中国国内でのビジネス展開に不可欠な中国人中間管理職を、中国全土に求めることができる人材支援サービスが産声をあげた。中国最大の人材会社、上海市対外服務有限公司(上海FESCO)の30万人の登録者、および、上海FESCOが提携する中国全土120の大学との人材ネットワークに、日本企業が中国人材を求めてアクセスすることが可能になった。(写真左:A−commerce 秋葉氏、右:グローバルパワー 紺谷氏)

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 中国国内でのビジネス展開に不可欠な中国人中間管理職を、中国全土に求めることができる人材支援サービスが産声をあげた。中国最大の人材会社、上海市対外服務有限公司(上海FESCO)の30万人の登録者、および、上海FESCOが提携する中国全土120の大学との人材ネットワークに、日本企業が中国人材を求めてアクセスすることが可能になった。中国ビジネスアドバイザーのA−commerceと、日本において外国籍人材就業支援事業を展開するグローバルパワーが、上海FESCOと3社提携を結んで実現した。2010年11月2日に第1回の合同説明会を東京国際フォーラムで開催し、以降は定期的に日本企業への人材斡旋を進める予定だ。

 A−commerceの秋葉良和代表は、「限られた手段であった中国人材の中途採用に、大きな窓口を空けることができた」と語る。グローバルパワーの紺谷洋樹代表は、「中国でのビジネス展開をめざす日本企業にスピーディな管理職育成を可能にする」と、今回の3社提携の効果を強調する。両者に今回の提携について聞いた。

――3社提携の狙いは?

秋葉 中国は、「世界の工場」から「世界の消費市場」へと大きな変貌を遂げつつある。5年くらい前から、中国市場の変化が始まり、中国に進出する日系企業が求める中国人材は、工場を経営する技術系の管理職から、中国市場を開拓するような営業感覚のあるホワイトカラーの管理職を求めるように変わってきていた。その人材として『中国市場での勤務経験』というキーワードは不可欠のものに変わりつつある。これまで企業が単独で中国人材を雇用しようとする場合、パターンとしては日本国内で留学生や中途採用を行うこと、現地の大学と提携をして新卒者を採用することが多かった。

 しかし、現地で優秀な中途採用を実施しようとしても企業単独ではそのような人材にアプローチできるルートが限られていた。

 また、上海には約5000の日系企業が進出しており、その大半が既に上海FESCOを利用して現地採用を実施している。しかしながら、その利用方法はそれぞれの企業が必要に応じて都度FESCOを利用という手法。FESCO側から見ても日本企業の現地法人とは連絡ルートがあるが、日本本社の人事部とのルートは限られていた。今回は我々3社がチームを組むことにより、多くの日本企業に対してアプローチができ、かつ、複数の企業が同時に参加して面接会を実施することによるスケーラビリティを持たせ、求職者に対するアピール度を高め、優秀な中国人材を数多く集めることができるというメリットも確立できる。

紺谷 実際に留学生を採用し、育成に時間をかけている企業は少なくない。しかし、急速な経済発展を遂げている中国市場で成長をめざすのであれば、スピードが重要だ。上海FESCOが持っている膨大な人材データベースを利用すれば、ビジネス・スキルや希望年収、語学力など、日系企業が求めるニーズに適った人材を多数リストアップすることが可能になる。これから、中国市場を開拓しようと考える企業でも、日本に居ながら幹部候補生の情報を確認できる。実務経験を積んだ数十万人のデータベースから、中国人材を選ぶことができるというサービスは、これまで日本になかったと思う。

秋葉 これまで日本企業の本社では、日本に暮らす中国人を主に採用してきた。たとえば、日本に10年も暮らしている中国人は、日本語も堪能で日本の文化についても理解を深めているといえるが、「現在の中国」をどこまで理解しているのか? 今、消費市場として中国に進出を考える企業が求めているのは、現在の中国を理解し、マーケティングプランを考えられるような人材だ。それは、現地で実務経験のある中国人が適任といえるのではないか。また優秀な中国人材を確保できれば、将来は中国本土のみならず、ASEAN各国など中華経済圏での活躍をも見据え展開できる。今回の人材サービスは、広くアジアでのビジネス展開をサポートすることも可能だ。

