社員のモチベーションが高い理由は…フードロス対策をビジネスにした「クラダシ」のルール

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「日本一のインパクト企業グループへ。」

バレンタインのチョコレートや正月のおせちなど、イベントの裏で大量に廃棄される「季節商品」や、業界の慣習などで、賞味期限内にもかかわらず廃棄処分される「規格外」商品。こうした行き場を失った物の売り場を作り、目に見える形でフードロスを減らす「クラダシ」は、「もったいない」を価値に変える会社だ。

フードロス削減という社会課題を解決しながら、消費者にはお得に購入できるメリットを与え、企業は利益を生む。こうした仕組みはどのように生まれ、広がってきたのか。

さらに社員数48名という超少数精鋭ながら、食品のECサイト運営からオリジナルブランドの開発、物流の管理、エネルギー産業にまで事業を拡大していく原動力とは。

後編では、「日本一のインパクト企業グループへ。 」をビジョンに、公益性と経済性を両立させながら成長する「クラダシ」の潜在能力を、代表の河村晃平さんのインタビューで解き明かしたい。

仕組みで社会課題を解決するという発想

――小売店よりお得に購入できて、フードロスを減らして、自分の財布を傷めずに社会貢献活動に寄付までできてしまう。お買い物の罪悪感をなくす「クラダシ」さんの仕組みは、何をきっかけにできたのでしょうか。

河村氏「現会長の関藤が立ち上げたのが始まりです。関藤の原体験として大きかったのは、阪神・淡路大震災での被災経験と、その後の商社勤務時代に中国で目の当たりにした『大量生産・大量廃棄』のショックでした。

社会課題は善意だけではなく、仕組みとして解決していく必要がある。そう考えて生まれたのが、食品ロスになりうる商品をメーカーから仕入れ、オンラインで迅速にユーザーさんに届けるマッチングプラットフォームです。

売り上げの一部が社会貢献活動に回るというモデルも創業時から変わっていません。ユーザーさんはおトクに買い物ができ、その行為自体が社会貢献につながる。この仕組みが特徴です」

――社会貢献活動=購入時に決められる寄付先は、環境保護、災害支援、社会福祉、動物保護などたくさんの団体さんから選べますが、どうやって選定しているのでしょう。

河村氏「支援先の選定は非常に重要なバックボーンだと思っているので、創業時からの考えをベースにしながら、上場前に一度整理し、現在も継続している団体が多くあります。

具体的には、年に一度精査を行っています。各団体から活動報告書を提出していただき、それをもとに取締役会で承認を得て決定します。

国連の食料支援機関への寄付も含め、公明正大な支援を行うことを重視しています」

「2月15日からのバレンタイン」

――2022年バレンタインデーの「私たちのバレンタインは2月15日から始まります」は、複数のメディアで拝見した記憶があります。そうしたイベントごとに、会員数が増えていったのでしょうか。

河村氏「現在はおよそ63万人のユーザーにご利用いただいています。

『私たちのバレンタインは2月15日から始まります。』というキャッチフレーズは、2022年からですが、それ以前からチョコレートの取り扱い自体は継続的に行っていました。

ただ、『フードロスだから買ってよ』という義務感の押し付けにはしたくなくて、自分たちが楽しいからやっている、という感覚を表現できたのが、『2月15日から〜』の取り組みでした。その結果、多くの方に認知していただけるようになりました」

――63万人のECサイトの運営に加えて、物流代行や商品開発、エネルギー事業まで、短期間のうちに事業がどんどん広がっています。社員数48名でどうやって回しているんですか。

河村氏「新規事業も、誰か一人の「やりたい」という強い思いから始まり、それに共感したメンバーが、部署の垣根を越えて集まって形にしていきます。例えば自社ブランドのスイーツ事業「GREEN DOLCE(グリーンドルチェ)」も社員の発案からスタートし、半年もかからず商品化しました。

こうした背景には、社員一人ひとりのモチベーションの高さと、『まずはやってみよう』という文化があります。経営会議で予算や方向性を議論はしますが、基本的には手を挙げた人の思いを尊重し、スピード感を持って進める。

こういうものは、何年もかけるのではあまり意味がなくて、半年くらいで形にするところがみそだと思っています。賛同する多くの仲間が自発的に集まり、普段の業務と兼務しながらプロジェクトを推進していきます。

さらに、その動きを仕組み化した「Kuradashi Labo(クラダシラボ)」という制度も立ち上げました。社員から新規事業アイデアを募り、コンテスト形式で選考し、事業化につなげていく取り組みです。

今年も複数の案の中から3つの企画が立ち上がりつつあります。既存事業の進化や、食料残渣を活用した飼料開発、空き家問題への取り組みなどで、こうした仕組みと文化の両輪で、事業の広がりを支えています」

