三菱電機の「青空照明」実物を見てきた。本物の空と区別不能
三菱電機の青空照明「misola」(みそら)の実物を見てきました。空が青くなる現象を模したLED照明で、10月に発売予定。価格は定価68万円です。

イタリア企業Coeluxに続き商品化に成功

そもそも、空が青くなる仕組みはこうです。太陽光が大気中の微粒子に当たる際、より波長の短い光のほうが散乱しやすい性質があり、可視光のなかで波長の短い青色だけが散乱します。その際に空が青く見えます。この現象を「レイリー散乱」と呼び、「misola」はこれを人工的に再現しています。

▲アクリルの光散乱帯を組み込み、空が青い原理「レイリー散乱」を再現

この「レイリー散乱」を用いた青空照明は、イタリアのスタートアップ「Coelux」(コールクス)が商品化で先行しており、日本でも代理店を通じて販売しています。三菱電機の「misola」はそれに続く製品です。

「misola」と先行する「Coelux」との違いは何か。三菱電機照明の担当者は『演出性よりも実用性を目指した』『一般的なオフィス照明と同サイズで施工性も高い』の2点を挙げます。

「Coelux」は"光が差し込む感じ"を再現するなど、より高級感があるのが特徴です。一方の「misola」は青空を模したのみで、"光が差し込む感じ"じは再現していません。しかし、全体をまんべんなく照らすため、一般的なオフィス照明の使用感を再現しています。


▲イタリアCoeluxは日射しの差し込み感まで緻密に再現、明暗の境界も生じる


▲「misola」は全体を均一に照らし、普通の照明としての使い勝手を追求

また「misola」の明るさは約3900ルーメンで、よくあるオフィスのグリッド型の照明と同程度。色温度は一般家庭のシーリングライトと同じ昼光色相当で、照らされた物体が青っぽく見えることもありません。

サイズも一般的なオフィス照明と同程度。器具高を12cmに抑えたことで、既存の建築物にも容易に導入できます。イタリアの「Coelux」は最薄モデルでも器具高が25cmと比較的大型です。


言われなければ本物の窓と勘違いするレベル

いざ「misola」の実物を見てみると、その青空感に圧倒されます。正直、言われなければ本物の青空と区別がつきません。

「Coelux」のように「光の差し込み感」はないのですが、擬似的に「光の差し込み感」を再現する仕掛けも施しています。具体的には、照明フレーム4面のうち3面または2面にLEDを組み込み発光させることで、本当に陽射しが差し込んでいるように立体的に見せています。


▲奥に青空が広がっている感がすごい

▲フレーム自体にLEDを組み込み発光させ、光の差し込み感を表現

器具高12cmという薄さを活かし、壁にも設置可能。天窓だけでなく窓も再現します。なお、壁に設置するタイプは2021年の発売となります。


▲壁に設置して「窓」も再現できる


▲照度は一般的なオフィス照明と同等の約3900ルーメン




▲写真では露出の関係で暗いが、実際にはかなり明るく照らされる

時間帯に応じて「朝焼け」「夕焼け」を再現する機能も搭載。この再現には色の異なるLED光源を用いています。なお、朝焼けと夕焼けは原理的にも光の成分的にも同じだといい、「misola」では特に光の成分などに差を設けてはいません。

オフィスからの引き合い多数、住居への導入は困難

この「Misola」ですが、三菱電機照明によると、当初は演出性の高さから、商業施設や病院からの引き合いを想定していたといいます。しかし実際には、働き方改革の文脈から、オフィスや倉庫への導入を希望する問い合わせが多いとのこと。

68万円という価格はあくまで定価。施工費は別に発生します。価格は一般向けのオフィス照明の5倍以上となっており、予算を潤沢に使える新築物件からの引き合いが多くを占めます。

なお、一般住居への導入は困難です。これは、「misola」は天井にボルトで固定する方式のため。最近のマンションは階数を稼ぐために、天井の厚さをギリギリまで抑えているといい、ボルトを打つスペースがありません。また、在来工法の物件なら可能性はありますが、10kgを超える重量も課題になります。

とはいえ「misola」の屋内の閉塞感を打ち破る明かりは、まさに「未来の照明」といったところ。より高級な「Coelux」と共に今後の普及が大いに楽しみです。

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