世の企業は今でも学生の"出身大学"を採用基準の一つにしています。学歴フィルターで「一定の偏差値以下の大学生とは面接すらしない」という企業も珍しくありません。

しかし、昨今の学生の売り手市場において、採用担当者が出身大学を基準にして採用することは非効率になってきています。私自身、企業の人事責任者として採用活動をする中、肌でそう感じています。

見るべきは"大学の偏差値"よりも"高校の偏差値"。これが売り手市場における採用の勝ちパターンです。では、なぜ高校の偏差値を見るべきなのか。私の経験も踏まえながらご説明します。(文:株式会社トヨコー 経営戦略室 中村 勇太)

「頭の回転が早い人」が欲しいなら大学の偏差値に固執する必要はない

新卒採用市場は低コストで優秀な人材が採りやすいマーケットです。転職市場においては、優秀層と接触することはそもそも難しく、また高給取りであるため金銭面で諦めざるを得ないケースがあります。

そのため、企業は「優秀さを大学の偏差値で判断して採用するのが効率的である」という考えのもと、新卒採用を行っています。

しかし、地頭の良い学生を探すのに、大学の学歴だけで判断するのは最適な方法なのでしょうか。そもそも、企業はただ偏差値の高い学生を採用したいわけではありません。採用要件は企業によって異なりますが、多くの場合、「頭の回転が早く、要領の良い学生」を採用したいと考えています。そこで重要になってくるのが「高校の偏差値」なのです。

AO入試の学生は基礎学力が低いケースも

文部科学省の資料によると、2018年度の全大学の入学者のうち、推薦入試・AO入試を経由した学生が45.2%でした。半分近くの学生が、推薦入試・AO入試で入学しています。

推薦入試やAO入試で良い大学に入った学生の中には、基礎学力が低かったり、知的好奇心の少ない人も多く、高学歴だからと言って優秀だとは限りません。

一方で、高校の入試は一般入試の割合が高く、また受験勉強の時間も大学入試と比べて短い傾向にあります。また、ほとんどが現役で入学するため、「浪人して偏差値の高い高校に行く」というケースもほぼありません。

このような現状を鑑みると、大学名よりも高校名の方がより正確に地頭の良さを反映していることが多いです。

中小、ベンチャー企業は大手企業と同じことをやっていては勝てない

さらに、高校への進学率は97%を超える一方で、大学への進学率はまだ53.3%です。つまり、大学だけを見ていると約47%の学生を逃すことになります。「約半分の学生の機会損失」と考えると勿体ないですよね。

そこで、やはり「高校の学歴を見るべき」という考えに至ります。高校の偏差値を見れば、機会損失を抑えながらも能力の高い学生に出会える可能性が高いです。

この話を聞いて、「47%の中に優秀な学生はいない」と思う方もいるかもしれません。ですが、果たして本当にそうでしょうか。大学はお金も時間もかかるため、家庭の都合や学校で学びたいことがない場合、進学を選ばない優秀な学生も沢山います。

実際に私も1000人以上の就活生と接する中で、このような理由で大学に行っていない、けど賢く優秀な人を何人も見てきました。大学だけを参考に足切りにするのは、チャンスロスが大きいのです。高卒採用はある意味"採用の穴"とも言えます。

もちろん、高校の偏差値が高いからといって、そう簡単に優秀な学生に巡り合えるわけではありません。クセの強い人も沢山います。

しかし、中小企業やベンチャー企業が大手に負けない採用をするためには、このような穴を狙っていく工夫が必要だと考えています。大企業と同じことをやっていては勝てません。大学ではなく、高校の偏差値を見る。あくまで一つの採用方法ですが、採用担当者は一度試してみてください。

【筆者プロフィール】中村 勇太

新卒では大手金融会社に就職。その後、人材ベンチャーに転職し、約300社の企業と1,000名以上の学生のキャリアコンサルを行う傍ら、多くの学生をインスパイアするための「社長と学生が気軽に出会える」マッチングアプリの立ち上げを行う。現在は株式会社トヨコー経営戦略室、人事責任者。