 A−commerceは、過去3年間にわたって上海FESCOと提携し、日本国内で中国ビジネス研修センターを運営、中国赴任を控えた邦人幹部や、本社にて中国ビジネス統括を担う人材にビジネス中国語や商習慣を教えるカリキュラムを展開してきた。その活動を通じ、日本企業人事部と直接お話しをさせていただく機会が増えた。企業の声を聞くにつれ、中国市場で活躍できる中国人材の確保が急務であるとの確証を得た。上海FESCOに本需要の重要性を伝え、賛同を得、更にグローバルパワー社にパートナーとして加わっていただくことにより今回のチームが出来た。

――一般に中国でビジネスを成功させるポイントは?

秋葉 中国は広い。日本の25倍に相当する国土面積があり、56民族がいる。たとえば、北京、上海、大連、重慶、広州など、中国の都市に違いはないのだが、それぞれの地域には、それぞれの地域を良く知る地元出身者やその地で勤務を経験したことのある人材が必要だ。考え方や嗜好が異なるため画一的なアプローチではビジネスは成功しない。

 また、中国人はキャリアアップのために転職を繰り返す傾向がある。日本企業が失敗するケースで多いのは、採用当初の処遇について丁寧に説明するものの、その後のキャリアアップのプランなど、就労後の処遇など将来の展望に説明が不足していること。将来の安定が見込まれるのであれば、簡単に転職するようなことはない。

 これまで中国で事業を展開する日系企業や欧米企業を数多く見てきたが、成功している企業に共通していることは、中国の現地法人に信頼できる中間管理職を擁していること。日本人総経理は現地労働者の不満をくみ上げることが難しいし、日本本社の方針が現地事情から乖離している場合でも、その指示に従わざるを得ないことも多々ある。その場合、ビジネスセンスが高く、かつ現地の事情に詳しい中間管理職を擁すれば、日本の本社からの指令も念頭に置きながら、現場の意見を汲み上げ、最適の折衷案を立案でき、企業内の作業もスムーズに行われる。本社と現地の間で円滑な意思疎通を図り、現地でのビジネスをスムーズに運営していく上で、優れた中間管理職が必要になる。もちろん日本人でも中国人でも問わないが、長期的にみると中国人の現地責任者や中間管理職が必要。

――今回の提携による具体的なサービスメニューは?

紺谷 中国市場の開拓を考える多くの企業の人事担当者の方々と、中国人材の採用候補者が一同に会する合同面接会を定期的に開催していく計画。四半期ごとに開催するところからはじめ、毎月開催をめざしたい。

 あらかじめ、各企業の採用ニーズをヒアリングして、ニーズに合致した候補者リストを提供。資料をもとにある程度絞り込んだ候補者と、現地に赴き実際に面談して採用の可否を判断していただく。幹部候補生として迎えいれるからには、直接、面談を行って判断したいという企業の要望に応える。数年の実績を積んだ後は、オンラインのテレビ電話等を使った面接なども視野に入れる。

 第1回の合同説明会は、11月2日(火)に東京国際フォーラムで開催予定。12月12日(日)に、上海で第1回目の合同面接会を予定している。上海FESCOに登録している人材は、履歴が確かであるという安心がある。また、採用が決定した後には、必要に応じて、入国手続き、入社前研修、入社後のフォローなど、各種の人事サポートを提供できる。たとえば、日本での研修期間中に仕事以外の悩み相談に応じる中国語ホットラインなども用意している。

――中国人材中途採用支援サービスの将来展望は?

秋葉 既に中国に進出している日系企業は1万社を優に超える状況。これから、中国を開拓しようと考える企業に加え、既存の進出企業にも即戦力の優秀な人材を獲得したいというニーズは強く、このニーズにも応えていきたい。上海FESCOは、中国全土に拠点展開し、あらゆる地域に対応できる強みがある。中国を中心としたFTA網が広がる中、日本企業が成功するために中国、東南アジアに広がる中華経済圏において広く活躍する人材を提供したい。

紺谷 初年度には100社程度、3年後には500社との取引をめざす。中国人材への日系企業のニーズは強く、上海FESCOには、それに応える豊富な人材データベースがある。(編集担当:風間浩)



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