楽しむ文化)が根付いたフランスで誕生した。自転車を楽しむ上で重要なのは靴と同じく「サイズ」。人それぞれ体型が異なるため、オーダーメイドで体に合った自転車を作ることが鍵となる。しかし、サンジェのオーダーメイドは単に体型に合わせるだけではない。その人の自転車スキルや使用目的など、さまざまな要素を考慮しながらフレームサイズを決定する。そこからギア数や歯数、ブレーキなどのコンポーネントを選び、色も自由に選択できるため、オーナーにぴったりの「世界に一台だけの自転車」が誕生するのだ。

フレームはもちろんスチール製で、多くの場合イギリスの「Reynolds」社製チューブを使用。Reynoldsのチューブは、自動車ではロータスセブンやイレブンといった名車にも使用され、サンジェが愛用する「Reynolds 531」と同じく高品質な素材である。

アトリエの訪問レポート

今回訪れたアトリエでは、ろう付けが完了したフレームの歪み調整を行っていた。専用の定盤に固定し、工具を使って歪みの箇所を特定。それを力業で補正していく作業だ。現在の棟梁はオリヴィエ・スユーカ、そしてその横で父の技を受け継ぐ息子のワルターが懸命に作業していた。

歪んだ箇所を全身の力を使って修正していく姿に感動しつつ、「これ、折れてしまうのでは?」と不安そうに見つめていると、オリヴィエが「フレームの上に乗っても折れはしないよ」と笑って答えてくれた。わずかな歪みが真っ直ぐな走行を妨げるため、ミリ単位で補正を行う。作業を終えたオリヴィエが、ヘッドチューブに指を通してフレームを持ち上げ、それを音叉のように床に軽く当てると、フレームは美しい金属音を響かせる。この音こそ、歪みのないフレームの証拠だ。

オーダー状況とリピーターの多さ

アトリエの壁には、顧客ごとのオーダー用紙が貼られており、アメリカからのオーダーが多いとのこと。もちろん日本からも毎年数台のオーダーがある。自転車の需要が見直される中で新たな顧客も増えているが、特筆すべきはリピーターの多さ。初めてランドナーを注文した顧客が、次はスポルティフ、その次はポーター、さらにシングルスピード…と2台目、3台目を注文していくのだそう。それだけサンジェの自転車が持つ魅力に多くの人が惹きつけられている証拠といえる。

電動アシストモデルの挑戦

そして現在、Alex Singerは電動アシスト自転車という新たな進化を遂げている。CAVALEを買収したことで、自分たちの哲学に合った自転車を自由に設計・製造できるようになった。フランス設計・フランス製造のコンポーネントを採用することで「フランス製」という伝統を守り続けている。

長い歴史の中で、Alex Singerの多くのオーナーが高齢化しているが、彼らがこの電動アシスト自転車に乗る喜びを感じられるのは想像に難くない。この新しいCAVALEの自転車は、息子のワルターを中心に、Alex Singerの新たな時代を切り開いていくことだろう。

サンジェをオーダにちょっとパリまで?

親子二代で運営されるAlex Singer。その伝統と革新の融合を感じられる一台をオーダーしに、パリへ足を運んでみませんか?

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI