宇宙開発に出遅れた日本で大化けするかもしれない「繊維メーカーの名前」…市場規模は驚愕の175兆円に
ロケット打ち上げ増加の背景
宇宙開発競争がかつてないほど激化している。ロケットの打ち上げ件数は、2018年の85件から昨年は316件まで増えた。
国別では、192件を記録した米国が圧倒的なシェアを誇り、“スペースX”や“ブルーオリジン”のような民間企業が主導する体制へとシフトしている。この米国を猛追しているのが中国だ。
中国は政府主導の衛星システム「国網」計画で1万3000機超の衛星運用を目指す一方、民間企業も驚異的なスピードで衛星を製造。世界初のメタン燃料ロケットの軌道到達に成功するなど、低コストのロケット開発を加速させている 。
米中の差は着実に縮まっており、宇宙開発を巡る覇権争いは新たな局面を迎えている。
前編記事〈上場間近の「スペースX」に投資家が大注目…需要が高まり続ける「宇宙開発の現在地」〉では、こうした現状を詳しく解説している。
米・中がロケット開発に積極的に取り組む背景には、デジタル化の加速が大きく関係している。
AI利用の拡大により、データセンター向けのエネルギー需給はひっ迫している。宇宙空間で太陽光を活用してデータセンターを運営すれば、地球上の電力需給は安定するだろう。
極低温の真空空間にサーバーが発する熱を放出すると、理論上、冷却コストは抑制できる。宇宙空間と地球上のデータ通信速度の向上につながる、小型衛星の打ち上げは増える。そのため、再利用可能、かつ低コストで運用できるロケット需要は増えている。
戦争にも使われるロケット技術
しかも、イラン戦争の勃発で、安全保障体制の確立においても衛星運営の重要性は高まっている。今回の戦闘では、イラン、イスラエル、米国ともに、AIを搭載したドローンをはじめとする最新兵器を積極投入して攻撃、報復を行った。
イランはシモルグとよばれるロケットを開発し、衛星を打ち上げることでドローン運用の精度を高めた。AI時代の安全保障体制に、ロケット運営技術の重要性は高まるばかりだ。
現在、わが国は、世界のロケット開発競争に対応できているとは言いづらい。過去10年のロケット打ち上げ件数を見ると、伸びているどころか減少した。
昨年12月には、次世代機であるH3ロケットの8号機の打ち上げに失敗した。
これまで、わが国のロケット開発など宇宙政策は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が主体となって進めてきた。その背景には、通信インフラなど公共性の高い分野において、民間企業にリスクテイクを任せるのは適切ではないとの考えがある。
一方、世界の宇宙開発競争の在り方は、わが国のこの発想と異なっている。政府の関与に加え、ロケットや宇宙開発において民間企業の活動範囲は拡大している。それに伴い、米中ともにロケットや衛星開発の件数は急増している。
日本の宇宙開発の遅れは深刻
ロケット打ち上げをはじめ、わが国の宇宙開発の遅れは深刻だ。
宇宙関連の市場規模が、今後、どの程度拡大するか様々な予測がある。試算の一つによると、2040年、世界の市場規模は2020年から3倍に成長し、1.1兆ドル(約175兆円)に達する。
米中以外にも、インドやロシアも宇宙開発を加速させようとしている。これ以上、海外とのロケット打ち上げ件数の差が広がると、遅れを挽回することは難しくなるだろう。
リージョナルジェット機の開発失敗例もあるように、わが国の組織では依然として開発から試作機まで自己完結する考えが強いようだ。結果的に、試作機が完成しても、なかなか実用化に至らないケースもあった。
宇宙開発で類似の失敗を繰り返すゆとりはない。
スペースXからロケットを輸入し、国産の衛星を打ち上げる取り組みがあってもよいかもしれない。それは、三菱重工業やIHIエアロスペース、スペースワン、ホンダなどの関連企業にとって重要な学びの機会になるはずだ。
政府が海外の知見を率先して取り入れることは、最終的に、民間企業の収益分野の拡大につながる可能性もある。
2009年、宇宙分野に参入した総合繊維メーカーのセーレンは、超小型衛星の開発を進めている。
官民による開発体制の構築が急務
スタートアップ企業との連携も重視している。
これらの企業が、内外の企業と連携して、まずは小型、低コストのロケットを開発できれば、わが国の宇宙開発に重要な足跡を残すことになるだろう。
宇宙開発には、ロケットや衛星の打ち上げにより増加する“宇宙ゴミ”の回収、処分の技術開発も必要だ。今の段階から、宇宙の乱開発を防ぐ技術の開発、実用化にも取り組まなければならない。
わが国の宇宙開発は楽観できる状況にはないが、今から官民が協力して新たな知見、研究開発体制を確立できれば、遅れを挽回することはできるはずだ。それがどう進むかは、世界経済におけるわが国の競争力にかなりの影響を与えるはずだ。
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