歌舞伎界の若きプリンス、市川染五郎がシェイクスピアの傑作に挑む。舞台「ハムレット」
5月9日(土)からスタートする舞台『ハムレット』に挑むのは、歌舞伎界の若きプリンスこと、市川染五郎さん。ストレートプレイの舞台への出演が初となる本作に向けて意気込みを聞いた。
ようやくその時がきたなと思っています
歌舞伎には家の芸と呼ばれる演目があり、祖父や父親が演じた役を演じることは珍しくない。しかし今回市川染五郎さんが挑むのは、シェイクスピアの『ハムレット』。かつて祖父の松本白鸚さんも、父親の松本幸四郎さんも演じている役だ。
「やっぱりどこか、自分もいつかやらなければいけない作品のように感じていたので、ようやくその時がきたなと思っています。じつは13歳の時に、朗読劇はさせていただきましたが、『ハムレット』は哲学的な部分もあり、当時は作品を理解しきれてなかったと感じていて、リベンジというか、もう一度きちんと取り組み直せるのは嬉しいです」
これまでドラマや映画への出演経験はあるが、ストレートプレイの舞台への出演は今回が初となる。
「基本的には何でも挑戦してみたいと思っていて、それは昔から変わらないです。ただ軸が歌舞伎にあるため、なかなか機会がありませんでした。『ハムレット』は祖父も父も演じた作品ですし、スケジュールなどすべてがはまって実現したのも、ご縁かなと思っています。歌舞伎も、ここ30年くらいは歌舞伎外の演出家の方が手がける新作も増えています。その場合、普通の演劇と同じように稽古期間をかけて作っていますから、舞台を作るという意味では変わらない気持ちでいます。ただ、歌舞伎は、生まれた時から自分を知っている方々とずっと一緒にやっていくわけですが、今回は作品の期間だけに集められた作品のためだけのチームです。しかも女性の役を本当の女性の方がやることになりますから、そこは個人的に新鮮ですね」
デンマーク王子のハムレットが、夜な夜な城に現れる死んだ父王の亡霊から、自身を殺して王座に就いた叔父の殺害を命じられ、復讐に身を投じてゆく物語。稽古を前に、さまざまな俳優が演じたハムレットを映像で観て、研究中という。
「今回使用する松岡和子先生の翻訳で上演されたものを中心に観ています。シェイクスピアをやる上で、言葉…日本語の細かいニュアンスをどう捉えるかが大事だと思うので。ただ、一番は演出のルヴォーさんの頭の中にあることを立体化させることですので、ルヴォーさんの意向と一致しているかを逐一確認しながらやっていきたいです」
これまでも日本で数々の舞台を手がけているデヴィッド・ルヴォー。観客の想像力を喚起する美しい舞台と作品の深い解釈で、その手腕は世界的にも高く評価されている。
「以前にご挨拶した時に、この作品を現代でやる意味をちゃんと考えて作りたいとおっしゃっていたのですが、自分も同じ想いでいます。ルヴォーさんは、演劇でありながらエンターテインメントとしてしっかり楽しめる舞台を作られる印象があります。観て飽きないですし、お話を伺う中でも、新しいハムレットを作りたいという想いをすごく感じましたし、ポスターの写真からもみなさんにはそれを感じていただけると思います。これからどういう形になっていくのかわからないですが、自分自身もとても楽しみにしています」
歌舞伎の舞台でも、近年新しい役柄に次々挑戦し、着実に実績と評価を積み上げてきている染五郎さん。
「まずはこれが第一歩。ここから他のシェイクスピア劇も観てみたい、と思っていただけるようなハムレットにしていきたいと思っています」
市川染五郎いちかわ・そめごろう 2005年3月27日生まれ、東京都出身。'09年に松本金太郎を名乗り、初舞台。'18年に八代目市川染五郎を襲名。歌舞伎以外では、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、Prime Video『人間標本』などに出演。
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夜な夜な城に出没する父の亡霊から、父王が叔父クローディアス(石黒賢)に毒殺されたことを知らされたハムレット(染五郎)は、王座に就いたクローディアスの殺人の証拠を探るため狂気を装い…。
5月9日(土)〜30日(土)東京・日生劇場 作/ウィリアム・シェイクスピア 演出/デヴィッド・ルヴォー 翻訳/松岡和子 出演/市川染五郎、當真あみ、石川凌雅、横山賀三、梶原善、柚香光、石黒賢ほか 全席指定S席1万4000円ほか 大阪、愛知公演あり。チケットホン松竹 TEL. 0570-000-489(平日10:00〜17:00) 公式サイト
写真・小笠原真紀 スタイリスト・中西ナオ ヘア&メイク・桂川あずさ インタビュー、文・望月リサ
anan 2494号(2026年5月1日発売)より

