『タツキ先生は甘すぎる!』町田啓太が初めて見せた動揺 黒髪スーツ姿の回想シーンに衝撃
「俺も……わからないんです」
参考:『九条の大罪』から一転 町田啓太が『タツキ先生は甘すぎる!』で示す“令和のヒーロー像”
額から流れる汗、浅い呼吸、震える手。どんな時も子どもたちを笑顔で安心させてきたタツキ(町田啓太)が、初めて動揺を見せた『タツキ先生は甘すぎる!』(日本テレビ系)第3話。彼のどこまでも子どもファーストな姿勢に隠された過去が少しずつ見えてきた。
前回の終盤に、飛び降りで重傷を負い、HCU(高度治療室)に入っている息子・蒼空(山岸想)の様子をこっそりと見に行ったタツキ。彼の脳裏に蘇ったのは、妻・優(比嘉愛未)と蒼空と3人で暮らしていた頃の記憶だ。黒髪でスーツ姿のタツキが、蒼空を「外に出ろ!」と強引に部屋から出そうとする姿に衝撃を受けた。
金髪でラフな服装を纏い、小6の娘の寧々(本屋碧美)が部屋に閉じこもっていることを心配する母親の珠美(黒川智花)に「ま、引きこもりを楽しめてるかもしれないんで」と言い放つ現在のタツキとはまるで別人。彼がフリースクールの職員になり、子どもたちに何も強要せず、ひたすら寄り添うのは息子を追い詰めてしまったことへの贖罪もあるのだろうか。
少なくともタツキの中で蒼空とのことはまだ終わっていない。優には離婚され、「あの子のためを思うなら、もう二度と関わらないで」とも言われている。でも、だからといって自殺を図るほどの心の傷を負った息子を放っておけるはずもなく、家族の問題は現在進行形だ。
さて、先述した寧々はフリースクール「ユカナイ」に通っていたが、タツキは珠美から今月で退会したいと告げられる。その直後、「ユカナイ」のチラシに載っている“ビーズアート”に興味を持ち、久しぶりにやってくる寧々。ビーズで馬のアートを作り始めるが、色を自分で決められない彼女に窮屈な思いを感じたタツキは、蒼空の姿を重ねてしまう。
寧々の両親はかつてのタツキとは異なり、学校に行くことも部屋から出ることも強要はしていない。ただし、父親の行雄(忍成修吾)は勉強することを条件にしており、寧々を塾に通わせている。対して珠美は寧々を、好きなピアノに集中させてあげたいと考えており、夫婦は何かと揉めてばかりいた。
■子どもが主役のドラマである『タツキ先生は甘すぎる!』は子役の宝庫 家庭訪問の際、珠美が自信満々に言った「あの子を見ていればわかります」という一言が引っかかるしずく(松本穂香)。果たして、本当にそうなのか。今回も寧々の本当の気持ちはアートに隠されていた。2匹の馬を、1匹は茶色のビーズ、もう1匹はピンクのビーズで作った寧々。茶色は最もオーソドックスで行雄を納得させられる色、ピンクは珠美が好きな色であり、そこに彼女自身の意志は存在しない。それは、自分のことで揉める両親を見てきた寧々なりの処世術だ。
学校に行けなくても律儀に塾とピアノ教室には通っていたのも、そうすれば、両親が機嫌良くいてくれるから。そうやって常に顔色を伺い、中庸をとるうちに、寧々は自分がどうしたいかすらも分からなくなってしまったのだろう。「親だから子どものことは何でもわかる」というのは大きな誤りで、所詮は別々の人間だからすべてを理解し合うことはできない。子どものためと思ってやっていたことが、実は親の押し付けになっていたというのもよくあること。そういう間違いや勘違いは仕方がない。ただ大事なのは、それに気づけた時に子どもに対して「ごめんね」と言えるかどうかではないだろうか。
塾の合宿に行かず、「ユカナイ」のキャンプにやってきた寧々を迎えに訪れた珠美。寧々から「ピアノも嫌い」と本音を打ち明けられた彼女は開口一番、「じゃあ、何でそう言わないの?」と咎める。珠美は自分が一番娘のことを理解していて、娘も自分には心を開いていると思っていたばかりに、そうではなかったことを突きつけられて傷ついたのではないか。でも、それよりも傷ついていたのは目の前の娘であって、責めるよりもまず受け止めてあげられていたら何かが違ったのかもしれない。結局、寧々はますます心を閉ざしてしまう。
松下洸平が小学校の学校医を演じた『放課後カルテ』(日本テレビ系)もそうだったが、本作は子どもが主役のドラマであり、子役の宝庫だ。今回、寧々を演じたのは『良いこと悪いこと』(日本テレビ系)で“ニコちゃん”こと中島笑美(松井玲奈)の小学校時代、『再会~Silent Truth~』(テレビ朝日系)では岩本万季子(井上真央)の少女期を演じるなど、次々と話題作に出演している本屋碧美。その感受性豊かな演技は驚くべきもので、抑圧されて膨れ上がった寧々の感情が痛いほどに伝わってきた。
それがラストでついに爆発する。タツキの息子である蒼空と同じように、突如張り詰めた糸が切れたように部屋の中で暴れ始めた寧々。タツキは過去のトラウマが蘇ったのか、助けを求めてくる珠美を前に動揺しながらも、「なんとかしないと……」と彼女の部屋のドアノブに手をかける。そのドアを開けることが正解なのかどうかはわからない。ただ躊躇なくドアを開けていた頃よりは、部屋の前で一度迷える今のタツキの方が、子どもたちの心の柔らかい部分に触れられる気がするのだ。(文=苫とり子)
