『伊藤家の晩酌』〜第十九夜1本目/良い水、良い米で造られたまっすぐな「萩の鶴 手造り 純米酒」〜
弱冠23歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入! 酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは? 第十九夜1本目は、水のようにやさしい万能酒。(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)
第十九夜1本目は、食後にしみじみと酌み交わしたい「萩の鶴 手造り 純米酒」から。
宮城県栗原市の萩野酒造の代表銘柄「萩の鶴」。どんな味わいにも寄り添う透明感が特徴。
「萩の鶴 手造り 純米酒」720ml 1210円(税込・ひいな購入時価格)/萩野酒造株式会社
娘・ひいな(以下、ひいな)「今回はお菓子特集です! お菓子に合う日本酒、日本酒に合うお菓子を紹介します」父・徹也(以下、テツヤ)「つまり、デザートとして食後に合わせたい日本酒ってことだな」ひいな「そうだね」テツヤ「食後には、お茶じゃなくて、まだまだ日本酒を飲みたいぞ、と」ひいな「そう、そこ! そこがポイント」テツヤ「なるほど。今までもあったよね。雪見だいふくとか、早乙女さんが作ってくれたクリームブリュレも!」ひいな「スイートポテトもあったね」

テツヤ「このお酒は宮城県なのか! 仙台銘菓の『萩の月』もおいしいよね」ひいな「有名だよね。食べたことないんだけど。この『萩の鶴』は、どんな場面にも合うお酒っていうイメージがあったのね」テツヤ「それは、つまり、特筆すべき特徴がないとも言える?」ひいな「うーん、特徴がないわけではなくて、いろんなふうに化けるって感じかな」テツヤ「なるほど」ひいな「この間、トータルテンボスさんのラジオを聞いてたの。大村さんは、夜、食後にお茶を飲みながら家族とその日あったことを振り返るんだって。うちだと、お茶飲みながら、ああだね、こうだねって話すことってあんまりないなと思って」テツヤ「そうだね、しみじみ話す時、やっぱりお酒飲んでるしね」ひいな「お茶の代わりになるお酒って何だろう?と思ったら『萩の鶴』の純米酒のノーマルラベルかなと思って」テツヤ「いろんなラベルがあるんだ」ひいな「そう、前に飲んだことあるけどメガネのラベルとかね。『萩の鶴』の蔵はいろいろなことやってるんだけど、そのなかでも一番ベーシックな純米酒で、価格も1200円くらい」テツヤ「そりゃ、いいねぇ」ひいな「これを飲みながら、1日あったことを語るみたいなのに憧れがあるのね」テツヤ「っていうか、語る前にさ、もうひいなが寝てるから(笑)」ひいな「帰ってくるのが遅いからだよ(笑)! 今度さ、食事中にお酒飲まないで、食後にこのお酒で締めるっていうのはどう?」テツヤ「1日だけならいいよ(笑)。我慢できなさそうだから」
さてはて。どんな味なのか!?
常温の純米酒は、ちょっと手触りのある酒器で。
いざ、乾杯!
ひいな「だよね。ま、飲んでみようか」テツヤ「いただきます! わ、本当にお茶の代わりだな」ひいな「安心感すごくない?」テツヤ「うん。尖ったところがぜんぜんないね。クセがないから、スイスイいっちゃう」ひいな「華やかすぎもしないし、渋すぎもしないし」テツヤ「これこそ“上善如水”(じょうぜんみずのごとし)って感じの酒だね。どうやったらこんな水みたいな酒になるんだ?」ひいな「水のように安心して飲めるよね」テツヤ「これはデイリー酒としては最高だね」ひいな「最高でしょ?」テツヤ「うちに常備しておきたい」ひいな「いいね。一升瓶で買って、味の変化を楽しむのもいいと思う」テツヤ「これ常温でいけるの?」ひいな「うん、常温で売ってた」テツヤ「常温で売ってる酒ってさ、なんか手に取らなくなっちゃったよね。冷蔵してる生酒のほうがいいのかなって思っちゃってさ」ひいな「常温いいよ。今回のお菓子特集は、全部常温のお酒をご紹介します!」
「萩の鶴 手造り 純米酒」に合わせるのは、〈恵那寿や〉の「栗きんとん」。
〈恵那寿や〉の「栗きんとん」。栗と少量の砂糖だけ。栗のほっくりした甘さがたまらない!
ひいな「このお酒には、何でも合うと思ってたの」テツヤ「何でも合うでしょ。肉でも、魚でも」ひいな「うん。でもね、今回のテーマのお菓子で合わせてみたんだけど、お餅がぜんぜん合わなくて」テツヤ「餅? お米なのに?」ひいな「お餅とこしあんがぜんぜん合わなくて」テツヤ「お酒がさらっとしすぎてるからかな?」ひいな「わらびもち、あんこ、きなこ、栗を組み合わせてみたら、一番、栗が合うなって。しかも、甘みがない栗ね」テツヤ「季節だねぇ」ひいな「とっておきのデイリー酒に合わせるんだったら、とっておきの栗菓子を用意しようと思いまして!」テツヤ「おぉ!」

