往路、復路ともに大会新。総合記録も、昨年の早大が出した現行の距離になってから初の11時間突破の記録を8分15秒も更新する10時間51分36秒。第88回箱根駅伝は、東洋大の強さが突出し、駒大の大八木弘明監督も早大の渡辺康幸監督も、ただただ脱帽するしかない結果に終わった。

 10人の選手が完璧だっただけではなく、控えの選手も含めてレベルアップされていた東洋大。それに対してレース前から誤算が続出していたのが前回優勝の早大だった。

 陸上部主将、八木勇樹(4年)の復調が遅く、1年生の時からの主力、矢澤曜(4年)もアキレス腱痛の影響で本調子とはいえない状態だった。結局、渡辺監督はエースの大迫傑(2年)を2区ではなく、ライバルに大差を付けて主導権を握った前回と同様、1区に使う作戦に出るしかなかった。

 さらに誤算は続いた。レース直前になり、前日の練習で急激に調子を落とした4区起用予定の三田裕介(4年)が、出場辞退を申し出たのだ。駅伝主将としてチームを引っ張ってきた彼にすれば、「今の状態ではチームに迷惑をかけるだけ」という判断だったのだろう。だが三田で後続との差を広げようともくろんでいた早大にとっては痛手だった。

 レースが始まっても、大迫の飛び出しは他校からキッチリとマークされていた。前回は5?14分30秒のペースで、ライバル校は1.7?地点で引き離されていった。だが今回は14分17秒の超ハイペースにもかかわらず、5?過ぎまでついていったのだ。その後は大迫と日体大の服部翔大(2年)が先行するが、駒大と東洋大は自分のペースを守り、トップの大迫からそれぞれ24秒遅れと31秒遅れの差に抑え、早大の大逃げを許さなかった。

 早大はその後も2区・平賀翔太(3年)が終盤の腹痛でタイムをロスし2位に後退、12秒差の東洋大をハイペースで追い込んだ3区・矢澤も中盤で力尽き、1分3秒離されて優勝争いから脱落した。

 一方、「誤算は3区の油布(ゆふ)郁人(2年)の調子が落ちてきていたことだけ」(大八木監督)と言う駒大も、早々と脱落していった。

 1区の撹上(かくあげ)宏光(3年)は確実に走ったが、2区に起用した1年生の村山謙太が、気負って2位集団を引っ張る走りをしてしまった。それをうまく利用した東洋大の設楽啓太(2年)に15?過ぎで突き放され、東洋大の前を行く展開を作れなかった。さらに不安のあった油布も、ふくらはぎに痛みが出て区間12位に沈み、勝負どころの話ではなくなった。

 2区で首位に立つ驚きのレースをした東洋大。その流れを作ったのは1区の宇野博之(4年)だった。1万mの持ちタイムは28分55秒32で、ユニバーシアード優勝の大迫や、28分03秒27の記録を持つ撹上から比べれば格下の選手である。ハイペースに耐えられない可能性もあった。 

 だが宇野は、1年の箱根から堅実に走っているロードの安定感を見せつけた。終盤、一時は撹上の前に出る積極的な走りで、駒沢とは7秒差の4位でつないだのだ。

 さらにライバル校を驚かせたのは2区・設楽啓太の成長だった。タイム的には前回より5秒速いだけの1時間8分4秒だったが、序盤は集団の中でジックリと力を溜め、15?過ぎの権太坂の下り始めを利用してスパートする、冷静に計算された走りを見せた。彼がトップでつないだことが、3区・山本憲二(4年)と4区・田口雅也(1年)の余裕を生み、さらには5区・柏原竜二(4年)も余裕を持って最初の5?に入れる状況にした。

 柏原は上りに入ってからギアを切り換え、「沿道から3分差、4分差だと聞こえるたびに、それなら4分差にしよう、5分差にまでしようとドンドン欲が出た」という走りで、公言通りに1時間16分台を出し、2位早大に5分07秒の大差を付けた。