「何しとんねん、コラ」Uber Eats配達員が軽トラと接触…中から強面の男が

―[40代日雇い男「Uber Eats」自転車出稼ぎ旅【東京発沖縄行】]―
僕は普段、日雇い派遣などの仕事で稼ぎつつ、時間を見つけてはタイなどの東南アジアを中心に旅してきた。この状況では海外旅行には行けそうにないが、日本国内ならば比較的自由に動けるようになってきている。旅がしたい。でも、社会の底辺で生きる僕にはお金がない。そこで「Uber Eats」の配達で稼ぎながら国内を自転車で旅するという方法をとることにしたのである。
◆大阪に着いていきなりのトラブル
旅に出て41日目、僕は京都にいる。この日はウーバーの配達で銀閣寺のほうまで出向いた。が、観光をすることもなく、ただ淡々と配達をこなす。そしてまずまずの収入を得ることができた。
42日目。京都滞在最終日である。この日は少し早めに配達を切り上げ、京都でウーバーの配達員をしている卓磨さんと3度目の再会をした。彼といっしょに木屋町通りのあたりをぶらぶらと散策し、メイドカフェにも入り、京都最後の夜を堪能した。
43日目。大阪に向けて出発する。京都から大阪市までは約46キロとそう遠くなく、自転車で数時間で到着できる距離である。おもに淀川沿いを走って大阪を目指した。トラブルが発生したのは大阪市に入ってすぐのことだった。
◆ウーバーのバッグが軽トラックと衝突
路肩に止まっていた軽トラックの横を自転車で走り抜けようとしたときだった。僕はウーバーのバッグに自分のリュックをすっぽりと収めて背負っていたのだが、それがその軽トラックのバックミラーにドン! とぶつかってしまったのである。
しまった……!
そう思ったが矢先、けたたましいクラクションといっしょに大阪弁の怒鳴り声が飛んでくる。
「おう、なにしとんねん、コラ!」
そして運転席のドアが開き、強面の男がツカツカと僕に歩み寄ってくる。
「バックミラー壊れとるやないか。どないしてくれんねん」
確認してみると、バックミラーの鏡を囲う部分に1センチ程度の小さなひびが入っていた。
「すみませんでした……」
僕はただ謝ることしかできない。
「弁償してくれるか」
「いくらですか?」
「1万や」
この小さなひびで1万……。
「払わんのか、コラ」
「いえ、払います」
しかし、財布を開いてみると、9000円しか入ってない。
「今、9000円しかないです」
「ほな、それでええわ」
9000円を払ってやっと釈放された。
そしてこの日から8泊予約していた住之江区の「エア大阪ホステル」に到着。チェックインを済ませると、すぐにドミトリーの板で仕切られたベッドに倒れ込む。そしてベッドカーテンをシャッと閉めて外の世界を断絶した。
これが大阪か……。
気持ちはズンと重く沈んでいた。もうここから一歩も外に出たくなかった。出ればまた大阪弁で「なにしとんねん、コラ!」と怒鳴られそうな気がして……。
◆20年ぶりに旧友と再会
しかし、また数時間後にはまたここから出なくてはならなかった。夜から大阪在住の旧友である光洋と飲みに行く約束があったのだ。彼とは昔、TBSの番組の企画で中国の北京で約40日間にわたっていっしょにドミノ並べをしたことがあった。会うのはそのとき以来、約20年ぶりの再会だった。
地下鉄を乗り継いで待ち合わせ場所の玉造駅に到着する。そこでしばらく待っていると、頭を丸刈りにした男がやってきて言った。
「おう、ていじ。久しぶりやな」
光洋だった。その顔を見た瞬間に笑いがこぼれてしまった。髪型以外、あの頃とほとんどなにも変わっていなかった。
◆“大阪”の夜は更けていく 駅からすぐ近くの立ち飲み居酒屋「嬉囲家」に入る。店は常連客で賑わっていた。僕はそこで日本酒の熱燗を飲みながら数時間前に起こったばかりの出来事を話した。とにかく誰かに聞いてもらいたかった。
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