Web 3.0はセマンティック+モバイル
人間を助けてくれる人工知能という夢は、「宇宙家族ジェットソン」のロボットお手伝いさん『ロージー』から、オンライン執事Jeeves[Ask.comのキャラクター、元々は小説に登場する有能な執事]までいろいろあるが、計算機科学者のTom Gruber氏は、携帯電話でそれを実現しようとしている。
Gruber氏は、『Web 3.0』カンファレンス最終日の1月27日(米国時間)、セマンティック化されたインターネット――利用者の状況を理解して積極的に補助を行なうインターネット――を実現する自然な媒体はモバイル機器だと主張した。この会議は、mediabistro.comの主催で、ホテルHyatt Regency Santa Claraにおいて開催されたものだ。
Gruber氏の見方によると、すべての部品はそろっているも同然だ。音声での要求を理解し、文脈に従ってフィルタリングを行ない、関連するデータをネットで探し、分かりやすい形に構成して提示するサービスは、構築に取りかかれる状態にある。
具体的には、クラウドコンピューティングの性能が上がっている。モバイル回線の容量が拡大している。スマートフォンの普及が進んでいる。そして、APIを備えた公開データベースが急増しており、サードパーティーの開発者は、材料を集めて調理することができる。
さらに言うと、Gruber氏の新しい会社、米Siri社がサービスの提供に成功すれば、これは実現する。同社の『Siri』は、モバイル機器を「あなたの個人秘書」にしてしまおうという無料のサービスだ。
たとえば、『アバター』をIMAXで上映している近所の映画館と、数ブロック以内で午後7時から席が空いているおしゃれなイタリアンレストランを探すようにSiriに頼むと、チケットの購入とレストランの予約を手伝ってくれる。利用者の言葉を解釈して商用サービスとして認識し、上映スケジュールやレストランのデータベース、マッピングサービスなどを活用し、動的に組み合わせて質問に答えてくれるのだ。
Gruber氏によれば、Siriに「酔っ払った。家へ連れてってくれ」と言えば、タクシーを呼んでくれるだろうという。そして、Siriはユーザーの世界について次第に学んでいくので、「オフィスの近くにあるバーを探せ」と言うと、それを検索できるという。[文末の動画では、「今度の木曜日7時に予約できるサンフランシスコの高級フレンチレストラン」を探すといったことが可能だとされている]
位置情報を利用するモバイル検索サービスはSiriだけではない。また、セマンティック的な機能を実装しているところはSiri以外にもある。Gruber氏は、近い企てとして『Yelp』『Shazam』『Wolfram Alpha』(日本語版記事)、そして検索大手の『Google』と『Bing』を挙げた。とりわけ、画像から、被写体に関する情報を収集する『Google Goggles』に、同氏は惚れ込んでいる。
[Google Gogglesは、名刺や書籍、絵画作品、場所や名所、ワイン、ロゴなどを撮影、あるいはそれに携帯カメラをかざすと、それに関する情報を検索して表示するサービス。以下の動画参照]
もちろん、Siriはまだ完全とはいえない。特に音声言語を認識するのは難しい。Gruber氏は、Siriに「妻に、遅くなると伝えてくれ」(Tell my wife I’ll be late)と言ったところ、Siriは「妻に排卵しろと言え」(Tell my wife ovulate)と解釈した、と楽しそうに語った。
しかし、モバイル・コミュニケーションとオープンなデータベースへと向かう傾向は明白なものだ。情報産業は、不本意ながらもそのデータを無料にして、より大きなバリューチェーンの中において売り上げを得られるのではないかという期待に望みをかけている。こうしたバリューチェーンを実際に構築できるサービスが生まれれば、それはウェブを、「Web 3.0」と呼ばれるかもしれない新しい時代へと導くチャンスを手にするだろう。