ひいな「岐阜の〈恵那寿や〉の栗きんとんを取り寄せちゃいました。ほんのちょっとしか砂糖を使ってないらしくて」テツヤ「先週、岐阜へ取材に行ってきたんだけど栗きんとん、今ちょうど季節なんだよな。恵那は小布施よりも栗が有名なんだってね。栗ってさ、ふかしてスープンですくって食べるくらいの、あの感じ好き」ひいな「甘み抑えめでほくほくのやつ。父がお土産でいくつか買ってきてくれたんだけど、取り寄せた、これが一番おいしかったんだよね。口の水分が奪われるから、このお酒と合わせて食べて飲んでね」テツヤ「お茶菓子ってそういうものだもんね(笑)。いただきます!うわ、これうま! 甘くなくて、栗そのまんま食べてる感じするよ。めちゃくちゃうまい!」ひいな「うわ、これ本当にお酒と合うね。口の中にお酒と栗を入れて一緒に飲んでほしい」テツヤ「この栗きんとん、うまいねぇ。栗そのものだよ、これ。保存効かないよね?」ひいな「うん。指定日がないと取り寄せできなかった」テツヤ「お酒の酸が急に立ってきたね」ひいな「ね。栗の甘みが引き立ててるんだろうね」テツヤ「相性がいいって、こういうことなんだなって感じ。お茶より、この日本酒のほうが絶対合う気がする」ひいな「うん、お茶よりお酒だよね! 特に、お酒をじっくり味わいながら、飲み込んだ時の感じがすごく合うよ」テツヤ「この栗きんとんが人生で一番うまいかも。ここ数回の中で、一番マッチングしてるんじゃない?」ひいな「おぉ! 絶賛」テツヤ「栗きんとんを引き立てつつ、単品で飲むより、断然うまくなったよ、このお酒。ヤバいうまさ!」
“上質な普段着”みたいなお酒を飲みながら、秋の夜長にしみじみと語り合う。

ひいな「このお酒のコンセプトがね、“上質な普段着”なんだって」テツヤ「あぁ、いいね」ひいな「この前、テレビでね、梅沢富美男さんがさ、無印良品のダブルガーゼのパジャマを1年に14着ぐらい買うんだって」テツヤ「そんなに!?」ひいな「それを思い出した(笑)」テツヤ「上質な普段着(笑)」ひいな「10年間、買い続けていて、大好きなんだって。毎年全柄そろえるくらい」テツヤ「着てみたくなってきたな(笑)。きっと気持ちいいんだろうな」ひいな「そんなお酒です(笑)。蔵のコンセプトとしては、いいものを少しだけ造ることを大切にしているんだって。名言があってね。お酒の一生は、新酒ができて30%、瓶詰め、火入れ、貯蔵で60%、おいしいと飲んで楽しんでもらって初めて100%になるって。造りのみで完結するんじゃなくて、その先にあるコミュニケーションを思い起こさせるような酒を醸したいって言ってるの」テツヤ「いい蔵だねぇ(拍手)」ひいな「蔵の方に、お話し聞いてみたいと思わない?」テツヤ「いいね、いいね」ひいな「ぜひ実現させたい!」テツヤ「正直、甘いものと日本酒って、若干不安な部分があったけど、すごくよかった」ひいな「いいでしょ?」テツヤ「予想以上に合ってたね。デザート的に甘いお酒ってわけじゃないから」ひいな「そうなの。普通の純米酒がお菓子にも合うんだっていうね」テツヤ「これからは、食後にもちびちびやろう」ひいな「うん、みんなにも、やってほしい!」テツヤ「まさか、こんな組み合わせがくるとは。あと2本、どんなお酒か楽しみだね」
次回:12月6日(日)更新予定

【ひいなのつぶやき】新たなかたちの食後の晩酌、ぜひお試しあれ!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中

