by coyot

アボカドの果実は栄養価が高く、近年ではサラダやソースとしても使われて世界中で人気となっています。メキシコはアボカドの生産量や輸出量で世界1位の国であり、国際市場に流通するアボカドの45%がメキシコ産だそうですが、メキシコで勢力を広げる麻薬カルテルがアボカド農家に目をつけており、農家は自らを守るために武装した自警団を組織するなどの抵抗を続けています。

Cartels threaten to spoil avocados

https://www.arkansasonline.com/news/2019/oct/27/cartels-threaten-to-spoil-avocados-2019/

アメリカでは1914年以来、害虫や疫病を恐れてメキシコからのアボカド輸入を禁止していましたが、1997年にアボカドの輸入を解禁。ここ10年で巻き起こったアボカドブームに乗じてアボカドの需要は増大し、今やメキシコの年間輸出額は24億ドル(約2600億ドル)を超えているそうで、アボカドは「Green Gold(緑の金)」とも呼ばれています。

メキシコ中西部にあるミチョアカン州は、メキシコから輸出されるアボカドの90%近くを生産する主要な栽培地であり、アボカドブームによって地域の貧困が解消されつつあるとのこと。しかし、アボカド需要の拡大による農家の収入増加が、暴力的な麻薬カルテルを引きつけてしまっているそうです。

ミチョアカン州の小さな村、サン・ファン・パランガリクティロでは、小規模なアボカド農家らが自警団を組織し、M16自動小銃などで武装しています。自警団のメンバーは交代でチェックポイントの警備を行い、麻薬カルテルや強盗などの襲撃に備えています。自警団のメンバーであるアボカド農家のPedro de la Guante氏は、「アボカドがなければ仕事を見つけるためにメキシコを離れなければなりません」と述べ、アボカドを守るために戦う価値があると主張しました。Guante氏はかつて雇われ労働者として農業に従事していましたが、11年前に2.4エーカー(約9700平方メートル)の土地にアボカドを植えて以降、安定した収入が得られるようになりました。



by nattanan23

メキシコのアボカド農家は長年にわたり犯罪組織の暴力や脅迫にさらされてきましたが、近年では新たな問題に悩まされています。2019年8月、ミチョアカン州で2番目に大きい都市・ウルアパンの西にあるシラクアレティロにおいて、アメリカ合衆国農務省(USDA)の動植物検疫局(APHIS)の検査官チームが強盗に襲撃される事件が起こりました。

この事件を受けて、USDAは「APHIS職員の安全が脅かされたり差し迫った身体的脅威を将来的に招く状況になれば、アボカド果樹園の検査プログラムを直ちに停止します」とコメント。この動きはアメリカへのアボカド輸出停止につながる可能性があり、主要な輸出先を失うことでアボカド農家が受けるダメージは計り知れません。

アボカド栽培が盛んなメキシコ西部のある警察署長は、ロス・ビアグラスと呼ばれるカルテルが恐喝や誘拐による身代金の要求など、あらゆる悪事を働いてきたと述べています。また、カルテル同士の抗争も激しいものであり、2019年8月にはミチョアカン州の北西にあるハリスコ州に基盤を置くハリスコ新世代カルテルがロス・ビアグラスのメンバーを10人以上も殺害し、「仲間になってビアグラスのメンバーを殺せ」というメッセージを残す事件も発生しているとのこと。

もちろんカルテルによって殺害される可能性があるのは警察官や自警団員、アボカド農家たちも同様です。「売上の数割を上納金として納めろ」というカルテルの要求に応じないアボカド農家が報復に殺害されることがあるほか、2019年10月にはカルテルが警察官らを銃撃して13人を殺害する事件もありました。これに対してアボカド農家もアメリカから密輸された武器で武装した自警団を組織したり、町の入口に検問所を設けたりするなどの抵抗を行っています。



by Kjokkenutstyr

ミチョアカン州では広大なフェンスで囲まれたアボカドの果樹園や新しい梱包工場などが目立ちますが、2013年に自警団設立運動を行ったHipolito Mora氏によると、今でも武装した強盗が農家が収入として得た現金を狙って襲ってくることが絶えないとのこと。また、地域経済がアボカド栽培に大きく依存しているため、「事業主がアボカドの梱包工場を閉鎖すれば、地域経済は破綻するでしょう」とMora氏は述べました。

警察官が犯罪組織とつながっているケースも多く、シラクアレティロではアボカド農場の農園主や労働者が警察官らによって誘拐される事件も発生しています。シラクアレティロの市長であるJose Rodriguez Baca氏は、「誰もが心配しています。アメリカが輸入を止めれば、全てが壊れてしまうでしょう」とコメント。

メキシコ政府や州政府は軍隊や国境警備隊が問題を抱えた町を訪れ、数週間ほど警戒を行ってから別の町へ向かうという反犯罪戦略を採用していますが、このシステムは上手く機能していないそうです。その証拠に、APHIS職員が襲われた事件は、シラクアレティロから武装した州警察が撤退した翌月に発生しています。



by Rob Lee

シラクアレティロに6エーカー(約2万4000平方メートル)のアボカド農園を持つCarlos Martinez氏は、いい年には50トンものアボカドが収穫できるそうで、年収は10万ドル(約1100万円)近くになるとのこと。金網フェンスで農園を守り、警備員を雇っているMartinez氏は、麻薬カルテルからの脅迫を恐れて知らない電話番号には応じないことにしているそうです。「私たちは襲撃が起こらないことを望んで毎朝目を覚まします」と、Martinez氏は述べています。

ウルアパンの大学教授であるAdriana Villicana氏は、アボカドブームが数千人もの貧困を救ったと指摘。アボカド産業は女性にとってもいい就職先だそうで、「梱包工場で働く女性は多く、その多くがシングルマザーや独身の女性です」とVillicana氏はコメント。もしもアボカド産業が崩壊した場合、働き先を失った労働者らが犯罪に走る可能性は高く、地域の犯罪は増加するだろうと主張しました。



by Parée