夫と会社からWマタハラ。38歳臨月妊婦が夫の浮気を知って気づいた「離婚したくなかった本当の理由」

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「産休を取得しようとして、会社や周囲から理不尽な攻撃に遭い、心の病になる人も少なくありません。人生の喜ばしい変化に、理不尽な社会的ストレスが重なると、心は大きなダメージを受けます」こう語るのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん。彼女は、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。

山村さん連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにしていったのかも含め、さまざまな事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮をしながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介していく。

今回山村さんのところに相談に来たのは、臨月の妊婦である38歳の涼子さん(仮名)だ。結婚3年、15歳年上の夫は大手鉄鋼関連会社勤務のエリート。その夫が、浮気していると連絡をしてきた。涼子さんは妊娠時、17年勤務していた会社から退職を勧告されていた。

避妊をしていなかったのに「え、まじ」

マッチングアプリで夫と知り合った涼子さんは、2年の交際を経て結婚。夫は大手企業に勤務しており、23区内にマンションを所有。金銭的にも余裕があります。涼子さんは結婚してから「給料が満額お小遣い」という生活を送っていました。

夫には離婚歴があり、元妻との間の20歳になる子供もいるので、子供は積極的に望んでいませんでしたがお互いに「自然に任せよう」と特に避妊はしていませんでした。とはいえ、夫は本心では「お互い年齢的にも授かるのは難しいだろう」と思っていたのです。それに気づかなかった涼子さんは、夫に妊娠を報告すると「え、まじ。高齢なのにできるの? 子供が成人すると俺73歳じゃん」といい頭を抱えてしまう。

このことにショックを受けつつ、17年も勤務した専門商社に報告すると「うちはギリギリで回しているから、産休を取るなら一度辞め、パートで復職して」と言われてしまいます。これに大きく傷つき、2ヵ月前に退職します。

夫に言うと「なんで辞めたんだ」と激怒。夫はかつての結婚で、専業主婦だった妻に行動を詮索されたことで離婚しており、同じ轍を踏まないようにしたかったことを知ります。

その後、夫から距離を置かれるようになり、不安になった涼子さんは夫のバッグの中のED改善薬を確認。すると、それは金曜日と土曜日にかけて減っていることがわかりました。これに浮気を確信し、私たちに調査を依頼。ただ、涼子さんは「消えたい」と思うほど心を病んでいる。証拠をどう取り扱うか配慮をする必要がある調査だと感じました。

金曜日の夜にED治療薬を2錠

涼子さんから事前資料として、ここ1カ月分の夫のバッグの中にあった薬の数と帰宅時間をいただきました。これをみると、夫は金曜日の夜に2個使っていることがわかります。土曜日は夜に帰ってくることが多く、日曜日の1日は、家でのんびり過ごしているのだとか。

ひとまず、金曜日の朝、自宅マンション前から張り込みを開始。涼子さんは「夫は鍛えており、背が高いので見た目は若いです」と言っていた通り、ジャケット姿の夫は40代前半くらいに見えます。

普通の人の2倍の速度でスタスタと歩いて駅に向かい、都心のオフィスビルに9時に出勤。15時まで動きはありませんでした。会社から出てきた夫は、小走りで駅に向かい、自宅方向に向かう電車に乗ります。慌てているような姿を見てペアの探偵が「これは車移動になる」と確信し、レンタカーを手配しに行きました。

ペアの探偵は、カウンセリングシートの「夫は車が好きなので、駐車場が手配しやすい23区郊外のマンションに住んでいる」という記載を覚えていたのです。車が好きな人の多くはデートで車を使います。

自宅がある駅に着いた夫は、駅のベンチでパソコンを開き、15分ほど何かの作業をしていました。それからスマホを見て、ニヤニヤ笑っています。これはデートになる可能性が高い。

高級ヴィラ施設にチェックイン

夫はマンションに戻り、平置きの駐車場へ。夫の自慢のドイツ車に乗ると、車内でジャケットを脱ぎデニムとTシャツ姿に。お腹が出ていないので、とてもよく似合います。私はペアの探偵が手配した車に乗り、夫への尾行をスタート。

夫の勤務先からやや離れた地下鉄の駅に移動し、16時30分に髪が長く、ベージュ色のワンピースを着た30代半ばと思しき女性を拾うと、アクアラインで千葉方面に向かいます。そして、18時に高級ヴィラ施設にチェックイン。夫と女性は頻繁にここに来ているようで、出迎えたスタッフともフレンドリーな雰囲気です。ただ、スタッフから見えないように、夫は女性の尻や胸をさりげなく触っていました。

翌日土曜日は、10時にチェックアウトしてから、近くのアウトレットに行き買い物を満喫。女性はピンクのTシャツに白のフレアスカートという愛らしい服装です。夫は女性が好きでたまらないらしく、体を抱き寄せてキスをしていました。ここで、服やバッグなど10万円ほどプレゼント。

女性は天真爛漫で一切の遠慮をせず「これ欲しかったの、ありがとう」と言っています。仕事で多くの女性を見てきましたが、こういう堂々としている女性は男性を惹きつける。夫も相当夢中になっているのではないかと感じました。

