次回5月6日(水・振休)よる10時 第5話を放送 日本テレビ系水曜ドラマ「月夜行路 ―答えは名作の中に―」(毎週水曜よる10時放送)。

数々の名作ドラマレビュー記事を手掛ける「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平氏は、4月29日(水・祝)放送の第4話をどう見たか?場面写真とともに紹介する。

本作は、家族から蔑ろにされ寂しさを抱える専業主婦の涼子(麻生久美子)が、文学オタクで洞察力に優れたバーのママ・ルナ(波瑠)と出会ったことから始まるロードミステリーだ。

(※以下、第4話のネタバレを含みます)

<「痛快ロードミステリー」の深化を感じさせる第4話>

今回は早くも、物語の縦軸であった涼子の“思い残した恋”に決着がついた。だがそれは、前回までの“痛快さ”が嘘のように、決してすっきりとした解決ではなかった。晴れることのない思いを抱えながらも、だからこそ前へ進むことができる――そんな、作品の“深化”を感じさせる結末だった。

本作は“痛快ロードミステリー”と謳っている通り、これまで数々の事件を爽快に“解決”してきた。第1話から第3話まで、心中、強盗、宝石店での殺人事件と、扱う題材はハードでありながらも、作品全体がフィクションとしての様式美に包まれていたため、生死の描写に過度な生々しさはなかった。あくまで謎解きのピースとして、カジュアルに楽しめる設計となっていたのだ。そして何より、その背景にある“人情”を丁寧にすくい上げることで、事件そのものではなく、その陰にある感情へと視聴者を導いてきた。それこそが本作のアイデンティティーであり、“痛快さ”の正体だったはずだ。

<どうにもならない“現実”―――元カレ探しの終着点>

しかし今回の第4話は、その痛快ささえもが“振り”であったかのような構成を見せる。描かれたのは、涼子の“元カレ探し”の終着点だ。
かつて結婚を誓い合いながらも、突然別れを告げられた恋人のカズト(作間龍斗)。その真相は、別れからわずか数か月後、彼が末期がんでこの世を去っていたというものだった。さらに、別れた後に残されていた「会いたい」という最後の連絡。それは、彼にとっての“最後の機会”だったのかもしれなかった――。

すでに家庭を持つ涼子の“元カレ探し”は、どこか失われた青春を取り戻すような、爽やかな旅として受け止めていたはずだ。だが、20年以上の歳月を経て突きつけられた事実は、もはや“癒やし”ではなく、立ち直れないほどの“痛み”だ。これまでのように「解決した!」と胸を張れるものではなく、知ったところで何も取り戻せない。どうにもならない現実が横たわる、あまりに苦い結末だったのだ。

<謎解きのギミックから“人生の証し”へと変わる文学>

だが、そこで効いてくるのが、本作のもう一つの軸である“文学の手引き”である。
これまでの物語において“文学”は、ミステリーを解くためのヒントやギミックとして機能してきた。しかし、今回は違った。カズトが愛読してきた数々の名作は、彼が生きるための支えであり、人格形成そのものであり、未来へのメッセージでもあったのだ。それを今を生きる涼子がなぞり、追体験することで、彼の人生の確かさに触れることができた。

失われた時間は戻らない。だが、その人生は確かに“文学”とともにそこにあった。そう実感することで、決して“解決”とは呼べないはずの結末が、やさしく着地していったのである。

<最終回級の余韻と、新章への鮮やかな引き>

さて話は変わるが、“良いドラマ”とは何だろうか?
それは、納得のいく最終回を迎えること、そしてそれでもなお「続きが見たい!」と思わせることではないだろうか。その点において今回の第4話は、物語序盤でありながら、まるで最終回のような完成度と余韻を備えていた。これまで積み重ねてきた構成を伏線として回収し、縦軸を一度着地させる手腕は見事というほかない。しかし同時に、本作にはまだ多くの謎が残されている。とりわけ、ルナという人物の素性と、彼女が涼子をどこまで知っているのか?という謎だ。

ラスト、涼子の夫(田中直樹)が登場したことで、余韻たっぷりの静かな着地から一転、物語を大きく動かす急転直下の“引き”を迎えた。まるで“最終回のあとに始まる新章”のような、満足感と高揚感が同時に押し寄せたのだ!
静かな余韻から、再び物語を加速させるこの鮮やかな切り返し。だからこそ、私たちは次回もまた、彼女たちの旅路を見届けたくなるのだ。

<番組情報>

原作:秋吉理香子『月夜行路』(講談社)
脚本:清水友佳子
音楽:Face 2 fAKE
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:水嶋陽、小田玲奈、松山雅則
トランスジェンダー表現監修:西原さつき、若林佑真、白川大介
演出:丸谷俊平、明石広人
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ

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・ホームページ:https://www.ntv.co.jp/getsuyakouro/
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<原作情報>

『月夜行路』 
四十五歳の誕生日、孤独な主婦の沢辻涼子は家を出た。偶然出会った美しいバーのママ・野宮ルナは、深い文学知識と洞察力を活かした推理で、かつての恋人への涼子の思いを言い当てる。最愛の彼はなぜ涼子のもとを去ったのか?二人が始めた元彼探しの旅先で、明らかになる秘密とは。涙のサプライズエンディング!
発売中 講談社文庫

『月夜行路 Returns』
元彼探しの旅から戻った涼子が再びルナを訪ねたとき、店に届いた古いノートパソコン。誰が、何のために送ってきたのか。涼子は、パソコンを開くパスワード探しを手伝うことに。行く先々で事件に巻き込まれながら、パスワードを試していく二人。願いを込めた仕掛けに挑めるチャンスは、5回。鍵を握るのは、1冊の本。
発売中 講談社

【秋吉理香子 プロフィール】
兵庫県出身。早稲田大学第一文学部卒業。ロヨラ・メリーマウント大学大学院にて映画・TV番組制作修士号取得。2008年、第3回Yahoo! JAPAN文学賞を受賞し、2009年に『雪の花』でデビュー。主な著作に『月夜行路』『悪女たちのレシピ』『終活中毒』『無人島ロワイヤル』『暗黒女子』などがある。