※写真は日本年金機構Webサイトより引用

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毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」は、きちんと確認していますか? 「国からのハガキ(封書)なのだから、記載内容に誤りはないだろう」と思うかもしれません。しかし、実は誤りが発覚するケースも少なくないのです。この誤りを見逃したまま放置してしまうと、将来受け取る年金額が少なくなってしまう可能性も……。45歳男性の事例をもとに「年金加入記録回答票」の確認ポイントを見ていきましょう。

「ねんきん定期便」に違和感をおぼえた45歳男性

アキラさん(仮名・45歳)は、印刷会社に勤める会社員です。独身で一人暮らしをしており、年収は約800万円。アキラさんは18歳で社会に出てから、建設業界や溶接などの現場仕事を中心に職を転々としてきました。

そんなアキラさんのもとに、45歳の節目として封書形式の「ねんきん定期便」が届きます。いつものハガキはろくに確認もせず適当に放り投げていたものの、封書となるとさすがに気になり、とりあえず開封してみることに。

すると、年金受給見込額の欄には「104万4,000円」と記載されています。月額に直すと、8万7,000円ほどです。

「まぁ、こんなもんか」

年金制度に詳しいわけでもないため、深く考えることなくその数字を受け止めたアキラさん。しかし、同封書類のなかに、見慣れない1枚の用紙があることに気づきました。

「年金加入記録回答票? なんだこれ」

年金加入記録回答票とは、過去の加入履歴を確認するための書類です。内容に目を通したアキラさんは、違和感をおぼえました。数年にわたって、年金の加入履歴が空白になっている期間があるのです。

「この期間も会社で働いてたはずだが……給料から年金も引かれていた気がするし」

これまで気にしたこともなかった年金記録に、初めて疑問を持った瞬間でした。

数年分の「記載漏れ」が発覚

空白期間が気になったアキラさんは「念のため」と、同封されていた年金加入記録回答票に記入することにしました。これまでの勤務先や、覚えている限りの情報を見よう見まねで書き込み、郵送で返送します。

それから数ヵ月が経ったある日のこと。仕事から帰宅すると、ポストに日本年金機構からの封書が届いていました。なかを確認すると、年金漏れに関する通知書が入っています。そこには、次のように書かれていました。

「過去に勤務していたある事業所の加入記録が、当該期間について確認できませんでした」

その後、訂正手続きが進み、これまで月8万7,000円だった年金受給見込額は月1万3,000円増え、10万円に。

アキラさんは年金が増えたことに安堵しながらも、同時にある考えが頭をよぎりました。

アキラさんの頭をよぎった“ごもっとも”な疑念

「これ、俺が間違いを見つけて申請しなかったらどうなっていたんだ……?」

アキラさんはこの件以降、「日本年金機構から届くハガキや書類はどこか間違っているかもしれないと疑ってかかろう」と、固く心に誓ったそうです。

発覚から約20年も…いまだ尾を引く「消えた年金問題」

みなさんは「消えた年金問題」を覚えているでしょうか。

これは過去の年金記録の管理方法に起因して発生した社会問題で、本来あるはずの年金記録が大量に照合できないまま放置されていたというものです。

発覚から約20年経ったいまも完全に解決したわけではなく、基礎年金番号への一本化後も、事務処理の誤りなどによる記録漏れが発生しています。

実際、日本年金機構の公表資料によると、2024年4月から2025年3月までの1年間で、1,126件の事務処理誤り等が確認されているようです。また、そのうち1人あたりの影響額が10万円以上となる案件は272件にのぼります。

[図表]事務処理誤りの影響額別内訳 出典:日本年金機構「事務処理誤り等(令和6年4月分〜令和7年3月分)の年次公表について」

年金の記載漏れが発生する主な原因は、以下のとおりです。

・勤め先の会社が年金保険料を納付していなかった

・転職が多い

・結婚などで名前が変わった

記録漏れは決して珍しいケースではなく、誰にでも起こり得る問題といえます。

そのため、ねんきん定期便が届いた際には、内容をしっかり確認することが重要です。特に封書版には年金加入記録回答票が同封されていることから、加入履歴に空白期間が見つかった場合は、一度年金事務所などに相談してみるとよいでしょう。

年金は自分で守る…小さな違和感が大きな差に

年金制度は年々整備が進み、現在は国が一元的に管理しています。しかし、それでも毎年、一定数の事務処理誤りが発生しているのが実情です。

どれだけ仕組みが整っていても、最終的に処理を行うのは人であり、ミスが完全になくなることはないでしょう。

だからこそ、ねんきん定期便が届いた際は“ただ受け取るだけ”で終わらせず、加入履歴や記載内容を一つひとつ確認することが大切です。


辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP