大阪環状線から国鉄型の通勤電車が引退。ほかのJR線でも国鉄型の通勤電車はほとんど見かけなくなりました。しかし、いまも一部の路線で「昭和レトロ」の懐かしい雰囲気が漂う国鉄型の通勤電車が健在。どこに行けば会えるのでしょうか。

大阪環状線からは引退したが…

「国鉄型」の通勤電車が、また数を減らしました。国鉄時代に製造された201系通勤形電車が、2019年6月7日をもってJR西日本の大阪環状線と桜島線(JRゆめ咲線)での運転を終了。両線を走る旅客列車は関西本線(大和路線)から部分的に乗り入れている列車を除き、323系電車などJR発足後に製造された車両に統一されました。


国鉄時代に製造された通勤電車は大幅に数を減らしたが、いまも西日本を中心に見たり乗ったりできる。写真は奈良線の103系(2013年1月、草町義和撮影)。

 国鉄型の通勤電車は製造から30年以上が過ぎており、近年製造された新型車両に比べ、見劣りするのは否めません。しかしその一方、昭和、平成、令和をまたいで運転されてきた、昔懐かしい雰囲気が漂うデザインの車両でもあり、日々の通勤や通学で利用して、思い入れのある人もいるでしょう。なかには「若いころに通学で使っていた国鉄の通勤電車に、もう一度乗ってみたい」と思う人もいるかもしれません。

 国鉄時代に製造された通勤形電車のうち、ほぼ毎日のように営業運転しているのは、201系と103系、105系、205系の4形式です(2019年6月8日時点)。

 103系は1963(昭和38)年から1984(昭和59)年にかけ、東京や大阪など大都市の通勤路線を走る普通列車向けに製造された通勤電車。その総数は約3400両におよび、国鉄の通勤電車といえば、この103系をイメージする人が多いかもしれません。

 分割民営化時にJR北海道とJR四国を除く旅客4社が約3400両を引き継ぎましたが、JR東日本とJR東海の103系は2009(平成21)年までに引退。JR西日本とJR九州の103系も徐々に数を減らしており、2019年4月1日時点では合計約60両と、ついに100両を割りました。

 JR西日本の103系は関西の普通列車で使われています。運行範囲は奈良線、大和路線、山陽本線の兵庫〜和田岬間を結ぶ支線(和田岬線)、加古川線、播但線の姫路〜寺前間です。

引退が決まっている電車も

 奈良線と大和路線は、一部の普通列車が103系で運転されています。和田岬線はすべての列車が103系ですが、ごくたまにJR発足後に製造された電車が代わりに走行。播但線の普通列車は大半が103系で運転されており、一部の普通列車のみJR発足後の電車です。加古川線の103系は、加古川〜西脇市間を中心に運転されています。

 JR九州の103系は、福岡近郊の筑肥線・唐津線 筑前前原〜西唐津間で運転。同線は福岡市営地下鉄空港線と接続して相互直通運転を行っていますが、空港線に乗り入れているのは現在、JR発足後の新しい電車だけです。


和歌山線など関西の105系はまもなく引退する予定(2017年3月、草町義和撮影)。

 105系は地方路線の普通列車用として、1981(昭和56)年に製造されました。仕様や性能は103系に近いですが、比較的長い編成を組まないと走れない構成だった103系に対し、105系は短い編成でも走れるようにしたのが特徴です。のちに103系を改造して105系に編入した車両が登場し、見た目が103系にそっくりな車両もあります。

 JR東日本とJR西日本が合計125両を引き継ぎましたが、JR東日本の105系はすでに消滅。JR西日本の105系は近畿地方と中国地方に約90両が残っています。

 中国地方では、山陽本線の岡山〜福山間と新山口〜下関間、福塩線、宇部線、小野田線の一部の普通列車で105系に乗ることができます。2019年3月31日時点で新型車両への置き換え計画はありません。

 近畿地方の105系は103系を改造した車両で、和歌山線、桜井線、紀勢本線(和歌山〜和歌山市間と紀伊田辺〜新宮間)の一部の普通列車で使われています。しかし、2019年3月のダイヤ改正で、新型車両の227系1000番台電車がデビュー。これに伴い、近畿の105系は秋ごろに引退の予定です。

201系はおおさか東線などで引き続き活躍

 大阪環状線とJRゆめ咲線から引退した201系は、1979(昭和54)年にデビュー。省エネルギー化の技術を導入したのが特徴で、車体も運転室の部分を黒くした「ブラックフェイス」を採用するなど、デザインが一新されました。


全線開業したばかりのおおさか東線で活躍が続く201系(2019年3月、草町義和撮影)。

 JR東日本とJR西日本が合計約1020両を引き継ぎましたが、2019年4月1日時点ではJR東日本が1両、JR西日本が約170両で、JR発足時の2割以下に。JR東日本の1両はすでに使われておらず、実質的にはJR西日本の関西エリアにしか残っていません。

 運転範囲は大和路線のJR難波〜加茂間、おおさか東線、和歌山線の王寺〜高田間、桜井線。JR発足後の車両に混じって走っていますが、おおさか東線は新大阪〜奈良間の直通快速を除き、すべての普通列車が原則として201系です。

 1984(昭和59)年に最初の編成が完成した205系は、国鉄の電車としてはステンレス車体を初めて本格的に採用しました。ただ、JR発足後の1994(平成6)年まで製造されており、その数も国鉄時代の製造分(約370両)よりJR発足後の製造分(約1100両)のほうが多く、「国鉄型」というよりはJR初期の通勤電車といえるでしょう。

 2019年4月1日時点で約480両まで減りましたが、それでも国鉄時代より3割近く多い数字です。現在はJR東日本とJR西日本の普通列車として、大都市の通勤路線から地方路線まで幅広く使われています。一部の車両は私鉄や海外の都市鉄道に譲渡されました。

 こうしてみると、国鉄型の通勤電車は意外と多く残っています。とはいえ、老朽化が進んでいるのは確かで、すべて引退する日も、そう遠くないでしょう。乗りに行くなら早めのほうがいいかもしれません。

 ちなみに、普通列車用の国鉄電車としては、通勤形のほかに「近郊形」があります。やや長い距離を走る普通列車向けで、115系などの近郊形電車がいまも現役ですが、こちらもJR発足時に比べ大幅に数を減らしています。

※一部修正しました(6月17日10時40分)。