NHK松山放送局の番組記事より

写真拡大

高知県黒潮町が2023年3月15日、情報番組「四国らしんばん」(NHK)で10日に放送された南海トラフ巨大地震の防災特集への見解をツイッターに投稿した。

番組では「四国らしんばん スペシャル『南海トラフ巨大地震 "若いチカラ"が命を救う』」として、地域の子どもが避難をためらう高齢者に声掛けする姿などが放送され、SNSで「子供にはまず第一に自分の身を守ることを教えなさいよ...」などと批判の声が上がっていた。NHK松山放送局はウェブサイトに番組内容をまとめた記事を掲載していたが「※公開当初の記事で避難訓練の趣旨が不明確だったため、3月12日に加筆・修正しました」として一部を加筆・修正している。

「この一点が逃げ遅れに繋がるなら、全てが台無しと思います」

放送では、黒潮町の小学生たちの避難訓練の様子を伝えた。地震で津波が来る可能性があるが、高齢者の多くが「どうやって逃げる?どこにも逃げられないでしょう」「もう、死ぬしかない」と避難をためらっているとして、「避難をためらう高齢者に対し子供たちが手助けし、避難に向かわせようという訓練が行なわれています」と伝えていた。

SNSでは、災害発生時にこうした行動を取ることに批判の声があがった。

「子供にはまず第一に自分の身を守ることを教えなさいよ...」「まず子供が東日本みたいなデカい災害が起きた時に、冷静に自分の身を守れるかさえわからない。大人だって慌てるのに」「その他の対策がいかに素晴らしくても、この一点が逃げ遅れに繋がるなら、全てが台無しと思います」「なんでこんな考えになるのか...高齢者も自分助けるために子どもが犠牲になるとか嫌だと思うんだが...」

「"率先避難者"になることを強く指導しております」

物議を醸す中、黒潮町は15日にツイッターで文書を公開。番組について「放送が『災害発生時に子どもたちが高齢者宅を訪問し、共に避難する』という印象を視聴者の方にあたえたことは、黒潮町としては、大変残念な結果です」として、局から聞いていたという番組主旨をこう伝えた。

「今回の放送・取材に関して、番組を制作したNHK松山放送局の主旨としては、『避難をあきらめていた』方に対して、子どもたちが避難訓練に誘い訓練を行うことで、避難できることを実感し『避難をあきらめない』意識に変わっていく様子を視聴者に伝えたかったと伺っております」

黒潮町内の小中学校の指導について「『黒潮町津波防災教育プログラム』により統一的な防災教育を行っています。その中で、第一に『自らの命は自らで守る』という防災に対する主体性を育む教育を行っており、"率先避難者"になることを強く指導しております」と伝え、「黒潮町では、今後も 『災害から生き抜く力』を育む教育を継続してまいります」としている。

「子どもたちが意識改革を促すことにひと役買う訓練」などに修正

NHKのウェブサイトでは松山放送局によって10日、「わたしたちが主役!地域防災を支える高知の子どもたち」のタイトルで番組内容が記事化されている。後に「※ 公開当初の記事で避難訓練の趣旨が不明確だったため、3月12日に加筆・修正しました」として記事内容を修正した。

具体的には「避難をためらうお年寄りたちの手助けに子どもたちがひと役買ったり」という記述が「避難をためらうお年寄りたちの意識改革にひと役買ったり」に修正。前出の「避難をためらう高齢者に対し子供たちが手助けし、避難に向かわせようという訓練が行なわれています」という記述も載っていたが、「京都大学防災研究所助教・中野元太さんの監修のもと、避難をためらう高齢者に対し、子どもたちが意識改革を促すことにひと役買う訓練が行なわれています」に修正されるなど、高齢者の避難を手助けする旨の情報が、避難に対する意識改革を図る旨の情報に置き換わっている。

末尾には、中野元太氏による「今回の訓練は、避難をあきらめる高齢者の意識を変えることを一番の目的に行っています。実際に地震が発生し、津波が来た場合には『津波てんでんこ』にあるように、子どもたちも自分の命は自分で守るために、真っ先に避難するよう指導しています」というコメントも加わっている。