駐米大使に指名されたメイヤー氏(右)と駐南ア米国大使のボゼル氏(3月17日撮影)=在南ア米国大使館のSNSから

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 【ヨハネスブルク=高木文一】トランプ米政権が、「白人が迫害されている」として対立してきた南アフリカとの関係修復に動き出した。

 米国が対イラン軍事作戦への批判から国際的に孤立したことが背景にあると見られる。南アも不在だった駐米大使を指名し、米側の動きに呼応している。

管理

 米国のブレント・ボゼル駐南ア大使は8日、プレトリアの大統領迎賓館で、南アのシリル・ラマポーザ大統領に正式な大使として認めてもらうための信任状を手渡し、「両国関係をかつてない高みへと導くことが私の目標だ」と伝えた。大使はこれまで、トランプ米大統領と同様、南ア批判を展開してきたが、突如、融和姿勢を示した。

 ラマポーザ氏は15日、1年以上不在だった駐米大使に、アパルトヘイト(人種隔離政策)廃止に向けた交渉を主導したロルフ・メイヤー氏の起用を発表した。メイヤー氏はアフリカーナーと呼ばれるオランダ系などの移民の子孫で、トランプ氏が「迫害されている」と指摘する白人だ。関係修復を円滑にする狙いとみられる。

 米側の変化について、南アフリカ国際問題研究所のグスタボ・デカルバリョ研究員は「米国の関心はグローバル・サウス(新興・途上国)をうまく管理することだ」と指摘した。「世界が外交の多角化を図り、米国と距離を置き始める中で、アフリカのリーダーである南アと良好な関係を築く方が得策と考えたのではないか」と分析する。

悪化

 トランプ氏が2期目の大統領に就任した昨年1月以降、両国関係は悪化の一途をたどっていた。

 トランプ氏は南アの土地政策が白人に差別的だとする根拠のない主張を一方的に展開し、昨年2月、2国間援助を禁止した。翌月には、トランプ氏を「白人至上主義」と批判した駐米大使に国外退去を命じた。

 ホワイトハウスで昨年5月に開かれた首脳会談では「南アの白人は土地を没収され、殺されている」と面前で激しく非難し、ラマポーザ氏が「犯罪で命を落としている人の多くは黒人だ」と反論しても、聞き入れなかった。米国は南アで昨年11月に開かれた主要20か国・地域(G20)首脳会議をボイコットし、米国が議長国を務める今年12月のG20首脳会議に南アを招かない方針も示した。

 南アが2023年12月、パレスチナ自治区ガザへの侵攻を巡ってイスラエルを国際司法裁判所(ICJ)に提訴したことやイランと良好な関係にあることも米国が南アを敵視した理由だ。AP通信によると米国は約1年前からICJ提訴の取り下げやイランと距離を置くこと、黒人優遇政策の見直しを要求してきたという。

実用的

 南アは一方的な非難に耐えながら関係修復を模索してきた。ラマポーザ氏は4月15日、「米国は世界最大の経済大国であり、南ア経済において重要だ」と述べた。

 ただ、米国の要求を受け入れるとは限らない。

 南アの外務省幹部は3月、ロイター通信に「イランとの関係を断つ理由はない」と断言し、ICJ訴訟の取り下げにも応じない考えを示した。前出のデカルバリョ研究員は「意見の相違を認めつつ折り合える実用的な関係を築くことが求められる」と述べた。