埼玉県警本部

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 埼玉県警の監察官室による内部調査で、刑事総務課長が女性記者と不倫関係にあったことが発覚した。実はこの幹部警察官は元監察官。一方の記者は、取材倫理を問われることになり……。

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︎読売新聞がベタで報じた“スクープ”

 この件をいち早く報じたのは読売新聞である。1月19日、第三社会面の隅に「女性問題で警視処分へ 埼玉県警」という見出しの一段記事が載った。

〈埼玉県警の50歳代の男性警視が、共同通信社の女性記者と不倫関係にあったとして、県警が処分を検討していることが18日、関係者への取材でわかった。警視は退職届を提出しており、3月に自主退職予定という。

 関係者によると、昨年5〜6月頃、2人の関係について匿名の告発文書が寄せられ、県警監察官室が調べたところ、警視は既婚者にもかかわらず、女性と不適切な交友関係を持っていたことが確認され、警視も認めた。

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 県警監察官室は「個別の案件の調査実施の有無については回答を差し控える」としている。共同通信社は読売新聞の取材に「内容については把握しておらず、コメントできない」としている〉

女性記者は、警視庁記者クラブに“栄転”していた

 読売の愛読者でも、つい見落としてしまいそうな短い“ベタ記事”である。だが、いま新聞記者たちは、このニュースで持ちきりなのだ。警視庁クラブの記者が語る。

「この共同通信の女性記者は、現在は警視庁クラブに所属しています。昨年の5月頃に、埼玉県警担当から警視庁の捜査一課担当に転属となったのですが、読売が報じた途端に姿が見えなくなりました。会社から出勤停止を言い渡されたと聞いています」

 新聞記者は入社してから数年、地方周りをして“修行”する。その後、本社にあがり、政治部、社会部、経済部などと割り振られるのだが、社会部の場合、警視庁クラブに配属されるのは優秀な記者だけだ。

「中でも凶悪事件を扱う捜査一課を担当する、通称“イッカタン”はエース級が投入される部署です。彼女も地方で名を馳せたからこそ抜擢されたのでしょう。ただ、前任地である埼玉県警クラブで取材先と不適切な関係にあったことが事実ならば、彼女のキャリアに大きく傷がついてしまいます。年齢は30代前半で、見た目はどちらかというと地味だったので、みんな『まさかあの子が』と衝撃を受けています」(同・記者)

ノンキャリの出世頭だった男性警視

 一方、男側の評判は真逆だ。埼玉県警関係者は呆れて言う。

「あの人ならば、さもありなんですよ。彼は10年くらい前に広報課にもいたので、当時から記者との付き合いは盛んだった。飲み食いさせたらベラベラ喋ると、記者たちは重宝していたようです」

 特に女性記者とはベッタリだったそうで、

「セクハラまがいのことをされたという記者たちの噂をよく耳にしました。容姿は小太りで禿げたオッサン。蓼食う虫も好き好きと言うから断定はできないが、恋愛関係だったとは思えませんね」(同)

 彼は刑事総務課長という県警の要職を務める幹部であった。刑事部の中でも総務課長は筆頭扱いであり、ノンキャリアの出世頭と言っていいポジションである。だが、実はそれより注目すべきは彼の前部署だという。

「彼は去年の3月まで監察官室で監察官をやっていたのです。つまり、ついこの間まで一緒に働いていた同僚たちに調査を受けたというわけ。おそらく写真などの動かぬ事実を突きつけられ、認めざるを得なくなったのでしょう」(同)

警察組織は不倫に厳しい

 監察官室は、捜査情報の漏洩や捜査費の流用など、警察官の不祥事を調べる部署である。調査対象には不倫も含まれる。

「警察というのは信頼性を重んじる組織なので、不倫にうるさいのです。警察官同士の不倫も事実認定されれば、『戒告』などの処分が下され、大抵の場合、自分から辞めざるを得なくなります。今回の場合、相手が捜査情報を欲しがる記者だったことを考えると、より重い処分になる可能性もあります」(同)

 すでに退職願を提出しているとのことなので、本人も自分のしでかしたことの重みは理解しているのだろう。埼玉県警に取材を申し込んだが、

「広報している案件ではないので、取材にはお答えできません」

 との回答だった。

女性記者の仕事とは……

 一方、共同通信は次のように回答した。

「一般職員の異動や配属先についてはお答えできません。職員の出勤状況についてはお答えできません。調査の有無も同様です」

 取材する側である記者が情報源である警察幹部と不倫関係にあったと指摘を受けたことについての見解も聞いたが、

「個別の取材プロセスについてはお答えできません」

 と言うのみ。

 騒動を受けて、警察への取材経験が豊富な女性記者はこう語る。

「警察官はほとんど男性なので、誘われたり、好意を抱かれたり、女性記者はみんな苦労しています。スクープを取ってきても、“それ、枕だろ”って言われて悔しい思いをしたことは何度もあります。ただ、もし本当に彼女が一線を越えてしまったのならば、記者倫理に触れる行為だったと思います。ネタを取りたい気持ちはわかりますが、“対価”を与えて得た情報は疑わしいと考えるべきです。しかも、結果的に情報源を傷つけ、失うことになってしまったのですから」

週刊新潮WEB取材班

2021年1月22日 掲載