岸信千世氏(撮影・大橋和典)

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 歴代最長政権を築いた安倍晋三前総理が辞任を表明してから早2カ月。続いて“辞意”を漏らしたのはフジテレビ勤務の甥っ子・岸信千世氏(29)だった。すると、いよいよ懸案だった「安倍家」「岸家」の跡目争いに火が点いて、両家の間には不穏なさざ波が――。

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 安倍前総理は安倍晋太郎元外相とゴッドマザーこと、洋子夫人の次男にあたる。長男が三菱商事パッケージング社長、寛信氏。三男は岸家に養子に出され、菅政権で防衛大臣として初入閣した岸信夫衆院議員である。

 昭恵夫人との間に子がいない安倍前総理の後継問題は、かねて永田町では関心の的だったが、候補は2人。寛信氏の長男、三菱商事の法務部に勤める寛人(ひろと)氏と信夫氏の長男でフジテレビ社会部の記者、信千世氏だ。年の頃もほぼ同じである。

岸信千世氏(撮影・大橋和典)

 安倍家に通じる関係者は、

「洋子さんは晋三さんの後継を安倍家の寛人さんに、信夫さんの後継を信千世さんに、と考えてきました。しかし、寛人さんは政治に関心がなく、企業法務の仕事に携わりたいと今の会社に入社したのです」

 安倍前総理の後継問題が膠着状態となっていた中、新たな動きがあると言うのはフジテレビ局員。

「信千世さんが今月末で退社することになったんです」

 2014年に入社して以来、政治家の夢を隠すこともなかったという信千世氏。

「警視庁担当から宮内庁、そして今の気象庁担当になっても、飲むと政治の話を嬉々として語るし、伯父さんへの尊敬の念が感じられました。総理時代の安倍さんから“仕事がんばれ”と激励の電話があったことも。退社後はお父さんの大臣秘書官に就くそうです」(同)

 これは単なる退職にあらずと、先の関係者が言う。

安倍晋三前総理と岸信夫大臣

「晋太郎さんは義父・岸信介さんの外相秘書官、晋三さんも晋太郎さんの外相秘書官を振りだしに政治のイロハを学びました。すなわち、この秘書官就任は信千世さんが将来、政治家になることが約束された、ということなのです」

安倍の名を

 長く止まっていた後継選び。時計の針がついに動き出した。

 信千世氏本人に尋ねると、

「10月末で退社するのは事実です」

 と多くを語らないが、地元政界関係者はこう囁く。

「信夫さんは今回のことで“信千世は俺の後継だ”と周囲に話しています。ただ、信夫さんは政治的野心の全くない人。04年に初めて参院選に出馬した時も、12年に衆院に鞍替えした時も、岸家の再興を願う洋子さんの意向に従ったものとされます。だから、先の発言も洋子さんを忖度してのことだと言われているのです」

 一方、安倍前総理の心中は違っていて、

「安倍さんは洋子さんの意志に従いたくない。信千世さんに自身の地盤を譲り、信夫さんの選挙区は不動産会社に就職した信千世さんの弟が、と考えています。そうなると、安倍という名前を残すため、信千世さんと養子縁組をすることに。総理から退き、表舞台に立つ機会も少なく、“安倍ブランド”がいつまで持つかわからない。早ければ年内にも養子にしたい意向と言われています」(同)

 実際、信千世氏は退社を決意する前、周囲にこんな悩みを吐露している。

「父か伯父さん、どちらの職場で働こうか……」

 この関係者が続ける。

「安倍さんが総理時代には信千世さんを総理秘書官に抜擢しようという話もありましたし、今回も安倍事務所に秘書として入る案もあった。しかし、いずれも洋子さんを刺激するので見送りになったそう」

 やはり、ハードルとなるのは、未だ寛人氏にこだわっているとされるゴッドマザーその人で、

「安倍さんはまだ“信千世後継プラン”を洋子さんに承諾してもらえていません。これから話し合いをしていく予定です」(同)

 戦後から今に至るまで日本政治の中心に居続けた安倍家と岸家。その“血”を守るため、庶民からは窺い知れぬ駆け引きが繰り広げられようとしている。

「週刊新潮」2020年10月29日号 掲載