この記事をまとめると

■ブレーキを踏み続けていると利きが悪化する

■これを「フェード現象」と言う

■予兆と対策について解説する

ブレーキを踏んでもクルマが止まらなくなる

 サーキット走行でブレーキを酷使したり、山道で下り坂が長く続き、ブレーキを踏み続けていると、次第にブレーキの利きが甘くなり、やがて強く踏んでも減速しなくなってしまう。これがいわゆる「フェード現象」。

 フェード現象が発生するメカニズムを簡単に説明すると、ブレーキを連続的に使ったり、ハードなブレーキを繰り返すと、ローターとバッドの温度が上昇する。ブレーキパッドがある一定の温度以上に上昇すると、ブレーキパッド摩擦材内の樹脂素材(レジン)が熱で分解気化し、パッドとディスクの間にガス膜ができてしまう。そのガス膜の影響でブレーキの摩擦係数が極端に低下してしまうことをフェード現象という。

 フェード現象が発生する温度は、ブレーキパッドの材質によってさまざまで、一般的な乗用車の純正パッドであれば、ローター温度が300〜350度に達すると、フェード現象が始まり出す。ブレーキがフェードすると、ブレーキペダルを踏んでも止まらなくなるので、これほど怖いことはない。

 したがって、フェード現象の予兆を感じたら、そのまま走り続けずに、安全な場所にクルマを止めて、ブレーキの温度が冷めるのを待つのがベスト。いまのクルマなら、突然フェード現象が発生してブレーキが利かなくなるようなことはないので、次のような予兆を感じたら気をつけよう。

 1) 焦げるような異臭がする(レジンの焼ける匂い)
2) ブレーキから白煙が出る
3) ブレーキの利きが甘くなってきた気がする

煙が出ていても水をかけてはダメ!

 前ページのような症状に気づいたら、ブレーキが完全に利かなくなる前にクルマを止めて、30分ぐらい休憩し、ブレーキを十分冷やしてあげよう。

 このとき、たとえブレーキからモクモクと煙が出ていたとしても、水をかけたりしないように! 煙が出るほど熱くなったブレーキに水をあけると、ローターが割れたり歪んだりするので、時間をかけて空気で冷やすこと。ブレーキが冷えれば、フェード現象は解消し普段の利きが戻ってくる。

 またフェードを起こさないための対策としては、耐フェード性の高いスポーツ用のブレーキパッドに交換するのが一番。

 乗り方では、長い下り坂であったとしても、ずっとブレーキを踏み続けるのではなく、直線部はギアを1段か2段落として(ATでも)、エンジンブレーキを使い、フットブレーキはコーナー手前に限って、しっかり短く使うようにする。

 ブレーキをちょこちょこ多用するクセがある人はとくに注意が必要で、AT車で普段から左足ブレーキを使っている人も、無意識のうちに軽くブレーキを踏み続けていることがあるので一度見直してみるといいだろう。

 なおブレーキパッドは消耗品で、乗用車なら4〜5万kmが交換の目安。新品のパッドは真在の厚みが10mmぐらいなので、それが5mm以下になったらそろそろ交換時期。2mmまで減ったら危険な領域だ。

 ただし、パッドの摩耗は耐フェード性にはほとんど影響しないといわれている。その代わり、熱の影響でブレーキフルードに気泡が生じ、ブレーキペダルが奥までスコンと入って利かなくなる「ペーパーロック現象」が起きやすくなるので、パッドはなるべく早く交換したほうが安心だ。ブレーキフルードも鮮度が命なので、2〜3年に一度は交換すること。

 ちなみに、『ESC』(横滑り防止装置)や 『EBD』(電子制御制動力配分システム)がついているクルマは、リヤブレーキを積極的に使って、姿勢制御を行なっているので、フロントブレーキよりもリヤブレーキのほうが高温になりやすく、パッドの摩耗も早い傾向があるので覚えておこう。