事故の大半が「だろう」運転によるもの

 誰もが避けたいと思う交通事故だが、そのパターンはある程度決まっている。警察庁の資料を見ると、道路形状別では半数以上の約54%の事故が交差点で起きている。

 その内訳は信号ありの交差点が15.5%、信号なしの交差点が23.9%、交差点付近が14.2%といった割合だ。この交差点での事故のワースト3は、「出会い頭衝突」「追突」「右直事故」で、一番多いのは「出会い頭衝突」。

 原因は一時停止無視や、相手のクルマや自転車の存在に気が付かなかった、相手が止まると思った、(いつも)クルマや自転車は出てこない……といった、油断系に集約される。

 見通しの悪い交差点では一時停止の有無にかかわらず、横からクルマや自転車、人が飛び出てこないかチェックして、「ノーブレーキで飛び出てくる車両があるかもしれない」と、警戒、徐行しながら通過するのが重要なポイント。

 カーブミラーなども最大限活用し、こちらから相手のクルマが見えている場合でも、相手がこちらに気付いていないことは十分にあり得る。たとえこちらが優先道路であったとしても、相手が減速するのを確認するまでは、こちらが止まれる準備をしておくようにしよう。

 次に「追突」。追突は交差点に限らず、車両相互事故の約42%を占める大きなリスク。追突事故の原因は、脇見運転、動静不注視、漫然運転、居眠り運転、運転操作不適、車間距離不足などが挙げられる。

 交差点に限っていえば、赤信号の停車中の追突は前方不注意が原因なので、信号や前方のクルマを見落とさないように気をつけるしかない。また、自分が停止したあとは、バックミラーで後続車をチェックし、きちんと気づいて減速し始めているかどうかも確認したい。

交差点右折時は細心の注意を払う必要があることを再認識しよう

 黄色信号での追突は、信号手前で迷わないことが肝要。信号が変わりそうになったのに気づき、急に加速したあとやっぱりブレーキというのが一番危ない。黄色信号で急ブレーキも危ないし、青から黄色になるかならないかのタイミングで減速するのもリスクがある。信号が黄色になってから余裕で止まれるタイミングならブレーキ、そうでなければ通過してしまったほうが、追突される危険は減らせる。

 また、右左折のための減速、停止中に追突されるパターンもある。こうした追突を減らすには、早めのウインカーが重要。ブレーキを踏む前にウインカーを出して、何のためにブレーキを踏むのかをあらかじめ後続車に知らせることで、追突対策につながるし、ウインカー・ブレーキランプという二段階のステップを踏むことで、後続車が見落とすリスクの軽減が望める。

 最後は、交差点で右折車と直進車が衝突する、いわゆる「右直事故」。「松本走り」でも話題になった、右折車と直進車がぶつかる事故だが、原因のほとんどは右折車側にある。

 右折車が対向車を見落とす、とくにバイクを見落とすケースが多い。バイクは車体が小さいのでクルマの陰に隠れやすく、視界に入っていても速度や距離感が掴みにくくて、見誤ることがあるので、注意が必要。

 ライダーは昼間でもライトをつけて自己の存在をアピールし、クルマの脇から出ていく際は、右折車がいないか要確認。右折車は、対向車も右折するようなときに、そのクルマの脇からバイクが出てくるかも、と用心しておくことが肝要。

 また対向車が譲ってくれたときなどに慌てて右折を開始し、横断歩道の歩行者や自転車にぶつかるというパターンも少なくない。対向車の直進車がトラックなどの大型車の場合、その後ろのクルマの存在に気が付きにくいので、慎重に安全確認を。

「魔の時間」と呼ばれる日没前の薄暮時間帯はとくに危険で、ヘッドライトをつけているクルマとスモールライトだけのクルマ、そして無灯火のクルマが点在すると、スモールランプや無灯火のクルマは存在感が薄く、右折車が突っ込んでくるリスクが高くなる。日没30分前にはヘッドライトをつけるようにしよう。

 そして右折する場合は、対向車に減速をさせないタイミングまでしっかり待って、余裕を持って曲がること。もちろん横断歩道や曲がった先の道の状況の確認も忘れずに。なにより、交差点では直進車が優先という大前提を再確認し、ドライバーが共有しておくことで事故は減らせる。

 交差点での人身事故は、以上の3パターンだけで7割以上になるほど高確率。交差点を通るときはルールを守ることはもちろんだが、安全確認が不十分なドライバーだっているということを頭に入れて、周囲のドライバーを信用しきることなく「だろう運転」ではなく、「人やクルマが飛び出してくるかも」「バイクや歩行者がいるかも」「前の車が止まるかも」と、警戒しながら走ることを習慣化しよう。