【経済×地質学】富士山が育む「わさび・ニジマス・紙」。日本最高峰が生み出す莫大な産業価値【眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話】

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わさび、養鱒、紙…… 富士山の湧水に支えられる地元の産業

富士の水が育んだ地場産業

 富士山の周辺地域では、古くから湧水が人々の暮らしだけでなく、さまざまな産業を支えてきました。

 その代表的な例のひとつが、わさびの栽培です。わさびは一年を通して、冷たく清潔な水を必要とする作物で、水温や水質がわずかに変化しただけでも育ちにくくなります。そのため、人工的な管理だけで安定した生産を行うのは容易ではありません。水温がほぼ一定で、不純物の少ない富士山周辺の湧水は、わさび栽培に理想的な環境を提供してきました。

 同様に、養鱒業も湧水の恩恵を大きく受けています。ニジマスをはじめとするマス類は、水温が安定し、酸素を多く含む水でなければ健康に育ちません。富士山の湧水は清らかで水量が豊富なため、養殖池に常に新しい水を供給することができます。その結果、病気の発生を抑え、健康な魚を育てることが可能になりました。

 さらには、紙づくりも湧水に支えられてきた産業のひとつです。紙の製造には大量の水が必要で、特に繊維を洗い、均一に広げる工程では、水質によって仕上がりが大きく変わります。富士山の湧水は不純物が少なく、繊維を傷めにくいため、紙づくりに非常に適していました。そのため、富士山周辺では製紙業が発達し、水とともに地域の産業が形づくられてきたのです。

富士山の湧水が支える産業の例

富士山の湧水は、安定した水温と清らかな水質を生かし、数多くの地元産業を支えてきました。

わさび栽培

一定の温度かつ不純物の少ない水を必要とするため、湧水が適している。

ニジマスなどの養鱒業

富士山の湧水は養殖池に常に新しい水を供給し、魚が健康に育ちやすい。

紙の製造

不純物の少ない富士山の水は、紙の繊維を傷めにくい。

富士山の伏流水を利用した地酒

伏流水は地酒にも活用されています。清らかで水質が安定した富士山の伏流水は、酵母のおだやかな働きを支え、まろやかで雑味の少ない味わいを生み出しています。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話』監修:富士学会

【監修者情報】
富士学会
富士山と、その関連地域を対象として、自然科学から芸術、歴史、宗教の人文科学までを広く網羅し、富士山にちなんだ教育や、噴火を想定した防災など、総合的な領域の研究を進めている。富士山の本質と全体像の探求、関連地域の環境保全、防災、活性化などを目的として、学術大会・討論会・講習会などの開催、会誌・図書などの出版、関連教育・文化活動への協力と支援などをおこなっている。事務局は東京の日本大学文理学部地理学教室に置かれている。