この記事をまとめると

■ハイヤーやタクシー、物流など運転を仕事にする職種は多岐にわたる

■各職種ごとに高度な技術や資格が求められスキルに加えて判断力や配慮も重要になる

■自動運転の影響はあるが人の判断や対応力が必要な領域は多い

運転で生きる道はひとつじゃない

「いつかはどこかのワークスドライバーに……」。クルマ好きなら、そんな夢を見たことが一度ぐらいはあるはず。だが、現実は甘くない。サーキットやラリーのSSでコンマ数秒を削れる才能は、選ばれし者にしか与えられていないのだ。

 だが、「公道にて運転のプロとして生きる道」であれば、意外と広く開かれている。

 三度のメシより運転が好きというタイプの人間が就業を検討してみるべき「ハンドルを握る職業」を、その就業難易度と将来性とともにまとめてみよう。

究極の黒子として活躍する「ハイヤードライバー」

 タクシーとは一線を画す、高級車両での完全予約制サービス。クライアントは企業重役などのVIPが中心だ。

 さすがに就業難易度は比較的高く、普通二種免許のほかに「高度なマナー」と「高度なドラテク」も必要とされる。車体を揺らさないのは当たり前で、加減速のGを同乗者に感じさせず、かつ車内の会話を一切外に漏らさない守秘義務や、渋滞を避ける緻密なルート選定などが求められる。

 将来性:★★★★☆
富裕層向けの「属人的なホスピタリティ」は、AIや無人タクシーでは代替しにくい領域。10年後も「この人の運転だから乗る!」という指名は生き残る可能性が高い

都市の毛細血管を走る「タクシードライバー」

 もっとも身近な運転のプロ。歩行者の飛び出しや気まぐれな客の挙動を予測できる「ストリート的な瞬発力」が要求される職業だ。

 普通二種免許を所持するだけでなく、路地裏のショートカットから、時間帯ごとの交通量まで把握しているさまは、まさに街の生き字引。自分の腕で稼ぐ歩合制のシビアさも、ある意味レースのリザルトに近い高揚感があるかも?

 将来性:★★★☆☆
配車アプリの発展により、ここ最近は平均年収が上がっているとの報道もあるが、自動運転の影響を受けやすい職種でもある。10年後は地方の過疎地や都市部の特定ルートで「無人化」が進むことも考えられるため、現状のスキルだけではやや厳しくなる可能性もある

日本の物流を支える「トラックドライバー」

 2024年問題以降、その希少価値が爆上がりしている職種。軽貨物から10トン超の大型トラックまでを巧みに操る姿は、男のロマンそのものともいえる

 軽貨物の場合はさておき、スケールを追いたい場合は大型・中型一種免許などが必要となるほか、巨大な車体をミリ単位で操るバック駐車技術や、積載物の荷重移動を考慮したコーナリングテクニックも必要となるため、やはり難易度は高い。とくにトレーラーでのバックは、筆者はできる自信がまったくない。

 将来性:★★★★★
高速道路での「無人隊列走行」などの技術導入は進むはずだが、ラストワンマイルの移動や複雑な荷役作業を伴う現場では、人間のドライバーは不可欠。体と頭、そしてテクが衰えなければ、10年後も食いっぱぐれないはずだ

発売前の秘密を預かる「テストドライバー」

 自動車メーカーやタイヤメーカーのテストコースを走り込み、次世代の車両開発に携わる仕事。大手メーカーに正社員として、あるいは専門職採用で潜り込まねばならないため、まずはいきなり難易度が高い。そして限界域でのコントロール能力は当然として、微細な振動や音からメカニズムの状態を読み取る「センサー」としての能力、さらにはエンジニアに対して論理的なフィードバックをする能力も必須となる。

 将来性:★★★☆☆
シミュレーション技術(CAE)の進化により実車走行の機会は減る傾向にあるが、「最終的に人間がどう感じるか」の感性評価は決してゼロにはならない。とはいえ非常に狭き門なので、将来性うんぬん以前に就業自体が非常に難しい

