10年で売上10倍近く、出店速度は業界断トツ1位…全国のスーパーが恐れる”異端児”ロピア「強さの正体」

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ロピアの店内に一歩足を踏み入れると、まるでスポットライトを浴びたかのような熱気に圧倒される。買い物客たちは、売り場の「さあ買ってください!」という剥き出しのアピールを受け、商品にくぎ付けになる。店内が丸ごと、活気のある市場のようだ。

いま日本中の地方都市で、ある異変が起きている。筆者の住む山梨県、JR甲府駅前もその一つだ。かつて駅前の顔だったデパートが姿を消し、その跡地にキーテナントとしてロピアがオープンした。その売り場を歩いた時に感じたのは、スーパー業界が失いつつある「商売の勢い」そのものだった。

10年で売上は10倍近く「異常な成長曲線」

ロピアは神奈川県藤沢市で「肉の宝屋」として創業。精肉店をルーツとしている。現在は食品スーパーマーケットの運営と製造販売を中心に事業を展開している。

ロピアの快進撃はまさに驚異的だ。数字を見れば、その異常さは一目瞭然である。2014年に約570億円だった売上高は、2025年2月期には5213億円と約10倍近くまで跳ね上がった。収益力も際立っている。1店舗あたりの年間売上高は40億円程度と一般的なスーパーの2倍強で、食品スーパーとしては国内トップ級だ。繁盛店では年間80億円に達するとの報道もある。

出店速度も業界内で群を抜く。2025年版のスーパーマーケット店舗数ランキングでは、前年比増加率25.6%増(21店舗増)で断トツの1位。2013年時点で26店舗だったものが、2026年5月時点では156店にまで急増した。

地盤の関東を飛び出し、"飛び地"となる関西に進出したのが2020年9月のこと。2022年には中部エリア初の「モレラ岐阜店」(岐阜県本巣市)、2023年には九州エリア初の「博多ヨドバシ店」(福岡県福岡市)と東北エリア初の「仙台ヨドバシ店」(宮城県仙台市)を相次いで出店。24年には初の海外店舗となる「ららぽーと台中店」(台湾)もオープンした。2026年1月時点でその店舗網は22都道府県をカバーするまでに拡大している。

「日本版コストコ」が狙う、消費者の食の欲望

ロピアが顧客ターゲットに定めるのは、30〜40代の夫婦に子ども2人の4人家族だ。売り場面積600坪ほどの大規模店舗が主力で、駐車場を備えて広域から集客する。粗利率は業界平均の26%より低いとされるが、商品を大量販売することで経費を回収し、利益を確保する収益モデルだ。

昨今のスーパー業界では、AIによる徹底した効率化を追求する「トライアル」や、標準化されたドミナント戦略で都市の隙間を埋める「まいばすけっと」が話題を集めている。しかしロピアは、その真逆を行く。地方のスーパーが「高齢化への対応」を金科玉条のように掲げて少量パックや薄味の惣菜に走る中、ロピアは消費者の食の欲望をストレートに狙ってくるのだ。

育ち盛りの子どもがいるファミリーや若い世代が、カゴいっぱいに肉を詰め込み、巨大なピザをカートに乗せ、売り場を回っている。「1キロ近い精肉のパック詰め」など大容量品が並ぶ売り場は、旨いものをどっさり低価格で手に入れたいという欲望をストレートに叶えてくれる。

もちろん、すべての消費者がロピアを支持しているわけではない。急成長の傍らで、「アンチ・ロピア派」とでも呼ぶべき、あえて距離を置く人々が存在するのも事実だ。「日本版コストコ」と呼ばれるだけあって、単身者には商品のボリュームが大きすぎる。雑貨類の品揃えがないこと、アプリ利用のプリペイド払いを不便と感じる客も少なくない。「期待値が高すぎて、思ったほど安くない」という声もある。しかしロピアは、その不便さえも安さを実現するための正当な「コスト」として、客側に納得させてしまう。

店内を彩る派手な手書きPOPや、天井を走る模型の汽車。商品を箱のまま積み上げた圧倒的なボリューム陳列。ロピアはエンタメ感のある売り場演出で、買い物を単なる家事という作業から、非日常の体験へと変えてしまった。筆者が今も現役のスーパー社長であったなら、自店のそばにロピアが出店すると知ったその夜は、一睡もできなかっただろう。

「100%売場主導」業界の常識を覆す仕組み

ロピアの強さの源泉は、「100%売場主導」という方針にある。一般的なスーパーマーケットは、本部にマーチャンダイザー(MD)という企画部署を置き、そこで商品を企画して店舗で販売する手法をとる。ところが、ロピアにはその本部MDと企画開発部署が存在しない。

精肉や鮮魚など各部門のチーフが裁量権を持ち、商品の仕入れから販売方法の決定、値付けや商品開発、そしてスタッフの採用までを一手に担う。現場のチーフが「商店主」として売り場に誇りとこだわりを持って臨むこの構造が、独特の熱量を生み出しているのだ。

積極的なM&Aで急拡大

ロピアを展開するOICグループ(川崎市)は、積極的なM&Aで商品競争力をさらに高めてきた。食品メーカーや卸事業者などこれまで20社近くを買収し、商品の企画から生産、販売までをグループ内で一気通貫で手掛ける。調達コストを抑えながら、顧客ニーズを商品に直接反映できる体制だ。

なお、「業務スーパー」を展開する神戸物産も同様の手法をとっているが、OICグループの店舗の大半が直営であるのに対して、神戸物産はFC店向けの商品調達・生産を収益源とする。川上から川下まで直営で売り切るOICグループの優位性は、ここにある。

OICは2016年に惣菜製造の利恵産業を傘下に加えると、2019年には外食事業会社eatopiaを設立し、高級焼肉店「銀座山科」をオープン。2021年には鶏肉加工や酪農事業者もグループに迎え入れた。2022年にはスーパーバリューと資本業務提携し、2023年には野菜など青果に強いアキダイ(東京・練馬)も傘下に収めた。さらに2024年にはイトーヨーカドー旧店舗の承継を発表するなど、国内外への版図拡大は加速する一方だ。

1971年に神奈川県藤沢市で「肉の宝屋」として産声を上げた街の精肉店が、今や日本を代表するロープライス・ユートピア「ロピア」へと変貌を遂げ、全国の食卓へ「食のわくわく感」を届けようとしている。

だが、この猛烈な成長速度が現場に歪みを生んでいることも事実だ。後編では、公正取引委員会による調査やガバナンス問題、そして元「西友」社長を新代表に迎えた組織改革と、ロピアが目指す「売上2兆円」への展望を追う。

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【つづきを読む】『スーパー「ロピア」社長のカトパン夫、突然退任していた…「売上2兆円」を目指す急成長スーパーに潜む影』

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