決済の価値は「速さ」から「コミュニケーション」へ──楽天ペイがRoktと再定義するチェックアウトの役割

本記事はRoktによる寄稿です。
決済に求められてきたのは、速さだった。オフラインではレジを止めないこと、オンラインではチェックアウトの摩擦をいかに減らすか。それが長年の競争軸だった。だが今、決済事業者に求められる条件が変わりつつある。エージェンティックAIの台頭、決済手段の急増、データ活用への圧力。これらの変化が重なるなかで浮かび上がるのが、「決済の瞬間(トランザクションモーメント™)を、いかに価値ある体験に変えられるか」という問いだ。速さの次に、何を返すか。この問いを、日本とグローバルの両方から捉えてきた楽天ペイとRokt(ロクト)が、決済のあり方と、その瞬間を起点にしたパートナーシップの可能性について語り合った。本稿は、その対話の記録である。登壇者:楽天ペイメント 執行役員 広告事業本部 本部長 諸伏勇人氏、Rokt APAC責任者 マイケル・ダンロップ氏◆ ◆ ◆
決済は今、「選ばれる理由」を作りにいく時代へ
まず、ダンロップ氏はグローバルで同時進行する金融・フィンテック業界の3つの変化を挙げる。
第一に、データを活用した収益化の広がり。これまで決済事業者の収益源といえば手数料が中心だったが、今は変わりつつある。フィンテック企業は、「誰が・どこで・何を買ったか」という取引の事実を持っており、このデータは、ある広告がどの購買につながったのかを追跡する「計測の基盤」として機能する。サードパーティCookieが使えなくなった現代において、取引データを持つ金融・フィンテック企業はその仕組みの中心的な役割を担える立場にある。第二に、エージェント型AIへの備え。AIが購買体験を代行するシナリオが現実味を帯びてきた。「顧客がクレジットカード情報や決済サービスのアカウントをAIに登録しておき、最終的にどれを使うかはエージェントが選ぶ、という時代が近い」とダンロップ氏は語る。第三に、決済の「戦場化」。チェックアウト画面に複数の決済手段が並ぶ今、存在しているだけでは差別化にならない。一人ひとりの顧客にとってメリットを感じさせるオファーで「そのクリック」を取りに行けるかどうかがカギだ。
これらのトレンドはオンライン決済を中心に動いているが、日本には異なる文脈がある。「日本はまだEC化率が低く、国内消費の約9割がオフラインで行われている(*)。楽天ペイアプリを通じて、そのオフライン領域をいかにデジタル化していくかが、私たちの最重要課題だ」と諸伏氏は語る。グローバルの変化は、楽天ペイが切り開こうとしている市場の地図と重なっている。(*経済産業省「令和6年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」 より)「決済を体験に変える」という思想
では、楽天ペイはこの変化にどう向き合ってきたか。諸伏氏が掲げるのが、決済を単なる手続きから「価値ある体験」へと変えるという考え方だ。ベースには、楽天市場が長年掲げてきた「Shopping is Entertainment!」という世界観がある。買い物は単なる調達ではなく「体験」であるべきだという思想だ。この延長で諸伏氏は、決済もまた体験になり得ると考えた。現金や電子マネーによる支払いは速い。だが、顧客に何も返さない。支払いが完了した瞬間、接点は切れる。一方でモバイル決済は、コミュニケーションのタッチポイントが生まれる。そこに価値があるとした。
「マネタイズの方向にも引っ張れるし、さまざまなコミュニケーションに使える。問われるのは、そのスクリーンで何を届けるか」と諸伏氏は語る。重要なのは、文脈に応じて届けるものを変えるという発想だ。たとえばコンビニレジ前で決済用バーコード画面を出しているときと、自宅で楽天ペイアプリのホームスクリーンを開いたときとではアプローチがまったく異なる。前者では顧客は「早く済ませたい」状態にあり、一瞬でも気づきを与えるものでなければ機能しない。後者では顧客が数十秒から数分滞在しており、銀行口座や証券口座の案内のようなリッチなコミュニケーションと相性が良い。「決済を起点に、前後に広げる。たとえばクーポンは決済前に取得してもらい、決済完了後には再度アプローチして次の行動を促す。そうした思想は、Roktの『モーメント活用』の考え方とも近いと思っている」。(諸伏氏)楽天グループのデータの強みは「何を買ったか」まで見えること
この「文脈に応じた届け方」を実現するには、顧客一人ひとりへの深い理解が前提となる。ここで浮かび上がるのが、保有しているデータの「粒度」という論点だ。決済事業者が通常取得できるデータは「どこで、いくら、どう払ったか」までだ。どの商品を買ったかまでは分からない。だが楽天ペイは、楽天ポイントカードとの連携などを通じて「何を買ったか」というアイテム単位の情報を把握できる。「同じ100円の買い物でも、A社とB社どちらの商品を選んだかがわかる。それによって、その顧客に何を出すべきか・出さないべきか、商品単位で判断できる。それが私たちの差別化だ」と諸伏氏は語る。この粒度は、ターゲティングだけでなく計測にも機能する。「競合ブランドの購買者をターゲットし、実際に乗り換えが起きたかどうかを追えるとしたら、広告主は相応のお金を払う価値がある。楽天ペイの持つデータはそれを可能にする」とダンロップ氏は評価する。ただし、データを持つことと、スケールして使いこなすことは別問題だ。多くの事業者がデータは持つが、意味ある形でアクティベートできていない。その橋渡しをすることが、Roktが金融・フィンテック企業に提供できる価値のひとつでもある。三者全員が得をする設計が、成功の条件
