木村翔(Zyxdtc/Wikimedia Commonsより)

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 5月26日、中国の江西省撫州市でボクシングのダブル世界戦があり、2人の日本人が挑戦者としてリングに立った。

 一人は前WBA世界スーパーバンタム級王者の久保隼(29)で、地元出身の王者・徐燦(25)に挑み、6回TKO負けを喫した。

 奇妙なのはもう一人、前WBO世界フライ級王者の木村翔(30)だ。対戦相手はWBA世界ライトフライ級王者のベネズエラ人、カルロス・カニサレス(26)。日本人とベネズエラ人の試合をなぜ中国で? しかも日本では地上波中継がなかったのに、中国では国営放送が全国生中継したという。

「木村は、日本人でも知らない人がほとんどですが、実は中国では大人気のボクサーなんですよ」

 とボクシング関係者が明かす。

木村翔(Zyxdtc/Wikimedia Commonsより)

 端緒は2017年7月に遡る。木村は、上海でWBO世界フライ級王者の鄒市明(ゾウシミン)と対戦した。鄒は、オリンピック2大会連続金メダルの国民的英雄。はっきり言って、木村は鄒の噛ませ犬として招かれた。

「場内はもちろん完全アウェー。木村は“もし俺が勝ったらリングから下りられないな”なんてこぼしていたそうですが……」

 結果はなんとTKO勝ち。しかし、それ以上に驚くべきことが起こった。試合後、木村の人気が爆発したのだ。

「4畳半のアパートに住み、アルバイトで糊口を凌ぐ極貧生活が伝えられ、それが中国人の胸を打ったのです」

 一方の鄒は、国営放送の美人アナウンサーと結婚するわ、外車を乗り回すわ、バラエティ番組に出るわ……という男だった。

「ネット上では、“ぶっちゃけ鄒っていけすかない奴だよな”“庶民である我々はむしろ木村を応援すべきだ”などという意見が噴出。さらに木村は、インタビューの際に、鄒をリスペクトする発言をしたことで、“なんて謙虚な好青年なんだ”と一段と株を上げた。今や中国で木村は、福原愛に次いで有名な日本人ですよ」

 あいにく試合は0-3で判定負けに終わったが、

「人気は衰えないでしょう。彼が貧乏である限りは」

「週刊新潮」2019年6月6日号 掲載