【河野 嘉誠】【独自】サナエトークンに「違法販売」の疑い、極秘契約書を独占入手!宣伝に加担した高市事務所を直撃すると…
「ご投資いただいているSANAE TOKEN(サナエトークン)ですが、近く暗号資産取引所に上場することが決まりました」
高市早苗総理の名を冠する暗号資産(仮想通貨)が発表される直前、関係者にそう連絡した人物がいた。高市事務所と密接な関係を持つ、サナエトークンの仕掛け人・松井健氏である―。
サナエトークンのキーマンがついた「ウソ」
サナエトークンの時価総額は一時、数十億円規模になったが、高市総理が関与を否定すると価値は暴落し、金融庁も実態把握に乗り出す事態に発展した。キーマンが、トークン発行元「NoBorder DAO(ノーボーダー・ダオ)」幹部の松井氏だ。
30代前半の彼は「天才ハッカー」の触れ込みで、高市事務所ともやりとりを重ねた。一方、「週刊現代」で既報のように彼が手がける複数の投資案件で返金トラブルが発覚している。
渦中の人物である松井氏は突如として『週刊文春』(4月2日発売号)に登場した。「高市事務所所長で公設第一秘書の木下剛志氏に、サナエトークンは暗号資産だと事前に伝えており、(木下氏も)異議を唱えなかった」などと暴露したのだ。
高市事務所は「サナエトークンが暗号資産だとは聞いていない」と説明してきたが、松井氏の証言はこれを覆す内容だ。
改めて、筆者が木下氏に事実関係を問い質すと「『サナエトークン』という用語は会議で出てこず、賛意も示していない。(松井氏は)都合のいい部分だけを取り上げている」などと反論した。
そもそも日本に住む人に暗号資産を販売するには、国の「暗号資産交換業」への登録が必要だ。しかし、ノーボーダー・ダオは登録しておらず、資金決済法に違反する「無登録営業」の疑いも指摘される。
この点について、松井氏は『文春』で、「ノーボーダー・ダオは分散型取引所(DEX)でユーザーがトークンを取引できるようにしただけで、直接売買していない」と説明。過去の事例から言っても問題はないと、違法性を否定した。
ノーボーダー・ダオを主宰する著名実業家の溝口勇児氏もXで、サナエトークンの補償方針を発表、騒動の幕引きを図ろうとしている。
ところが、松井氏の『文春』の説明には「ウソ」があった。
サナエトークンと玉木トークンは繋がっていた!
冒頭の場面に戻ろう。松井氏が2月25日のトークン発表前に連絡をとった相手は誰か。
「私も含めて、サナエトークンの優先購入権を予約していた契約者です」
そう明かすのは、松井氏が代表を務める株式会社neuと契約を結んだ投資家のD氏。neuは、溝口氏の会社とともにノーボーダー・ダオを構成する企業群の一角だ。
「予約購入は未公開株の購入と似たようなもの。私たちは、取引所に上場される前に、サナエトークンを購入していました」(D氏)
なんとサナエトークンの「事前販売」が行われていたというのだ。値上がりが確実視されるサナエトークンを上場前に割安で手に入れられた可能性があり、公平性を揺るがす大問題である。さらに、D氏は驚くべき証言を続けた。
「サナエトークンとTMKトークン(以下、玉木トークン)は一つに繋がっています」
既報の通り、松井氏はサナエトークンの前に、国民民主党の玉木雄一郎代表をモチーフとした玉木トークンを構想していた。
玉木トークンの詳細はこちらより→【スクープ】サナエトークン設計者は「玉木トークン」も計画していた…!「国民民主党の躍進に貢献」とうそぶく男の「政界人脈」
玉木事務所も松井氏から提案があったと認めていたが、いったいどういうことなのか。
筆者の手元には、「NCC会員サービス等予約契約書」という文書がある。D氏がneuと取り交わしたものだ。
「'24年に、松井氏から『話題性のあるミームコインを発行する。上場前に購入できるようにするので契約してほしい。上場すれば価値が一気に跳ね上がる』と説明を受けました。松井さんは政治家事務所にも出入りし、信用できると感じた。投資の一環として契約を結び、数千万円を振り込みました」(D氏)
当初、トークンの詳細については決まっていなかった。
「'24年の衆院選で国民民主党が大きく躍進すると、松井氏から『玉木トークンを発行する』と、資料を見せられながら説明を受けた。ところが、'25年の7月から『サナエトークンにする』と言い出した。松井氏からは『発行者側が(サナエ)トークン全体の65%を保有している。その中にあなたのトークンも含まれているので安心してほしい』と言われました」(同前)
サナエトークン「事前販売契約書」を公開する
松井氏は冒頭のように、サナエトークンの発表直前には、契約者向けに「投資いただいているサナエトークンが(これから)上場します」というメッセージまで送付していた。
筆者は、同サービスを契約した別の投資家・E氏の契約書も入手したが、内容は同じで、こちらも数百万円単位で振り込みをしていた。
「松井氏は都内の交流会で出会った経営者などと契約していた。中には数億円を支払った人もいる。サナエトークンが騒動化して、すでに複数の契約者から返金要求が出ており、私も返金を要求しました。ところが、松井氏は『金融庁対応で忙しい』などと言って、ロクに対応していません。neu側には少なくとも15億円程度は集まっていたと聞いています」(松井氏に近しい関係者)
かように、投資トラブルに発展しつつあるのだ。重要な点は、松井氏が『文春』で話していたような取引所におけるユーザー間の売買のみならず、自身の会社でも直接、サナエトークンへの投資を募っていたことである。要は、暗号資産交換業の登録がないにもかかわらず、実質的にはトークンを売っていたのだ。
霞が関関係者は「松井氏が文春で話した内容は言い逃れで、暗号資産の事前販売に該当する可能性がある。許せない」と怒りを露にする。
金融庁は筆者の取材に、「DEX上場後の取引はコンピュータの自動取引が含まれ、直ちに無登録営業に該当するとは言いがたい。しかし、無登録業者が直接顧客に暗号資産を売買すれば資金決済法(63条の2)に違反し、3年以下の懲役または300万円以下の罰金になるおそれがある。悪質な場合、金融庁が捜査機関に情報提供する」と指摘。
さらに、サナエトークンを巡る「カネ集め」の手法は、これだけではなかった。
後編記事『高市事務所とサナエトークンの闇…キーマンは「総裁選で小泉進次郎の誹謗中傷動画を作っていた」と吹聴』へ続く。
かわの・よしのぶ/'91年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、「サンデー毎日」「週刊文春」の記者を経てフリーに。主に政治を取材している
「週刊現代」2026年4月27日号より