Roktがオンライン・トランザクション周辺の体験設計で重視するのは、「全員がWinになる」構造だ。チェックアウトページに関わるのは、顧客・リテーラー(EC事業者)・決済事業者の三者だ。顧客は自分にとって意味のある情報を受け取りたい。リテーラーは、決済ページに余計な摩擦を入れたくない。カート離脱を防ぐことが最優先だ。そして決済事業者は、複数の選択肢が並ぶなかで自社が選ばれる理由を作りたい。「三者のどこかにとっての勝利で止まると、長続きしない。すべての角度から『Yes』が揃って初めて、機能するパートナーシップになる」とダンロップ氏は語る。この思想を体現するのが「Rokt Pay+」だ。決済事業者がRoktと連携し、チェックアウト画面で顧客ごとに最適なインセンティブを提示することで、複数の選択肢が並ぶなかでも自社の決済手段を選んでもらえる確率を高める仕組みだ。全員に同じ広告を出すのではなく、「この顧客に今この決済手段を訴求する意味があるか」をデータで判断し、可能性の高い顧客にだけインセンティブを届ける。すでにヘビーユーザーであれば、広告を出す必要はない。まだ使ったことがない人、ほかの手段から乗り換えられる可能性がある人に絞って届けるから行動につながる。今や主要銀行・クレジットカードなど米国の大手金融サービスプレイヤーも採用しているという。
(RoktのパートナーECサイトの決済選択画面上で表示される楽天ペイのオファーのイメージ)
決済の前後に広がる、新たな接点
諸伏氏はこんな観察を挙げる。「楽天ペイの顧客を分析すると、レジで並んでいるあいだにアプリを起動して待っている。その15〜20秒は、今は何も表示されていない。でも実は、過去のトランザクションデータなどを使えば、この人は今このお店にいる、何か届けられるものがあるはずという判断ができる瞬間だ」。それは必ずしも広告である必要もない。ポイントの残高通知でも、近くのキャンペーン情報でもいい。決済完了前のその数秒もまた、「楽天ペイを開いていて良かった」と感じてもらえる接点になり得る。さらにアプリにファイナンス機能が加わることで、クレジットカードの引落日など、決済とは直接関係しないタイミングにもコミュニケーションの機会が広がる。「私たちは自分たちを単なる決済サービスだとは思っていません。1億超の楽天会員へ向けて、楽天会員であることの価値を、決済以外の瞬間にも広げていく。それがこれからの方向性だ」と諸伏氏は語る。ダンロップ氏も同じ方向性を共有する。「意味のある瞬間に、個別最適で関連性の高い体験を届けること。Rokt Pay+ではそれをグローバルのパートナーとすでに動かしている。日本でもこれから、楽天ペイと同じことに取り組んでいきたい」。「速さ」の次に来るもの
決済における競争は、処理能力から体験価値へとシフトしている。速く、確実に処理することは前提条件に過ぎない。差別化の舞台は、トランザクションモーメントをいかにユーザー・リテーラー・決済事業者の三者にとって意味ある瞬間に変えられるか、だ。楽天ペイが持つアイテム単位のID×データ基盤と、Roktが世界規模で蓄積してきたトランザクションモーメントの設計・運用経験。その組み合わせは、決済ページを「コストセンター」から「プロフィットエンジン」へと変える可能性を持つ。問われているのは、そのとき、その人にとって最善のコミュニケーションを実装できるかどうかだ。そしてその積み重ねが、顧客体験を高め、決済事業者の利用率を押し上げ、同時にリテーラーの収益を動かすことがすでに証明されている。Rokt Pay+についてRokt Pay+は、決済の瞬間を活用し、EC事業者と決済サービスプロバイダの双方に価値を提供するマネタイズ&獲得プラットフォーム。ECサイトや予約サイトなどの決済ページで、ユーザーに関連性の高い金融・決済系オファーを表示し、決済サービスプロバイダの新規顧客獲得と、EC事業者の追加収益創出を同時に実現する。決済サービスプロバイダにとってのPay+ 今まさに支払いをしようとしているユーザーにリーチし、決済手段の利用を促進 ファーストパーティデータを活用し、関連性の高いユーザーのみに表示 実際のクリックに応じた成果報酬型の課金EC事業者にとってのPay+ コストセンターの決済ページを、収益源へと変える 購入フローを邪魔しない設計でユーザー体験を維持 タグの設置のみで実装可能導入にご興味のある決済サービスプロバイダ・EC事業者の方はこちら: https://www.rokt.com/jp/products/rokt-pay
写真:Rokt提供
