教育は、どうあっても国としてきちん取り組むべき問題です。ですが近年、少子化を見越して正規教員の採用数を減らして非正規の臨時採用を増やした結果、先生が足りないという事態になっています。7月4日放送のNHK「おはよう日本」(NHK総合)では、全国の小中学校で717人もの先生が不足しているとの特集があり、ネットでも話題になりました。

そんな中、7月13日のはてな匿名ダイアリーに「新卒の非正規教員(女)だよ」という投稿が寄せられました。投稿者は、在学中に受けた県の教員採用試験には不合格だったものの、臨時登用として今年4月から県立高校で非正規教員を勤めています。夏休みが近付き、無給になることなどを考えると「未来が真っ暗」と訴えました。(文:篠原みつき)

「授業が無ければ給料も出ない」ことに気づき愕然

投稿者は、週のコマ数が決まっていて「時間単価」×「勤務コマ数」で給料が支払われる「時間講師」で、部活の顧問なども行う期限付きの「常勤講師」ではありません。非正規とはいえ「生徒から反応が返ってくるこの仕事にやりがいや充実を見出している」と、仕事に意欲的です。

しかし5月下旬の試験期間中、「授業がなければ給料も出ない」という事実に愕然とします。補習も正規教員で足りる夏休み期間などは、自分の授業が無いことに気づいたのです。

幸い実家暮らしのため、すぐに困窮することはありませんが、実家から通えない場所に配属されたら、一人暮らしだったらと考えると、不安が次々に湧いてきます。

「非正規なので社会保険にも加入できず、自分で国民年金16000円を払っている」
「こんな月収(月12〜14万円)でも年額130万円を超えてしまうので、親の扶養にも入れない」

空き時間には教材の研究や試験の採点などを行いますが、その時間は無給。交通費や通勤時間もかかり、他の仕事をしようにも時間の自由は利かず、八方ふさがりです。

「これから先どれくらいこの身分の恐ろしさを痛感するのか、未来が真っ暗である」

そもそも来年度以降も勤められるかは分からない……と、戦々恐々としています。

文科省は教員の「やりがい」を推すだけで良いのか

この投稿は注目を集め、1000以上のブックマークつきました。コメントには、

「どうしてこの国はこんなにまで教育をケチるのだろうか。人をなんだと思っているのか。腸が煮えくりかえるとはこのことだ。霞でも食えというのか」

など、教育にお金をかけない国に対する怒りの声が多く上がっています。NHKの放送の中で文科省の担当者は、「待遇改善は間違いなく働き方改革の論点」としながらも、「教員という仕事の重みややりがい、魅力を発信していきたい」と話していました。他方、慶應義塾大学の教授は、教員の採用計画を長期的に再検討する必要を説いていましたが、肝心の文科省がまだ「やりがい」推しとは、残念でなりません。

OECDの2016年調査では、日本の「公的教育支出の対GDP比」は6年連続でOECD加盟国中下から2番目(最下位はブラジル)でした。大学進学率も下降しており、2012年の51.2%は、OECDの平均値である62%を大きく下回っています。

これは、尾木直樹氏の著書『取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと」(講談社+α文庫)を参照していますが、尾木氏は

「このまま日本の教育力が低下していけば、国全体が衰退してしまう危険さえあります。そうならないために、私たちはもっと声を上げなければならないように思います」

と警鐘を鳴らしています。そうした思いを抱くのは尾木氏だけではないでしょう。

投稿者は反響の大きさに追記して、「正規になってもブラックだ、と言われても、『先生になりたい』という気持ちそのものは揺るがない」と、採用試験へ意欲を燃やしています。教育は未来を作る仕事であるとして、公教育の役割の大きさを力説していました。こんなに熱意とやる気に満ちた若者の未来を、真っ暗なままにしておいていいはずがありません。