《護送車で“指ハート”》元極道の妻が語る「山口組より厄介」トクリュウの“見えない怖さ” 、元ヤクザも「これはないわー」と苦笑
広域系三次団体組長だったオットが獄死。著書『極姐2.0:ダンナの真珠は痛いだけ』(徳間書店)を持つ、本名・出身地もろもろ非公開の元極道の妻がリアルな暴力団の世界を語る。
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「古きよき昭和のヤクザ」はもはやファンタジーだと以前から申し上げてきましたが、それでもパクられ(逮捕され)て護送されている時に大ハシャギするヤクザはいません。
今年の4月に強盗予備容疑で逮捕された20歳の男の子は、護送車の中で変顔をしたり、指でハートを作ったり、拳銃を撃つジェスチャーをしたりと、謎のハイテンションで、SNSで「あまりにバカそうすぎる」などと指摘されてましたね。
強がっているのか、怖くてハイになってるのかわかりませんが、20歳とはいえ「まだ子ども」という印象しかありませんでした。これはトクリュウではなく、ヤクザあるあるですが、育った環境も影響しているせいか、精神年齢や知的年齢が低いと思われる人が目立ちます。善悪の違いも判断できないので、悪いほうに行ってしまうんですね。
中国残留孤児の子ども世代らをルーツに持つ半グレ集団「怒羅権」のメンバーは、女性を鉄アレイでメッタ打ちにして殺害した容疑で逮捕されましたが、集まった報道陣に対して「もういいだろ、なあ? 帰れ」と言っているところが話題になりましたね。
こういうトクリュウや半グレの態度はオットの元・兄弟分たちに大ウケで、「これはないわー(=ヤクザはこういう態度はありえない)」「ちょうどキマってたのかも」「強がってるだけ」とか、「意外にメディア好きでうれしいのかも」「寂しい子ども時代を過ごすと承認欲求が強くなる」などと言いたい放題でした。
でも、笑って済ませていいものなのか。
警察庁が発表している統計「組織犯罪の情勢」。「令和5年版」までは第一章が「暴力団」でしたが、「令和6年版」からは「トクリュウ」になっています。
そもそも統計のタイトルも「暴力団情勢」だったところから、平成25年からは「組織犯罪の情勢」に変わっています。これらは単なる名称変更ではなく、「ヤクザが"唯一の敵"だった時代の終わり」を象徴しているように思えます。
暴力団排除で"悪が消えた"わけではない
思えば、2023年の年明け頃は「ソタイ(組織犯罪対策課)がなくなって、オレオレ詐欺犯の対策室ができるらしい」と噂になり、オットの元・兄弟分とかと「部署の名前を変えたら新しく予算がもらえるもんね」と半笑いしてたものでしたが、それから3年がたちヤクザの影が本当に薄くなっていることを感じます。
「『暴力団』を排除しても、次に出てくるのは『より悪いもの』でしかない」
2022年に亡くなった作家の宮崎学さんは以前からおっしゃってましたが、そのとおりになっています。
いいか悪いかは別として、ヤクザは組織で動きますから、警察も把握しやすかったんですよ。でも、トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)はその名のとおり実名もわからない人たちが、組織に入らず流動的に動くので把握は難しいのです。
まあ、ヤクザだって任俠道をきちんと歩んでいる人は少数派で、昔から強盗や詐欺に絡んで人も殺してきましたから、美化するつもりはないです。ただ、暴力団排除で"悪が消えた"わけではなく、より見えにくく、制御不能なものへ変わっていった面はあるのでしょう。
山口組の幹部がトクリュウと「持ちつ持たれつ」の関係
一方でヤクザはトクリュウも利用します。主要組織のトップは「使用者責任」を問われるのを恐れて火消しに必死ですが、山口組の幹部がトクリュウと「持ちつ持たれつ」の関係であるような事件も報道されています。
昨年の6月、山口組直参・一心会を率いる能塚恵組長が暴力行為処罰法違反容疑で逮捕されています。組長は組員やトクリュウのメンバーとともに、大阪ミナミの路上で客引きをしていた男性に因縁をつけて、「お前ら、こいつ殺したれ」とか脅したそうです。
一心会も名門なんですから、別にトクリュウを使わなくてもいい気がしますし、そもそも山口組はじめ主要組織は闇バイトやトクリュウと関わらないよう指針を出しています。でも実際には、トクリュウから用心棒代を「上納」されることで、持ちつ持たれつの間柄を保つ例もあるのです。トクリュウ側も、いざという時のためにヤクザと関係を持っておきたいというわけです。
一心会の事件からしばらくして、山口組の主要団体・弘道会系の事務所もトクリュウに関連して家宅捜索を受けています。愛知県を拠点とするトクリュウ「ブラックアウト」のメンバーら14人が凶器準備集合容疑などで逮捕された一件を受けてのことと報じられました。
オットの元兄弟分たちはトクリュウの言動を笑っていますが、ヤクザが弱体化した先に現れたものは、警察にとっても、社会にとっても、もっと厄介なのかもしれません。
【プロフィール】 待田芳子(まちだ・よしこ)/本名・出身地もろもろ非公開の元極道の妻。広域系三次団体組長だったオットが獄死。その後は普通のオバサンとして生きようと思ったのに、暴力団排除がひどすぎで声を上げずにいられなくなり、いろいろ発信している。著書に『極姐2.0』(徳間書店・2018年)がある。