クラダシが求める「プロフェッショナルでいい人」

――少数精鋭の人材活用ですが、その期待を上回る結果を出す社員もすごい。クラダシが求める人材、採用基準を教えてください。

河村氏「シンプルに言うと『プロフェッショナルでいい人』です

ミッションやビジョンに共感し、それを自分ごととして捉えられる人。さらに、明るく楽しく元気よく、周囲と支え合える人柄を重視しています。

どれだけ華々しい経歴があっても、根本の価値観が合わなければ採用は見送ります。手前みそになりますが、多くの社員に『クラダシって、いい人しかいないよね』と言ってもらえる組織になりました」

――大学生のインターンも多く受け入れています。人の育成はどのように考えていますか。

河村氏「学生さんには貴重な時間を使って来てもらっているので、中途半端なかかわりではダメだと思っています。そのために1 on 1ミーティングの場を設け、各部署のリーダーが本人の目標や将来像としっかり向き合います。

学生さんにフルコミットしてもらう以上、企業側もフルコミットする。その関係性が大事だと考えています。

僕自身、中国でたまたま知り合った関藤(創業者で現会長)と、今、こんな風に一緒にビジネスをやっています。出会いという点が、いつどんな風に繋がるかわかりません。わからないからこそ、一つ一つ一生懸命、向き合うことが大事だし、そういう集団でありたいと思っています」

フードロスは世界共通の課題

――今後は海外進出もありますか。あるとしたら、どんな事業を考えていますか。

河村氏「現時点では日本が中心ですが、海外展開は視野に入れています。

昨年5月にHarvard Business School Executive Education Programmesに、1カ月参加しました。世界各国から200名以上のビジネスリーダーが集まって、いろいろなケーススタディを学んだり、一緒にビジネスに取り組むというものです。

そこでピッチコンテストをやった時に、僕の挙げたフードロスビジネスは、すごくいいねと言われました。フードロスは、世界共通の課題なんです。

一方で、各国で商慣習や流通の仕組みが異なるため、その土地に根ざした形で展開する必要があります。街には街のルールがあるので、新参者としてまずはしっかり受け入れてもらうこと。そのためにも現地での体験や人との対話を通じて理解を深め、課題を正しく捉えたうえで、その国に合ったサービスを作っていく必要があるなと思います。

将来的には、フードロスに限らず、エネルギーや地域課題も含めた『社会貢献型総合商社』のような存在として、世界に価値を提供していきたい。そのためにも学び続けながら、各地の課題に真摯に向き合い、解決策を見出していきたいと思っています」

クラダシの掲げる「善いビジネス」とは

最後に、クラダシが掲げる「善いビジネス」とは何かと河村さんに問うと、「公益性と経済性の両立」だと言う。社会性と環境性を満たしながら、ビジネスとしても成立させるのはチャレンジングなことだが、そこに挑み続けている河村さんの目は楽しそうだ。

個人的な興味から、河村さんの幼いころについて尋ねると、サッカーボールを追いかける、ごく普通の子どもだったと語る。だがその一方で、父親をはじめ親戚の多くが自営を営む家庭に育ち、家族が集まれば食卓では当たり前のようにビジネスの話が交わされていた。そうした環境の中で、「将来は自分で事業をやる」という思いが自然と根付いていったのだろう。

高校3年のとき、留学から帰国して入ったクラスで、後に起業家として活躍する村上太一氏と出会う。「いつかは起業したいよね」と語り合い、実際にインターンなどを通じて動き出したのもこのころだ。本格的に事業を意識し始めたのは大学1年生のとき。高田馬場のカフェでミッションやビジョンを描きながら、自らの進む道を具体化していった。

大学ではその志を軸に経済を専攻し、社会に出てからは商社で実務経験とネットワークを築く。そしてクラダシ創業者・関藤さんの語るビジネスモデルに出会い、その社会性と可能性に共感して参画を決めた。

フードロスを減らしながら、ユーザーはお得に買い物ができ、その行為が社会貢献にもつながる――その循環は、事業が大きくなるほど社会へのインパクトも大きくなる。

河村さんの言葉の端々から感じたのは、「持続可能であること」の重要性だ。それは食品や環境やエネルギーにとどまらず、人の気持ちやモチベーションも含まれる。だからこそ「もったいない」は単なる食品ロスの問題ではなく、人の想いや価値をも生かしきるという発想へと広がったのだろう。

顧客・社会・企業の三方よし。そのさらに根底にある「人の気持ち」を何よりも大切にする視点こそが、クラダシというビジネスを支え、進化させ続けている理由であろう。

【前編】「バレンタインチョコを2/15から売る」ビジネスで、社会貢献しながら同時に利益を生み出せるワケ