人間ならではの対応力やホスピタリティが重要に

クルマを運ぶプロの「キャリアカー(積載車)ドライバー」

 新車や中古車を、ディーラーやさまざまな場所へ運ぶ仕事。クルマ好き各位であれば、積載車に載っている最新モデルや希少車を見て、胸躍らせた経験もあるだろう。

 だが、難易度はさすがに高く、大型・けん引免許のほかに、積み込みの熟練技も必要とされる。数センチの隙間を縫って、高価な商品車をパズルのように配置する作業はまさに職人芸。地上高の低いスポーツカーを傷つけずに載せる緊張感は、サーキットやSSにおけるシビアなブレーキングに通じるものがある(かもしれない)。

 将来性:★★★★☆
車両の輸送需要は、販売形態がオンライン化したとしてもなくならない。むしろ「高級車を丁寧に運べるプロ」の価値は今後、ますます上がっていくと考えられる

「日本の大動脈」を預かる「高速バス・路線バス運転手」

 一度に数十人の命を乗せ、巨大な車体を時刻表どおりに走らせるという偉大な仕事だ。しかし、さすがに難易度は高く、大型二種免許が必要なほか、内輪差を完璧に把握し、狭い交差点を涼しい顔で曲がっていけるテクと経験が必要。深夜のハイウェイを淡々と一定のペースで刻むクルーズコントロールのような正確さや、混雑した駅前などを何年間も無事故で曲がり続けるカッコよさは、ベテランにしか出せない味だ。

 将来性:★★★☆☆
深刻な人手不足のため、食いっぱぐれることはまずない。だが一方で、高速道路の特定区間での自動運転導入がもっとも早そうな分野ではある。10年後は「システムを監視・管理するパイロット」に近い立ち位置に進化しているかもしれない

隠れた高待遇職種の「危険物輸送(タンクローリー)ドライバー」

 ガソリンや化学薬品など、まさに「走る火薬庫」を操るプロフェッショナル。大型免許のほか、危険物取扱者乙4をもっている必要がある。そして、タンク内の液体は加減速のたびに揺動(波打ち)を起こし、車体の挙動を乱す。この特有の慣性を計算に入れ、究極にスムースなアクセルワークとブレーキングをこなすのがローリー乗りの真髄。その繊細さは、雨のサーキットを走るレーシングドライバーのようでもある。

 将来性:★★★★☆
エネルギー需要がガソリンから水素やほかの液体燃料に変わったとしても、「液体を運ぶ」という物理的なニーズは変わらない。そして、資格が必要なぶんだけ参入障壁が高く、安定しているといえそうだ

縁の下の力もちな「レッカー・ロードサービス隊員」

 事故や故障で動けなくなったクルマを救出する公道のレスキュー隊。中型・大型免許のほか、当然ながら現場判断力も必要となる職種だ。足まわりが逝ってしまった車両をどう引き出すかなど、現場ごとに異なる状況を、ウインチと知恵で解決するゲーム性の高さも職業として魅力。また、他人の失敗(事故)をカバーする仕事であるため「感謝される機会が多い」というのも、やりがいにつながりそうだ。

 将来性:★★★☆☆
ADAS(先進運転支援システム)の普及で事故自体は減るかもしれないが、パンクやバッテリー上がり、EVの電欠など、「現場へ行かなければ解決できないトラブル」は10年後も必ず残っている

 今後、仮にAIがハンドルを握る時代が来たとしても、「状況を判断し、機材を慈しみ、人やモノを安全に目的地へ届ける」というドライバーの本質的な魂は変わらない。プロのレーシングドライバーにはなれなかった悔しさを、それとはまた別のプロフェッショナルな現場で「誰にも真似できないスムースな運転と仕事」に昇華させるという生き方も、カーガイとしては最高にクールかもしれない。