決勝戦で負けることが、これほど精神的に堪えるとは思わなかった。2月1日の夜はとても長く、ひどく疲れるものとなった。

 カタールは今大会でもっとも戦術的に洗練されたチームだった。スペイン人のフェリックス・サンチェス・バス監督は育成年代から代表に関わり、彼とともにフル代表へステップアップしてきた選手は多い。日本戦で先制のオーバーヘッドを決めたアリ、3点目のPKを流し込んだアフィフらは、スペイン人指揮官とともにU−19アジア王者に輝いた選手だ。

 23人のメンバーのうち22人が国内クラブに所属しており、日本戦ではスタメンの7人がアル・サッドに所属している。ワンタッチパスを効果的に使い、3人目の動き出しが滑らかなパスワークも納得である。
それにしても、ここまで打ち負かされるとは。

 カタールという相手を多少なりとも理解しながら、僕は気持ちのどこかで過小評価していたのだろう。そう言われてもしかたがない。

 誤解を恐れずに言えば、僕だけでなくかなり多くのメディアが、イランに勝ったことで5度目の優勝が見えたと感じていたように思う。決勝戦を前にした空気感は、4日前の準決勝とは明らかに違うものだった。安堵感と達成感のようなものが、織り交ざっていた気がする。

 ロシアW杯を知らない選手が経験を積んできた。チームが成長してきた。勝利を重ねることで自信を得ている──そういった言葉が当たり前のように選手たちから聞かれ、僕を含めたメディアもまた当たり前のように一つひとつの言葉を受け止めていた。

 だから、カタール戦後に吉田が話した言葉には、ひどく胸を突かれた。「イラン戦でいい試合をして、そのままの流れでいけるだろうという油断やスキのようなもの」を、彼は感じていたという。「それを律することができなかった」と、自分を責めた。

 吉田の話が記憶の引き出しを開けるカギとなり、1993年10月を思い返した。カタールの首都ドーハを舞台としたアメリカW杯アジア最終予選である。

 韓国との第4戦に1対0で勝利した日本は、6か国の総当たりリーグ戦で首位に立った。上位2か国が出場権を得るW杯は、手の届くところまで近づいている。韓国撃破の試合後は、選手も、メティアも沸き立った。

 そんなときだった。ラモス瑠偉が鬼の形相で「まだ終わってないよ」とメディアの前で口にしたのだ。
サッカー王国ブラジルで生まれ育った彼は、危険を察知したのだろう。油断やスキが忍び寄っていることを、チームメイトに、メディアに伝えたかったのだ。

 一度緩んだ緊張感を取り戻すのは、想像以上に難しい。紐を結び直すようにはいかない。

 その結果が、カタール戦だった。

 カタールは強かった。22年のW杯開催を控えて、確実に強化をはかっている。20代前半の選手が登録メンバーのほぼ半数を占めていたことを考えると、W杯後もアジアで存在感を示していきそうだ。

 それにしても、ここまで打ち負かされる相手ではなかった。技術や戦術で圧倒的優位に立っていたわけではないし、個の力も互角かやや劣っていたが、勝てない相手ではなかった。

 自分たちでどうにかできる部分──メンタルが勝負を分けたとしたら、これほどもったいないことはない。そして、選手に「油断やスキがあった」と言わせてしまうのは、メディアにも責任がある。森保監督と選手だけを、責めるわけにはいかない。