東京の地下鉄新線計画が、東京メトロの完全民営化に関係し、進むことになるかもしれません。東京都が保有する東京メトロの株式売却にあたって、新たな路線の整備を求めました。

新路線を想定したホームがすでに存在

 東京の地下鉄新線計画が、進むことになるのでしょうか。

 現在、東京メトロの株式は国が53%、東京都が47%を保有。この株式の売却により、東京メトロを完全民営化することが目指されていますが、売却にあたって東京都が新たな地下鉄の整備を求めていると2021年1月23日(土)、NHKが報じました。

 求められたのは、まず「有楽町線の延伸」。有楽町線豊洲駅と半蔵門線住吉駅を東西線東陽町駅経由で結ぶもので、全長は約5.2km。「豊住線」とも呼ばれます。駅はその3駅のほか、豊洲〜東陽町間、東陽町〜住吉駅間にも1駅ずつ設けられる想定です(決定ではない)。

 既存の豊洲駅、住吉駅とも豊住線の建設を踏まえた設計で、有楽町線の池袋駅方面と半蔵門線の押上駅方面で直通運転できる構造になっています。


2021年2月デビュー予定である有楽町線・副都心線の新型車両17000系(2020年、恵 知仁撮影)。

 開業の効果について、2019年3月に発表された国土交通省の資料では、錦糸町〜豊洲間の所要時間が約21分から約11分に、乗り換えが2回から1回になることや、東西線、有楽町線、JR京葉線の混雑が15〜20ポイント緩和されることなどが挙げられています。また、費用便益分析でも「社会経済的に有益な路線」「事業性が認められる路線」とされました。

 また豊住線について、それが通る江東区は「区内の南北交通の利便性向上のみならず、東京区部東部や埼玉県南部、千葉県北西部から国際競争力強化の拠点に位置付けられている東京臨海部へのアクセス性向上、東京メトロ東西線などの混雑緩和など、大変高い整備効果が見込まれています」としています。

 総事業費は約1600億円、建設期間は10年の想定ですが、2020年11月に行われた「東京8号線延伸の技術的検討に関する勉強会」では、新型コロナウイルスによる鉄道利用者減少といった影響を注視しながら、検討を進める必要があるとされています。

もうひとつの路線は「つくばエクスプレス」直通?

 東京メトロの株式売却にあたって、東京都は都心部と臨海部を結ぶ新たな地下鉄の整備も求めました。

 中央区の「都心・臨海地下鉄新線構想」では、新銀座駅と新国際展示場駅のあいだを新築地、勝どき・晴海、新市場駅経由で結ぶ約5kmの路線になっています(駅名は全て仮称)。

 またこの路線について、2016年4月に出された交通政策審議会の答申では、現在は秋葉原駅止まりであるつくばエクスプレスと相互直通運転すべき、とされました。つくばエクスプレスの東京駅延伸と一体的に整備し、単体では低い「都心・臨海地下鉄新線構想」の事業性を高めるためです。


つくばエクスプレス(常磐新線)との直通案が示された「都心部・臨海地域地下鉄構想」(画像:国土交通省)。

 同答申によると、その「都心部・臨海地域地下鉄構想」は事業性に課題があるものの、「国際競争力強化の拠点である都心と臨海副都心とのアクセス利便性の向上」「山手線等の混雑の緩和」の意義があるとしています

 また中央区はこの「都心・臨海地下鉄新線構想」の背景について、「近年、勝どき、豊海町や晴海などの臨海部では大規模開発により交通需要が増加しており、さらに東京2020大会後には、選手村の大規模住宅供給に伴う急激な人口増加による新たな交通需要が生まれることが見込まれています」としています。

 東京メトロの株式売却に関し、有識者による委員会が2021年7月頃に答申案をまとめるとNHKは伝えています。新型コロナウイルスの影響による鉄道利用者の減少、テレワークの広がりなどが考えられるなか、どうなっていくのでしょうか。