ミスコンから「大阪IRのディーラー」へ 韓国カジノで腕を磨く博多美人の挑戦
2030年、日本初のIRが大阪・夢洲に誕生する。
その「花形」ともいうべきカジノディーラーを夢見て現在、韓国・仁川の「パラダイスシティ」で奮闘しているのが福岡出身の牧尾理央さんだ。
進化するアジアのマーケットに魅力を感じ、単身韓国へ飛んだ牧尾さんは元ミスコン日本代表ファイナリストという華やかな経歴の持ち主。その異国での挑戦を聞いてみた。 (内外タイムス・山本智行)
挫折の先に見えた成長とプレッシャー
大阪IR開業まで、あと4年。牧尾さんは、その日に備え、この4月から韓国初の統合型リゾート「パラダイスシティ」のカジノフロアで武者修行中だ。ビザの関係で今回も滞在期間は3カ月。少しでも時間をムダにしないようにディーラー技術を磨いている。
「インターンとして働くのは今回が2回目です。1回目は不安と焦りもあって無我夢中でした。それに比べると今回は周りを見る余裕が少しありますが、そうであるがゆえに大変な部分がある。普通にやって当たり前。うまくやらないといけないとプレッシャーを感じます」
現場に慣れてきたからこそ見える景色と、仕事への強い責任感。その狭間で揺れながらも、彼女は着実に前へ進んでいる。凜(りん)とした制服姿はすっかりディーラーのそれ。胸元には日本の国旗、日の丸のバッジがキラリと輝く。それは日本語を話せるという証しだが、どこか誇らしげにも見える。
「これからの私にとってカジノディーラーがどんな形になっていくのか私自身、楽しみにしています。韓国に来て、実際のカジノに触れ、いまは本物になるため、経験値を上げていっているところです。この経験はどんな形になろうとも次に生きるはずです」
牧尾さんが先を見据えるIRはカジノを含む統合型リゾートと言われ、カジノの他に高級ホテル、国際会議場、劇場(MICE)などを備えた巨大複合施設。先進国でIRがないのは日本だけだ。
もともと日本では1999年の「お台場カジノ構想」に始まり、誘致活動と反対運動の間で揺れてきた。ひとまず場所「大阪」、事業者「MGM+オリックス」が2021年9月に選定され、当初は早ければ25年大阪・関西万博前にも開業するとされたが、コロナ禍や世界的な資材高騰などで大幅に遅れ、現在は30年秋開業とされている。
一方、牧尾さん自身も国内のカジノスクールで学んだ技術に磨きをかけようとIRの動きに合わせ、当初は本場ラスベガス修行を考えていたこともある。しかし、いまなお進化を続けているアジアのマーケットに強い魅力を感じ、最終的に韓国行きを選んだ。
瞬時の判断力が求められる現場
最初の渡韓は24年12月から3カ月間。離れている1年の間にバカラの主流が「タイガーバカラ」から「ドラゴンタイガーバカラ」となっていた。またフロアには サイドベットの多い「スーパーバカラ」も混在しており、その場その場で頭を切り換え、瞬時の判断で淀みなくゲームを進めていかなければならない。勝敗に応じてのチップの配当と回収。その手さばきも求められる。
韓国・仁川の「パラダイスシティ」(筆者撮影) 現場での会話は韓国語が基本で、現在は22時から6時までのナイト勤務。レートの低いローローラーのテーブルを担当しており、つまり最も激務ということになる。それは期待の裏返しだろう。そんな中で彼女は様々なバックボーンを持つ男6人、女3人の日本人インターン仲間とともに切磋琢磨(せっさたくま)している。
勤務は1テーブルを20分ずつで移動し、計3テーブル60分働き、20分休むというサイクル。牧尾さんは出勤前に正確なディーリングをする準備として自身に様々なルーティンを課している。チップの基本的なカッティングや複雑な配当を実演形式で練習。また52枚のカードを取り出し、1枚ずつ(絵札はすべて0と数える)を足していき、最終的に下1桁がゼロに戻るかを確認。その様はまるでプロアスリートのようでもある。
「調子の悪い日、感覚をつかむのに時間が掛かるときがあるので、それを少しでも減らしたい。自分を安心させ、自信を持って職場に向かうためです。チップも手になじませるため、いつも持ち歩いているんですよ」
そんな牧尾さんの楽しみは食事だ。「韓国の食事が体に合う」とニッコリ。ポッサム、スンデ、ユッケなどがエネルギー源となっている。
「ディーラー仲間の家に呼んでもらって食事をしたり、一緒に出かけたりして、楽しんでます。ナイト勤務だとビュッフェ形式の食事がありがたい。睡眠時間を含めて体調管理も仕事のうち。食事に助けられています」。そう言って微笑む姿はどこか、たくましく感じられた。
ビザの関係で滞在は今回も3カ月。4年後の日本開業をリアルに感じながら、牧尾さんは今日もカジノフロアで奮闘している。
