中国で直径900mのクレーター「金林クレーター」が発見される…過去約1万年以内で最大規模

写真拡大 (全4枚)

天体衝突の跡であるクレーターは、表面の更新が激しい地球では珍しく、わずか200個前後しか見つかっていません。クレーターが消えてしまうと、その時代にあったかもしれない、局所的・限定的な気候変動や環境改変の証拠が消えてしまうことになります。

北京高圧科学研究センター (HPSTAR) の明陈 (ミン・チェン) 氏などの研究チームは、中国南部で直径900mにもなるクレーターを発見し、「金林クレーター (きんりんクレーター)」と名付けました。高温多湿で風化作用が激しい中国南部でクレーターが残っていることから、金林クレーターは過去1万年以内に形成されたと推定されます。これは、完新世 (最終氷期から現代までの1万1700年間) では最大のクレーター、かつ完新世で最大規模の天体衝突イベントであることを意味します。

地球のクレーターはとても珍しい

地球と月は隣り合っている天体ですが、大きさや大気の有無など、いくつかの違いがあります。その中で視覚的にも分かりやすいのは、天体衝突の痕跡であるクレーターの数でしょう。

月の表面には、1km以上のクレーターだけで約130万個あると推定されています。一方で地球は、1km未満も含め、確認されたクレーターはわずか200個前後です。6600万年前の白亜紀末の大量絶滅の原因となった天体衝突の跡であるチクシュルーブ・クレーターのように、大部分が海底に位置し、地上部の痕跡もあまりはっきりしていない例も少なくありません。

これほどまでの差は、簡単に言えば地球にはあって月にはないものによって生じます。まず、地球には分厚い大気があり、小さな天体は大気圏で燃え尽きてしまい、クレーターを作りません。また、地球は激しい気象現象や地殻変動があるため、雨風によってクレーターが侵食されたり、火山活動で地形ごと改変されたりすることで失われてしまいます。

月には大気も気象現象も無く、地殻変動も限定的です。月のクレーターが失われるのは、太古の火山活動、ゆっくりとしか進まない宇宙風化、天体衝突による直接的な上書きなどが理由であり、表面の更新は地球より穏やかです。これが地球と月とのクレーターの違いとして現れています。

天体衝突の跡である可能性が高い

今回、北京高圧科学研究センターの明陈氏などの研究チームは、中国南部で新しいクレーターを発見したと報告しました。クレーターは広東省北西部にあり、近隣の村の名前から「金林クレーター」と名付けられました。金林クレーターは山の斜面に刻まれた、直径が820mから900mのわずかな楕円形をしたクレーターです。クレーターの縁から底までの深さは90mほどであり、山の斜面に沿って13度ほど傾斜しています。

もちろん、クレーターのような地形が、天体衝突以外の原因でできることもあります。特に、英語名が同じ crator である火山の火口は、天体衝突のクレーターとそっくりな形をしています。しかし金林クレーターの内部にある岩石には、天体衝突以外では説明の難しい、極めて高い圧力に晒されたことを示す痕跡 (石英のPDF構造) が見つかっています。PDFに加え、地形や岩石の飛び散り方も合わせて総合的に考えると、金林クレーターは天体衝突の跡である可能性が高いことになります。

地球での新たなクレーターの発見自体、珍しい報告とはなりますが、金林クレーターはそれ以外の点でも珍しい特徴があります。それは、中国南部で発見されたということです。これまで中国で発見されたクレーターは4個ですが、全て北東部にあります。金林クレーターのある中国南部は、降水量が多く高温多湿な熱帯-亜熱帯モンスーン気候であり、浸食と風化が激しく進みます。

これを踏まえると、金林クレーターは発見されたこと自体が驚きと言えます。実際、クレーターがある場所は、厚さ30mに達する土が堆積しており、元は硬い花崗岩だったものが風化してできたものだったことが分かっています。クレーター内部には深さ10mにもなる浸食跡がいくつもあることからも、全体的に脆い地形であることが分かります。

金林クレーターが存在するのは、風化から消えるまでの時間が経過していない、若いクレーターであると考えると説明がつきます。クレーター内部にはいくつかの岩片がありますが、これは土の下にある風化前の岩盤であり、天体が衝突した時に掘り返されたものと推定されます。

岩片の風化度合いから推定すると、金林クレーターができたのは1万年未満、完新世の前期から中期の時代であると推定されます。もっと正確な年代を推定するにはさらに研究が必要ですが、ポイントとなるのは、金林クレーターは900mもある点です。これは7300年前に形成されたロシアのマチャ・クレーター群 (最大直径300m) を上回り、完新世で最大のクレーター、完新世で最大規模の天体衝突イベントとなります。

未発見のクレーターがどこかにあるかもしれない?

金林クレーターは見つかったばかりであり、まだ多くのことは分かっていません。ただしそれでも、金林クレーターを作った衝突イベントの様子はある程度推定されています。

今から1万年以内のある日、直径30mほどの天体が現在の中国南部に衝突しました。この天体は岩石や金属の多い小惑星であり、氷が多い彗星ではなかったと推定されます。20km/s前後の典型的な衝突速度ならば、厚さ30mの土の層を吹き飛ばし、下にある硬い岩盤も抉ったことでしょう。

ただそれでも、土の層は幾分か、衝突の衝撃を和らげたはずです。このため金林クレーターでは、岩盤の破片にそれほど勢いがつかず、クレーターの外まで飛び散ることなく溜まってしまったでしょう。この推定される様子は、クレーター内部の地層とも一致しています。

金林クレーターの発見は、46億年の地球の歴史からするとついこの間の出来事でさえ見逃されていることを示す証拠です。中国南部でクレーターが未発見だったのは、単に風化作用で消えてしまうだけでなく、人里離れ、資源がない場所では、地質調査もあまり行われないという関心の低さも関係しています。

また、金林クレーターを作った天体衝突が、気候や周辺環境に与えた影響も分かっていません。短期間ながらも重大な影響を与えたかもしれませんし、あまり大きな影響を与えなかったのかもしれません。

ただ、金林クレーターと同規模の衝突が、まだ未発見のままどこかに眠っている可能性は十分にあります。そのような衝突があったとしても、クレーターは消えてしまっているかもしれませんが、岩石などの他の証拠からその存在を証明できるかもしれません。

完新世は現代を含む地質時代であり、細やかな気候変動は多かれ少なかれ人類の歩みに影響を与えたでしょう。天体衝突は気候変動の原因になり得ることからも、新しい年代のクレーターの発見は重要となります。

【もっと読む】『「1日の長さ」が数百万年ぶりの規模で増加していた…過去の自転周期をミリ秒単位で測定する「意外な手法」』

【もっと読む】「1日の長さ」が数百万年ぶりの規模で増加していた…過去の自転周期をミリ秒単位で測定する「意外な手法」