14時くらいに施設内のハンバーガー店で食事をして、慌てるように都心方面へ。渋滞を回避したのでしょう。そのまま別れるかと思ったら、横浜方面へドライブ。赤レンガ倉庫や山手を流し、おもむろにラブホテルに入って行きました。ここは私たちも何度も調査に入ったことがある施設で、構造をよく知っています。

車から降りた夫と女性の容姿を見ていると、女性の方が積極的。私たちが近くにいるのに気にも留めず、甘い声で夫に性交渉をねだるような発言を繰り返していました。夫は女性の体を触りつつ、最も高い部屋を選び、エレベーターへ。私たちは隣の部屋を確保し、性交渉の様子の録音に成功。

パパ活女子かと思ったら…

1時間半ほどで出てくると、中華街に移動し、中国粥のお店へ。女性は夫に遠慮せず、ビールを注文。夫はノンアルコールビールです。夫との会話を聞いていると、かなり専門的な仕事の話をしている。私たちはそれまで女性をパパ活女子だと思っていましたが、会話の内容から察するに、女性は元部下。夫が勤務する大手鉄鋼関連会社から、コンサル系の会社に転職したキャリア女性であることがわかりました。

夫は女性の話を感心したように聞いており、とても楽しそう。それから中華街を散策し都内へ。わざわざ遠回りしてレインボーブリッジを渡り、都心方面へ。ピックアップした都心の駅に近い、新しい賃貸マンションまで女性を送り、名残を惜しむかのようにディープキスして、別れていました。

涼子さんに「証拠が取れました」と報告すると「覚悟は決めていたので大丈夫です」と返事が。報告は涼子さんの体調に配慮し、マンションまでお届けすることにしました。ミーティングルームで向き合っていると、調査時とは別人のように晴れやかな顔をしています。

「あれから臨床心理士のカウンセリングに行ったら、悩みの本質を言語化できて、かなりスッキリしたんです。私、元々ポジティブな性格なことを忘れていました。夫に浮気をされるというショックで、周りが見えなくなっていたのです」

離婚したくなかった「本当の理由」

すでに弁護士にも相談しており、離婚になった場合、絶対に損をしないように足場固めを行なっているとも言っていました。たった1週間でここまで人は変わるのだろうかと思いつつ、慎重に報告を行います。

証拠を見ると「相手は、この女性でしたか。この人、私たちの結婚式にも来ている、夫の部下だった人です」と驚いていました。この女性は、かなり奔放で社内恋愛も繰り返していましたが、仕事がとてもできるそう。新卒で夫の会社に入りましたが、今は外資系の不動産コンサルタント会社にいるとのこと。

「山村さんに相談してから、あそこまで悩んだ原因を考えたのです。夫と会社に突き放されたショックで病んだのですが、その根本を考えると、“お金の執着”だと分かったのです。収入がなくなる不安、離婚されて行き場がなくなる不安。この2つについて、自分なりに対策を打てば、怖いものは何もないのだと。

愛の裏切りについては、そもそも、夫を愛していたどうかも微妙で、今思えば、結婚すれば、安定するだろうという打算が強かったんです。イケオジだって加齢臭はするので、初めてハグした時に“ウッ”と来たことを思い出します。今では、夫はいつまでも性に執着しているエロオヤジってことに気づいて、ちょっと引く。薬を使ってまで定期的に性交渉を持ちたがるって、キモいなと」

元の会社の社長と夫の「姿勢」

証拠は導入だけ見ることにして、あとは弁護士に渡すそうです。経済的な不安については、涼子さんは、退職した会社に連絡し、業務委託として仕事を受ける体制を整えていました。「よく考えると、育児しながら通勤は無理。在宅の仕事がベストだってことです。このことに気付けたことも良かった」と言っています。

また、社長に連絡をしたところ、とても喜んでいたことが涼子さんの気持ちを救ったそうです。社長は本来違法なことをお願いしていたと認識しており、申し訳ない気持ちをもっていたのです。そして「ひどいことを言ったのに、戻ることを考えてくれたのは嬉しい。ただ、いま会社に余裕がないので申し訳ないが、いずれ正社員に戻れるように考える」とも言われたとのことでした。

また関係が良くない母と再婚相手にも連絡し、「もし離婚したら、そっちに住んでもいい?」と聞いたところ、母は「いつでもおいで! 待ってるよ」と温かい声をかけてくれたのだそう。

その後、夫に離婚を切り出すと「それだけはやめてほしい。もう一人にはなりたくない」と夫が折れました。涼子さんの意思は固いのですが、話し合いは平行線を辿り、夫への同情も芽生え、しばらく同居をすることになったそうです。

「私が妊娠したとき、否定したことに対して、かなり厳しく言い詰めると『俺、そんなこと言った?』と言うのです。夫は自分の都合のいいように現実を解釈する人だってよくわかりました」

涼子さんは「ひとまず、夫には思う存分家事もやってもらいます。出産に全集中して、後で考えます」と明るい声で話していました。

今回の調査料金は38万円(経費別)です。

【前編】妊娠した正社員が「産休は出せない」と退社勧告。38歳の妊婦が夫の浮気相談をするまでのいばらの道