若者の「クルマ離れ」「バイク離れ」といわれるなか、ここ20年で150以上の指定自動車教習所が廃業に追い込まれています。そこで各教習所ではあの手この手を使ってお客を呼び込んでおり、その一つが「教習車の多様化」です。実はバイクの教習車も、かなり多様化しています。

クルマだけじゃない! バイク教習車も変わり種続々

 少子化や「若者のクルマ離れ」がいわれるなか、自動車教習所は生き残りをかけて、さまざまな工夫を凝らしています。そのひとつが「教習車の多様化」です。


バイク教習のイメージ(画像:写真AC)。

 都内を中心に、アウディやBMWといった輸入車で教習ができることをウリにする教習所があるほか、メーカーなどが用意する教習車も変わってきています。たとえば、「アクセラ」で一時期教習車の4割近いシェアを持っていたマツダは、2019年に日本未発売の「マツダ2セダン」をベースとした「マツダ教習車」を発売。このほか、教習車モデルのない車種を独自に教習車として取り入れる教習所もあります。

 実はこうした傾向は、バイクでも同様です。最近はどのような車種が教習車として使用されているのでしょうか。

二輪教習の定番バイク

 普通二輪教習車として長年定番となってきたのがホンダ「CB400SF-K」です。市販車の「CB400SF」をベースに、基本性能ややダウンさせた"初心者に優しい"仕様にチューニングされています。

 もう一つの定番車がヤマハ「XJR1300L」です。こちらは大型二輪の教習に使用されるもので、2017年に生産終了した市販車モデル「XJR1300」がベース。シート位置が低く跨りやすい、クラッチの耐久性が高いといった特徴があります。

 どちらの車種も、どのギアやブレーキを使用したかがわかる表示ランプが設置され、前方両サイドには金属管のバンパーが、転倒時に車体を守り、完全に横になるのを防ぐ"ロールバー"の役割も果たします。

教習所では日本未発売のバイクに乗って練習できる!?

「変わり種」の教習用バイクを見ていきましょう。

 まずは小型二輪(125ccまで)限定の教習車として2015(平成27)年に導入されたホンダ「CB125F」です。このバイクはもともと日本未発売の輸入車で、日本では基本的に教習所でしか見かけないモデル。日本に流通する「CB125R」との違いは、ホイールが1インチ大きい18インチであるほか、空冷式エンジンや、リアブレーキがドラム式である点などです。なお教習車仕様は、ギア比やエンジンの出力特性がチューニングされ、ロングライドよりも発進や停止など基本操作を扱いやすい仕様となっています。

 次はアメリカ製のハーレーダビッドソンです。100年以上の歴史を持つ老舗で、根強いファンを持つハーレーですが、全国600か所以上の教習所とパートナー教習所として連携しており、大型二輪の教習車に採用されているのです。


教習所でも使用されるハーレーダビッドソン「スポーツスターXL883」(画像:ハーレーダビッドソン)。

 教習車として使われているモデルは「スポーツスターXL883」「ストリート750」の2台が特に多いようです。どちらも軽量で車高が低いという特徴があり、取り回しの良さが理由です。

 ちなみに、ハーレーダビッドソンは新車購入者を対象に免許取得費用を最大10万円サポートするというキャンペーンを行ったこともあり、新規ライダーを積極的に取り込む姿勢を見せています。

 さて、教習車は一定年数使用されたあと、中古車として一般市場に出回ることもあり、自家用として乗ることも可能です。走行性能がベースモデルよりも低く調整され、カーステレオなどの娯楽設備が付いていないことから、価格帯も比較的抑えめの傾向にあります。例えば、「CB400SF-K」の場合であれば、中古で20万円から30万円ほどで取引されています。

 ギアランプなどの「教習用設備」が付属する点を除いても、乗り回すには少し物足りなさを感じますが、初めての二輪車として、教習所で「走り慣れた」ものを安く手に入れるという選択肢もあるかもしれません。