「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は、味覚の秋を彩る山の幸「茸(きのこ)」。草かんむりに耳、と書いて、「タケ」とも読む漢字です。



「茸」は常用漢字ではなく人名用漢字で、この字は「国」に「訓読み」の「訓(クン)」と書く「国訓」と呼ばれるもの。

すでに漢字に同じ字体があることを知らずに日本で作られた文字で、元々の漢字の意味とは無関係に、日本で使われています。

中国で茸を意味する漢字は「細菌」「ばい菌」の「菌」という字。

植物を意味する部首である草かんむりの下に、「くにがまえ」と呼ばれる部首である「口」、その中に「のぎへん(禾へん)」の「禾(のぎ・カ)」を書きます。

「禾(のぎ)」は稲や穀物を表しますが、この部分は温かく湿った所に何かが密に生えている様子を意味します。

密集して生える生物である「きのこ」を表したのでしょう。

ところが、のちに細菌が発見されて、顕微鏡などを通してしか見えない微生物のことを表すようになったため、かわりに誕生したのが、今回の漢字「茸(きのこ)」です。

草かんむりに「耳」と書く「茸」。

耳たぶは柔らかくてこまかい産毛が生え、さらに、傘の部分の感触が耳たぶに似ているものもあることから、「茸(きのこ)」という漢字が出来ました。

人名漢字であるこの漢字の音読みは「ジョウ」、訓読みは「しげる」「たけ」などになります。

森林に恵まれた日本は、茸が秋のごちそうです。

舞茸やなめこ、占地(しめじ)に松茸。

中でも、味はもちろん、その香りや立ち姿のよさで、いにしえの頃から人々を夢中にしてきたのが松茸です。

歴史書である『日本書記』に初めて登場した松茸は、天皇への贈り物。

それ以前にも、『万葉集』詠み人知らずの歌に、松茸が笠を立てて一面に生え、あたりを良い香りで満たしている様子を詠んだ一首があります。

もちろん、平安貴族も戦国武士も、江戸の庶民も松茸狩りへ。

みな、思い思いに松茸尽くしを楽しんでいたようです。

ではここで、もう一度「茸」という字を感じてみてください。

弥生時代中期の水田遺跡、岡山市百間川兼基遺跡から出土したのは、高さ六センチちょっとの小振りな土人形。

笠にあたる部分に目、鼻、口が彫り込まれ、人の顔になっています。

茸の姿をした土人形は、ちょっととぼけた親しみやすいお顔。

松茸がいにしえの人たちにとっていかに身近な存在だったかがわかります。

たとえ松茸には手が届かなくても、茸売り場は今が盛り。

きのこ狩りの気分を楽しんだら、滋味豊かな味わいに酔いしれてください。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『ものと人間の文化史 84 松茸(まつたけ)』(有岡利幸/著 法政大学出版局)

11月3日(土)の放送では「観」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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聴取期限 2018年11月4日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/